くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「用心棒」「それから」「いつだってやめられる 10人の怒れ

kurawan2018-06-14

「用心棒」(4Kデジタルリマスター版)
黒澤明監督の代表作を何十年ぶりかでスクリーンで見た。

やはり面白い。物語の組み立てや展開のうまさはもちろんですが、こんな話をオリジナルで作ったスタッフの才能に脱帽してしまいます。

物語は今更なので書きませんが、こういう名作を今の若い映画監督はしっかり見るべきだと思います。


「それから」(ホン・サンス監督版)
カメラのカットと切り返し、時間軸を巧みに操った会話劇で描いて行く自分勝手な男の不倫劇の結末。モノクロームで綴られる物語が妙に素朴なのにどこかセンスがいい。これがホン・サンスの感性ですね。

誰もいない部屋に1人の男がフレームインして映画が始まる。フレームアウトすると朝の食卓にこの男の妻が向かいにすわる。早朝から出勤する夫に、「女ができたの?」と尋ねる。言葉を濁す男。彼は出版社を経営する社長であるらしい。

カットバックし、この社長は1人の女チャンスクと会っている。会社での2人の関係がフラッシュバックされ、社長が早朝の会社へ。そこに今日から雇われたアルムがいる。

ところが、昼休み社長の妻が現れ、アルムを愛人だと罵りながら平手打ちをする。散々の説明のうちにようやく納得する妻。その夜、近くの中華店で食事をする社長とアルム。ところがそこに、一ヶ月ほど行方が分からなかった愛人のチャンスクが現れる。

社長は一旦は辞めるのを引き止めたアルムに再度会社を去るように言って、チャンスクを雇う。チャンスクは、社長の妻には、実はアルムが愛人で、彼女を解雇してチャンスクを雇ったことにすれば丸く収まるという。

物語は、ひたすらテーブルを挟んでの会話劇が延々と繰り返され、時にカットバックして、ことの成り行きや一瞬の過去を挿入する。アルムは社長に解雇され雪の降る中タクシーで去って行く。

カットが変わると雪の街をアルムがやってくる。社長の事務所に入るが社長は彼女を忘れている。そして思い出した社長は彼女とコーヒーを飲む。すでにチャンスクはいなくて別の誰かがいるようである。映画はこのシーンで暗転エンディング。

ドロドロした話なのに実にスッキリと洒落た映像になったコメディに仕上がっている。この演出感性は見事だなと思う。サスペンスのようで愛憎劇のようでコミカル。
会話劇だけなのだが、妙に繊細な映像が心に残る作品でした。


いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち
面白い話なのだがとにかく映像と演出が下品で、作品全体が汚いのがどうも気になる映画。監督はシドニー・シビリア

大学を追われた主人公ズィンニが刑務所で妻と面会をしている。小さな子供がいる。そして1年半前に戻る。

合法ドラッグを作って大儲けをしようとして捕まったズィンニは、蔓延し始めた合法ドラッグの取り締まりと自らの出世を望むコレッティ警部の提案でかつてのズィンニの仲間を研究員ギャングに仕立て、ドラッグ製造しよとする組織の撲滅に乗り出す。

あとは悪ノリと、イタリア語の機関銃のような会話の応酬でスラップスティックコメディのようなストーリーが続く。

笑いの組み立ても面白いはずなのだが、サイケデリックな色彩映像がどうも品がない上に、笑いのツボツボがどうも私の感覚に合わない。しかもクライマックスに出てくるナチスの車などの品のないアイデアがどんどん映画の面白さをぶちこわしていく。

結局、仕事は成功したかに思われたが、犯罪者と協力したコレッティ警部は査問委員会で知らぬ存ぜぬと答えたため、ズィンニらが逮捕されてしまう。しかし、手に入れたメモを解読すると神経ガス製造らしいとわかって、再度取引を提案しようとして、いかにもシリーズ物というラストでエンディング。

とにかく、イタリア人らしい喚き立てる展開が実に下品で画面作りもセンスが悪く、ちょっと受け入れにくい一本だった。