くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「細雪」(市川崑監督版)「テルマエ・ロマエⅡ」

細雪

細雪」(市川崑監督版)
三十年ぶりにみたのだが、やはりすばらしい。「細雪」の映画版は三本あり、そのどれも見ていますが、やはり、この市川崑監督版が抜群にすばらしい。
市川崑監督の映像美学の一つの頂点であるかと思います。

しかも、リズムテンポもすばらしいし、カットバックのうまさとストーリーテリングの緩急の見事さに冒頭のシーンから圧倒され、寒気がしてしまいます。さらに、かわいさの絶頂期の古手川祐子、美しさの頂点の吉永小百合など女優陣のすばらしさも特筆される。

デジタルリマスターとはいえ、初公開時のフィルムの美しさの再現は不可能であったというコメントの通り、さすがに、ハレーションが起こっている場面が所々にある。オーバーレイによる光の演出を多用した、まばゆいばかりの市川崑の演出故に仕方がない。ロードショーでみたものにとっては残念ですが、それでも、美しい映画として心に残る傑作を見る体験を再現するには十分だったと思います。

独特の、唐突なタイトルカットの後、雨に煙る京都、桜見物にきた主人公たちの部屋の中のシーンから、目の覚めるような桜吹雪の中歩く四姉妹の、名場面のファーストシーンへ続く導入部は、未だに初めてみたときの感激を失うものではありませんでした。

三女雪子に次々と訪れる見合い話をエピソードの柱にして、戦争の空気が漂う古き大阪の町を舞台に、移りゆく時の流れと、古き老舗の世界の崩壊、新たに訪れる新しい時代への息吹、その中でもがきながらも、その底辺では変わらない人間の心が、すばらしい美学の中で紡がれていきます。

雪子の縁談も決まり、四女の人生の未来も見えてきて、本家が東京へと引っ越していく。ひそかに雪子に恋していた次女幸子の夫貞之助の涙、降りしきる細雪。これが名作である、いや傑作である。


テルマエ・ロマエⅡ」
超一級品の映画の後に、最低の映画を見たという感じである。脚本が荒っぽい上に、とってつけたようなおふざけだらけだけで、目の前の笑いだけをねらうというストーリーの組立には参ってしまった。

とはいっても、大好きな上戸彩ちゃんがでているのだから見ないわけにはいかない。

第一作も大したことはなかったのだが、それなりに目新しさで見ることができた。しかし、今回は、第一作の前提をそのままにして、なんの説明もなく続編としてのストーリーが展開する。しかも、原作のそれぞれのエピソードを羅列したようなエピソードの組立の繰り返し、なんの工夫もない演出、くだらないぼけとつっこみ、最悪の典型のような映画である。

上戸彩ちゃんの出番も物足りないし、入浴シーンがあるとはいえ、あまりに脚本がひどいので、気の毒になってくる。もっとちゃんとした映画にでるべきだよね。それが悔しくてたまらない一本だった。ストーリーを書く気にもなりません。