くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「泳ぎすぎた夜」「大いなる幻影」(デジタル修復版)

kurawan2018-04-25

泳ぎすぎた夜
全編台詞なしで淡々と描いて行く物語ですが、特に映画が美しいわけでもなく、リズムがしっかりしているわけでもなく、いわゆる一人の少年の心象風景という感じで語られる映像は、個性的ながらも、これというほどのものではありませんでした。監督はダミアン・マニベル、五十嵐耕平の共同監督。

青森の雪深い町の一軒の家で、父親は早朝から市場に出かけてしまうのだが、父親が起きるとそれに合わせて息子も目が覚め、そのまま眠れないために、デジカメで遊んだりしながら時間をつぶす。

やがて朝が来て、朝食を姉と一緒に食べ始めるもすぐ眠ってしまう。そんな弟を放って姉がでかける。一人少年は学校へ行こうとするが、いつの間にか自分の絵を父のもとに届けようと歩き始める。

さまざまな町の風景の中を進む少年の姿、やがて、吹雪がひどくなり、暖をとるために、たまたま空いている車に乗り込んで眠ってしまう。

車は動き出し、少年がいることに気がついたドライバーが家に送り届ける。少年はそのまま眠り、深夜父親が帰ってくる。そして翌朝再び市場に出かける。それでも少年は眠っている。

父は出かける前、子供が描いた絵を観ている。つかの間の家族の交わりかもしれない。さりげない感動があってもいいが、そこまで迫るものはなかった。


大いなる幻影」(デジタル修復版)
何度目かの再見、ようやくこの映画のすごさがわかった気がする。それほど、知的で奥が深いのです。何度見ても全く無駄がないことがわかるのです。これが映画史に残る作品と言うのでしょうね。監督はジャン・ルノワール

物語は今更言うまでもありませんし、細かいシーンも見ているうちにどんどん脳裏にに蘇ってくる。そして、寸分の無駄もないこと、細かい台詞の隅々に知的なウィットが散りばめられていること、さりげないユーモアの中にメッセージが込められていることに気がつく。

これが、知識人が作る映画かもしれません。しかも一つ一つのシーンが美しい。音楽が見事に効果を生んで映像にリズムを作り出していく。これが才能ですね。どうやって真似すればいいのかわからない名作というのがありますが、そういう類の一本だと改めて思いました。