くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「祈りの幕が下りる時」「姉妹坂」

kurawan2018-01-30

祈りの幕が下りる時
東野圭吾原作ものは今のところ成功したものが少ないが、今回は素直に泣いてしまいました。東野作品の真骨頂の人間ドラマの部分が見事に描き切れていたためです。おそらく、松嶋菜々子を始め、配役にしっかりとした芸達者をさりげなく配置したためかもしれません。監督は福澤克雄です。

東京都のアパートで押谷通子という女性の腐乱死体が発見されるところから映画が始まる。この事件を発端に彼女に関わる美しい舞台演出家浅居博美の存在が浮き上がり、一方河川敷で見つかったホームレスの焼死体との関連も繋がり始める。そして物語は主人公加賀恭一郎の母の過去へと遡っていく。

ミステリートリックの面白さというより、徹底的に親子の物語の人間ドラマとしてグイグイと進んでいく展開は松本清張の名作「砂の器」を思わせる。

最初は引き気味に見て居た私ですが、次第に物語の中に引き込まれていきました。特に松嶋菜々子が出てくる場面が圧倒的にクオリティが高く、背後に盛り上げる音楽効果も実にうまくまとまっていて、少々の欠点を無視しても傑作に近い一本としてもいいくらいに涙している自分がいました。素晴らしかった。


「姉妹坂」
傑作というような仰々しい感想ではなく、ひっそりと心に残る秀作というイメージの青春映画でした。監督は大林宣彦。当時全盛の浅野温子沢口靖子富田靖子紺野美沙子がとにかく美しい。

沢口靖子扮する女子大生の杏に二人の男性柚木と桜庭が争奪戦をするシーンに映画が始まる。やたら沢口靖子のアップが目立つ。杏は京都で血の繋がらない姉妹と暮らしている。物語は杏の話に始まり、茜の白血病の下から、藍の揺れる心、長女彩の恋物語へ向かっていく。

細雪」の京都版という感じの物語が、大林監督の初々しい感性と詰め込まれた青春群像で展開していく。

それぞれが成長し、茜は出産してやがて死んでいき物語は終盤を迎える。さりげない京都の風情や景色が映画をノスタルジックに彩っていき、瑞々しい作品として心に迫って来ます。いい映画でした。