「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」
パキスタン出身のコメディアン、クメイル・ナンジアニの実話の物語ですが、細かいセリフの数々がしっかり書けていて、アメリカとパキスタンの文化の違い、考え方の相違が嫌味なく描かれているのは見事なものです。監督はマイケル・ショウォルター。
パキスタンからアメリカにやってきたクメイルがライブハウスで漫談芸をしているシーンから映画が始まる。そこで客の一人エミリーと知り合い、一夜を共にするが、お互い特に付き合うという感覚はなかった。
クメイルの家族は生粋のパキスタン人で、クメイルの結婚相手も見合いで決めるものと信じ、次々と見合い相手を家に連れてくる。一見、特異ではあるが、舞台がアメリカでこういう描写が実にうまくできている。
ある時エミリーがクメイルの見合いの写真をたくさん見つけ、思わず喧嘩、別れてしまうが、直後倒れて病院へ搬送される。そして原因が不明ということで強制的に昏睡状態にして治療が始まる。
駆けつけてきたエミリーの両親とクメイルはひたすらエミリーの看病をするのだが、妙な難病ものに陥らず、エミリーの父テリーや母ベスとの軽妙なやりとりが実にうまく処理されている。
一方エミリーの存在を知ったクメイルの家族は彼を勘当する。
ところが突然、エミリーの病名が明らかになり昏睡状態からめざめるが、エミリーも今からクメイルとの仲を戻す気はないとはっきり告げる。
クメイルは新たな挑戦のためにニューヨークへ行き、そのライブハウスで、エミリーと再会してハッピーエンドで映画が終わる。
いい映画なのだが、正直自分の波長と合わない作品で、出来の良し悪しより手放しで褒められない映画でした。
「The Beguiled ビガイルド欲望のめざめ」
静かに進むなんとも不気味なホラー映画というテイストの一本。キャストが無名なら、普通にB級ホラーであるが、そこをスタイリッシュに描いたのはさすがと言える映画でした。監督はソフィア・コッポラ。
南北戦争三年目、森の奥地の洋館にマーサ先生を中心に女性たちの寄宿学園があった。逆光を多用した霞のかかった映像で幕を開けるが、ほぼ終盤まで顔がわからないほど逆光を多用した映像になっている。
エイミーが森でキノコをつんでいると一人の北軍の兵士が倒れているのを発見、学園に連れて帰るところから物語が始まる。
足の手当てをしてやり、通り掛かる南軍の兵士にも知らせず生活を始めるが、この兵士ジョンは、学校の女たちにいいより始める。一方女たちも男としてジョンを見るようになる。
ある時、エドウィナという美しい大人の女性に、食事の後部屋に行くと告げるが、エドウィナが待てども来ないので、アリシアの部屋から声がするので開けると、そこでジョンはアリシアを抱いていた。思わず諍いになったエドウィナは誤ってジョンを階段から落としてしまい、その怪我でジョンは片足を切ることになる。
これがきっかけで、ジョンは凶暴性を表に出し始め、危険を感じたマーサらは彼に毒キノコを食べさせて殺してしまう。
物語だけ書くと、実に貧相な作品だが、ニコール・キッドマン、キルスティン・ダンスト、エル・ファニングなど大物を揃え、いかにも格調高いと言わんばかりのカメラワークで描く映像はなかなかの見ごたえがありました。
とはいえ、ソフィア・コッポラ作品としては中レベルという感じですね。