「坂道のアポロン」
小松菜奈目当てで、それほど期待もしていなかったけれど、普通に青春の1ページをピュアに描いた作品という感じで好感、楽しんでしまいました。監督は三木孝浩。本当に真面目な作風の監督ですね。
医者になった現在の薫の姿、そして時は1966年横須賀から佐世保に転向してきた薫の姿になり映画が始まる。クラスで息苦しくなって屋上に走って行ったら、その出口で千太郎という背の高い同級生に出会う。さらにクラス委員だという律子に一目惚れしてしまう。
律子の家はレコード店で、律子と千太郎は幼馴染だという。ジャズの大ファンの律子の父は、地下にスタジオを作っていて、ドラムの叩ける千太郎はそこに入り浸っていた。薫もクラシックのピアノを弾いていたがジャズに魅せられ千太郎らとセッションするようになる。
こうして物語は始まるが、千太郎が憧れる淳一と百合香の物語、百合香に一目惚れした千太郎のエピソード、薫の律子への思いなどが綴られ、甘酸っぱい青春の1ページが描かれて行く。
全てのエピソードが中途半端にしぼんでしまうのは少し惜しいが、千太郎を演じた中川大志の存在感が抜群であるため映画が締まっています。
ふとした事故で責任を感じた千太郎は姿をくらましそれから10年、薫の元にやってきた淳一らからの写真で千太郎の居場所がわかり、教師になった律子と千太郎を訪ねに行く。彼は神父になっていた。こうして映画が終わる。
たわいのない物語をしっかりと描いて行く演出力はなかなかですが、もう少し脚本を練りこんでリズムを生み出せれば傑作になったかもしれません。でもいい映画でした。