くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「シェイプ・オブ・ウォーター」「巫女っちゃんけん。」「15

kurawan2018-03-01

シェイプ・オブ・ウォーター
ほのぼのしたノスタルジックに溢れたラブファンタジー。現実からどこか離れた幻想的な世界観の中に、さりげないの時代感を挿入した物語の構成が実に美しい。監督はギレルモ・デル・トロ

時は1962年のの東西冷戦真っ只中。ソ連に負けじと焦るアメリカ航空宇宙局に一体の不思議な生き物が搬入されるところから映画が始まる。幼い頃に声帯を切られ声が出ない掃除婦のイライザはいつも同僚のゼルダとここで働いていた。

セピア色の色調を中心にした美術が実にノスタルジックで、イライザの住んでいる部屋の地下が映画館という設定もいい。そして、かなりレトロなテレビからレビューや懐かしい史劇映画が放映されている。同居している初老の男ジャイルズはどうやらゲイのようである。

イライザは搬入されてきた生物をたまたま見かけ、興味本位にゆで卵をやるが、その半魚人のような生物はそれを手に取る。それを契機にこの生物とイライザは親交を深めていく。

一方、ソ連に先んずることに焦るアメリカ政府はこの生物を生体解剖し、その仕組みをいち早く調べるようにとストリックランドに指示、一方この生物の主任研究員のホフステトラー博士は実はソ連のスパイで、この生物の資料を本国に流していた。しかし、この生物を殺すことに反対、ソ連からもストリックランドからも守ろうとする。

解剖のことをたまたま知ったイライザもこの生物を逃がす計画を立て、解剖日が迫る中決行する。たまたま、イライザのことを知ったホフステトラー博士も彼女に協力、無事逃し、生物はイライザの浴室に匿う。

やがて、イライザと生物は体を重ねる。イライザは水門が水位の高くなるときに海に開くことを知り、その期日10日に生物を逃がす計画だった。

そして10日、ホフステトラー博士はソ連からの使者に殺され、生物を追ってきたストリックランドは生物とイライザを撃つ。しかし、生物には回復能力があり、イライザを抱いて水に飛び込む。そしてイライザの首の傷はエラとなり、二人はいずこかへ消えてエンディング。

まさにおとぎ話のような世界である。時代背景を描きながら大人の童話のような物語に、いつの間にか不思議な感動に包まれる。まさにギレルモ・デル・トロ監督ならではの世界だった。いい映画でした。


巫女っちゃけん。
なんともまとまりのない脚本とリズム感のない演出で本当に凡作でしたが、広瀬アリスが主演したらどうなるかと言う面白さ興味で見た。監督はグ・スヨン

就職が決まらず、仕方なく実家の神社の巫女になって食いつなぐ主人公のしわすは、ある日一人の少年を神社の中で見つける。物語はこの少年との出来事を通じて、しわすが巻き起こすドタバタ劇である。

男遊び好きの巫女や、子供の暴力を振るう母親の存在などをさりげなく描き、しわすの母親の物語なども交えて、雑なシリアス感も出すのですが、一方で巫女という仕事をコミカルに演出していく下りもあり、どっちつかずの部分もあり、結局軽い作品として見終えることになりました。広瀬アリスはやはり、広瀬すずとまた違う味のある女優さんだなという印象でした。


15時17分、パリ行き
2015年に起こったタリス銃乱射事件を基にした作品で、実際に関わった三人の若者をそのまま映画に登場させて描いた。監督はクリント・イーストウッド

物語の舞台になるパリ行きの列車に向かって辺りの男が歩いている後ろ姿から映画が始まる。おそらくこの男が犯人なのだろう。

物語はクライマックスの犯人による車内の銃撃現場を描きながら、三人の若者の中学時代からそれぞれが知り合う経緯、そして、やがて軍隊に入って人の役に立とうとするスペンサーの物語を交互に描いていくが、終盤、三人がヨーロッパ旅行に出たくだりがやや観光映画のように配分が大きいのが少し気になる。もう少し、列車内の緊迫感を作り出す演出があってもいい気がしますが、そこは事実を重視したのでしょう。

とは言っても、物語の組み立てはうまいもので、手頃なランタイムで収めた手腕はさすがである。当然、ラストは三人が犯人を取り押さえ、フランスやアメリカから感謝され、英雄になって終わるのですが、その手際よさは職人芸ですね。ただ、イーストウッド作品としては中レベルだった気がします。