くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「白子屋駒子」「白鷺」

kurawan2018-01-12

「白子屋駒子」
話はかなり荒いのですが、竹垣や透かしなど日本家屋独特の美術を効果的に利用した三隅研次監督の映像演出が実に美しい。

物語はいわゆる悲恋物語。老舗の材木商白子屋の長女駒子は番頭の忠八に惚れている。しかし、身分違いの恋で叶うことはないのだが、駒子は忠八への心が揺らがない。

そんな二人の悲恋物語に、母親の不義や商売の浮き沈みなども絡んでの人情物語が展開する。

結局、非劇的な結末になるのですが、そこかしこにおきまりのように登場する女盗賊やきっぷのいい侍、小悪党のような人物などが入り乱れ、作品の娯楽映画としての位置付けにしている。

映画全盛期の大量生産の一本ではあるものの、このレベルでも今の日本映画より数段仕上がりがいいのだからすごいなと思います。


「白鷺」
横長のワイドスクリーンながら縦に奥の深い構図を多用した見事な絵作りが光るまさに衣笠貞之助ならではの作品。しかしながら「白子屋駒子」同様わがまま放題の末に男を破滅させる山本富士子のキャラクターが流石についていけなかった。

老舗の料亭が閉店することになり、その店の一人娘篠が、かつて女中だった女が経営している料理屋に女中として働くようになるところから映画が始まる。そんな義理のある女将のことは言うことを聞かず、己が惚れた若い画家稲木に熱を上げて、周りの迷惑も顧みず突き進んで行く。

たしかに悲恋ドラマだが、義理とか恩とかを完全に無視して突っ走る女の姿は、さすがに感情移入できず、ラストは、自ら死を選ぶのだが、彼女に関わった男は嫌な気分のままに不幸になる。

こう書くとちょっと今風すぎて極端かもしれませんが、時代色とはいえ、ちょっとやりすぎているようにも思えます。周りの脇役のキャラクターがいかにも弱いのも気になりますが、ただ、衣笠貞之助の画面演出は見事で、流石にしっかりとした日本映画の貫禄は見せてくれました。