くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「全身小説家」「レディ・プレイヤー1」

kurawan2018-04-24

全身小説家
作家井上光晴の最後の5年間を描いたドキュメンタリーで、その年のキネ旬ベストワンに選ばれた作品。監督は原一男

2時間以上ある作品ですが、ほとんど眠くならなかったということは優れた作品と呼ぶのでしょうか。ドキュメンタリーを分析したり感想を書くことは私にはできませんが、映像の中で見る井上光晴という人物に何か共感するものも見えませんでした。

映画は、すでに地位を確立し大勢の信奉者の前で自論を語る姿から始まります。女性を愛し、虚構と現実の狭間を生きているというイメージで行動する姿が描かれて行く。後半は、癌が見つかり、一旦は快復するものの間も無く転移再発、その闘病の中でほとんどその生気が失われることなく、ファンに前で語る彼の姿が延々と捉えられる。

そして、彼が語る自分の年譜には様々なフィクションが存在すること、そしてそれもまた彼の真実の姿であることが見えてくると、この人物が一体この世に存在したのかさえも疑わしくなる。

最後は六十六歳で亡くなった彼の葬儀のシーンで終わるが、虚構と現実を生き抜いた一人の男の物語としての映像は完成されたのかもしれません。

時折フィクションで作られた映像を挿入し、ドキュメンタリー部分とフィクション映像が混在するスタイルがなかなか見せてくれる一本でした。


レディ・プレイヤー1
スティーブン・スピルバーグ監督はこんなにストーリーテリングが下手だったかと思ったが、これは明らかに脚本が悪い。前半部分がちょっともたつくのですが、後半からクライマックスは本当に面白い。でも、全体の印象は映画好きな少年が遊び心満点で好き放題した映画という感じでした。

「シャイニング」など過去の名作映画はふんだんに出てくるし、画面のあちこちにオブジェが散りばめられていて映画ファンにはたまらない作りになっているし、クライマックスにはメカゴジラガンダム、チャッキーまで出てくる。本当にお遊び映画である。

時は2045年、人々は現実世界からVRワールド「オアシス」でゲームのような人生を楽しんでいた。ある時、このVRワールドの創設者ジェームズ・ハリデーが死に、最後にゲームの中に隠した三つの鍵を手にしたものにこのゲームの権利を全て譲るという遺言を残す。

主人公のウェイドを始め世界中の人々はその鍵を探すことに躍起になっている。そしてある時ふとしたヒントでウェイドは最初の鍵を発見、一躍ヒーローになる。

物語は次の覇権を狙う101社の魔の手が迫る中、ゲーム内で知り合ったアルテミスやショーン、ダイトウと力を合わせて残る鍵を見つけるというものですが、この謎解きの展開がちょっと爽快感に欠ける。

結局、CG映像満載のシーンの連続を楽しむことになり、謎解きのサスペンスがボヤけてしまった感じです。さらに、所々に次々と登場する名作映画の名シーンを追いかけるので、ストーリーに気持ちが向かないのも確かです。

最後は、三つ目の鍵を手にしたウェイドが、見事オアシスの権利を手に入れますが、101社のトップは最後の最後に改心して警察に捕まる。ウェイドは共に戦った仲間と権利を共有することにして映画が終わる。

最後の鍵を手に入れ、イースターエッグを得るところのくだりで、VRワールドに登場するハリデーの言葉がこの物語のテーマなのだと思うし、スピルバーグの言わんとするところもここだと思いますが、どうもCGシーンが派手すぎてぼやけてしまいました。もう少し全体に緩急をつけて、見せる、語る演出を見せて欲しかったです。でもめまぐるしい映画ですが、面白かったです。