くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「橋」「花と龍」(青雲・愛憎・怒涛編)「炎のごとく」

kurawan2016-10-31

「橋」
たわいのない恋物語ですが、岡田茉莉子笠智衆など揃うと、それなりにしっかり見ることができるし、途中ダレない。監督は番匠義彰である。

元海軍の提督である父を持つ二人の娘の物語を中心に、彼女の周りに現れる男性、そして、女性が働くという当時の斬新なテーマとかすかに残る封建的な考えなど、今振り返って見てこそ見えてくる当時の世相が実に鮮やかに描かれている。

主人公良子がが一人歩いているところへ一人の青年が道を聞き、かつての軍人の老人の世話をする仕事につくところから映画が始まる。その人の娘良子に惹かれ、一方良子は姉夫婦の元を去った父親の世話を始める。

生活のため働き始めるが、その雇い主の社長と結婚へと進む。しかしその社長は水商売のマダムの愛人でもあり、その関係で、結局別れる。そして最初に出会った青年と恋に落ちる方向への余韻を見せて映画が終わる。

題名の由来はラスト、青年を追いかける良子が渡るのが橋ということである。人生の新たな踏み出しに渡る橋のイメージで映画は締めくくられるが、オーソドックスな演出と丁寧な語り口は、ある意味大人の空気を醸し出すから不思議ですね。こういう古き映画の良さはそういう空気にあるのかもしれません。


「花と龍」(青雲・愛憎・怒涛編)
火野葦平原作で何度も映画化された物語、渡哲也主演加藤泰監督版である。

主人公玉井金五郎がおマンと結婚し、子供がいるところからの物語を描く。三時間近い大作であるが、元の物語が壮大なので、エピソードの羅列になることは否めない。しかし、男の美学が、映画の空気となって漂ってくる心地よさはさすがに今では味わえない彩である。

前半が玉井金五郎中心の物語、後半が息子の物語という構成で、それぞれ絡んできた過去の人物がクライマックスになだれ込んで行く。

ヤクザ同士の切った張ったが次々と描かれる一方で、近代化が進む日本の世相が忍び寄る物語作りは、やはり時代である。

ローアングルと超クローズアップ、細かいカットの切り返しで見せる加藤泰の美学は健在であるが、映画としての出来栄えはどうかというと、面白いという点が前面に出る娯楽大作というイメージである。しかし、やはりクリティはそれほど低いものではなく、そのジャンルゆえに評価されないという弱さがあるものの、最後まで飽きずに見せてくれる映画でした。


「炎のごとく」
加藤泰監督最後の劇場映画です。加藤泰監督らしい様式美の世界が所々に見え隠れするものの、全体としてかなりダラダラした作品で、ただ長いだけのエピソードの羅列という映画でした。モダン時代劇というタッチで、テレビに舞台が移りつつある雰囲気が満載でした。

会津小鉄と異名を取る博打打ち、瞽女のおりんと何やら道中を進むシーンが細かく編集され映画が始まる。ふとしたヤクザ同士の諍いからおりんが殺され、一人になるもひたすらおりんを思って生きて行く。

やがて幕末、新撰組が横行する京都を舞台にこの男の生き様が描かれるのが本編になるが、現代風なエピソードが繰り返し挿入され、軽いコミカルなシーンも挟み込まれる。物語の核はほとんど見えないし、主演の菅原文太がどうも場違いで良くない。

三時間近くある大作だが、エピソードを並べていったような構成で、正直、参ってしまう。クライマックスに、いかにもな美しい様式美の構図が繰り返されるだけが救いの一本でした。