くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「春日和」「海はふりむかない」

「春日和」

こういう人生の機微を描いたドラマは今では過去のものになった感じですが、行間を読むような物語というのは、この歳になると胸に沁みてきます。作品としては普通の出来栄えですが、見てよかったです。監督は大庭秀雄

 

おもちゃ会社に勤める丸井が、営業先へ向かう場面から映画は始まる。彼には婚約者の泰子がいるが、母と二人暮らしの泰子は自分が結婚することで母が一人になると考え結婚を躊躇していた。泰子の父は十年前に家庭を捨て大阪で愛人と暮らしていた。泰子は、結婚して母を一人にしないように父に戻ってもらうために丸井と大阪に行くことにする。

 

丸井と泰子が大阪に行くと、泰子の父忠造は、愛人のとよと仲睦まじく暮らしていた。父になかなか言い出せない中、丸井は忠造と話し合ううちに、忠造とその妻との過去の経緯を知る。忠造の妻みつ子は十年ほど前に不倫をしたのだ。忠造はそんな妻をどうしても許せず、大阪に住み始めたが、そんな自分にも嫌気がさしていた。一方とよも、いずれは大阪に連れ戻され別れることを覚悟していたと泰子に話す。

 

丸井と泰子はそれぞれそんな男と女の物語を聞かされ、父を連れ戻すことを諦め、自分たちも一つ大人になって、結婚を決意する。映画は泰子と丸井の帰り道の新幹線の中で終わる。これという秀でたものはない作品ながら、どこか染み入るものを感じさせられました。

 

「海はふりむかない」

斎藤耕一監督らしい、フランス映画を思わせる洒落た映像が楽しい一本。悲恋物語ながら映画を楽しむという魅力に溢れた作品でした。

 

主人公礼次が、港の雑多なバーに立ち寄るところから映画は始まる。外国人のガイドまがいのことをしている彼は仕事を頼まれるが、客を乗せる車が無い。質入れした車を取り戻す金を工面するがあと少し足りないので家に帰り妹に無心するがどうにもならない。兄の高志は、勤め先に社長令嬢との結婚話があり、恋人の美枝を捨てたらしいという話を聞き、礼次は美枝の兄にあって、一緒に兄の高志に慰謝料を取りに行こうと提案する。

 

高志の態度が気に食わない上に、美枝に会って、その儚さに惹かれた礼次は、なんとか高志と美枝を結婚させようと画策するが、いつの間にか美枝を愛し始める。しかし、美枝は時々貧血で倒れる。彼女は終戦後広島で生まれたが、どうやら被爆した母から生まれたので、原爆症との関係が疑われた。しかし医師は、それが原因とは明言しない。

 

高志の、社長令嬢真理子との結婚話が進む中、礼次は美枝と結婚することを決意する。そして美枝の兄の承諾を得て、高志にも告げ、新婚の部屋も借りて、幸せに一歩踏み出そうとするが、美枝は突然帰らぬ人となる。墓に参る礼次と美枝の兄の姿から、涙に暮れて走り出す礼次のカットでエンディング。

 

さりげなく挿入される港のカットや俯瞰で見下ろす場面、などなど洒落たシーンを散りばめながら描かれるモダンな映像が魅力の作品。物語は普通でしたが、良い映画でした。