くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「菊とギロチン」「ルームロンダリング」

kurawan2018-07-09

菊とギロチン
大正末期を背景に、たくさんのエピソードを交えた青春群像劇ながら一本通った筋が全くブレないなかなかの秀作。監督は瀬々敬久。例によって3時間を超える長尺作品である。

関東大震災が東京中心部で起こった大正の時代、夫の暴力に喘ぎ、自ら強くなって道を切り開こうと女相撲の一座に飛び込んできた花菊の姿から映画が始まる。一方、世に中の不平等を正すべく、アナーキスト集団を率いる中濱鐡らギロチン社のメンバーもまたこの地に流れてきていた。

中濱は一見、革命のためと称して金を略奪しているものの、その本質は女と遊ぶ方向に使うことも多かった。

そんなある時、中濱たちは女相撲の興行に興味半分で見にいったことから、花菊や十勝川たち力士と関係を持つようになる。

まだまだ男尊女卑、封建的な社会が当たり前の中にあって、様々な境遇を持った力士たちのひたむきに生きる姿が、冒頭の相撲のシーンで一気に見せてくる場面がまず素晴らしい。

エロ半分で見に来た男たちが、彼女たちの体当たりの迫力にどんどん魅せられていく。相撲シーンの素晴らしさの一方で、やや弱いのは中濱たちの活動であるが、理想だけを頭で奏でるギロチン社の活動は、当時の日本の頽廃的な世相を浮かび上がらせているのかもしれません。

物語は、さりげない恋を描き、目的も見えない若者たちの無鉄砲さを描き、当時の官憲の不条理な行動を描き、次第に戦争へ突入していく中心部の流れと一線を画した雰囲気の地方のがむしゃらさがどんどん浮き彫りにされていく様が凄い。

とにかく役者のエネルギッシュな演技がスクリーンにほとばしっていくようで、何気ないエピソードさえも引き込まれてしまいます。

終盤、中濱たちは逮捕され、女相撲の土俵に官憲が踏み込んでめちゃめちゃにしていく。一時は元夫に連れも出されかけた花菊も戻って来て抵抗するが、興行場はみるみる壊されていって暗転、映画が終わる。

20歳代で死んでいった中濱たちのその後を実際の写真でクレジットしながら、日本のかつての姿を現代の一部に被せていく仕上がりとなっています。なかなかの迫力に最後まで目を離せませんでした。よかったです。


ルームロンダリング
本当に軽いタッチのファンタジーで、一見面白いのですが、終盤は普通の映画に収束するにがちょっと残念、おそらく前半の面白さをさらに膨らませる想像力はなかったのでしょうか。主演の池田エライザが可愛いので少々の雑さも彼女でもたせたという映画でした。監督は片桐健滋

1人のOLが夜帰宅するが、部屋に入った途端後ろから襲われ殺されるところから映画が始まる。カットが変わると、主人公八雲御子が叔父で不動産業を営む悟郎の手伝いで、問題物件に引っ越してくる。彼女は訳あり物件の空室にしばらく住んで物件の浄化をする仕事をしていた。

御子は母のプレゼントのアヒルのランプを抱えていて、霊が現れるとランプが光る。霊が出てくることをなんとも思わず、いつも存在感のないオバケと言われていた御子は、1人絵を描くことが趣味だった。父は幼い頃に事故で死に、母も行方が分からなくなり、おばあちゃんに育てられたがそれも18歳の時に死に、叔父の悟郎に育てられていた。

住んだ部屋では浴室で自殺したミュージシャンの男が現れ、御子と話を始める。映画は御子と霊のコミカルな中にしんみりさせるドラマが展開する。間も無くして別の部屋に引っ越したが、その部屋は冒頭の殺人事件のあった部屋で、殺されたOLが現れる。

御子は学芸会の仮装をした子供の霊とも仲よくて、時折御子はグチを言ったりしていた。

新しい部屋の隣人と知り合ってしまったり、最初のミュージシャンが今の部屋に現れたりして物語が動き始め、OLを殺した真犯人が、この辺りを回る巡査とわかりクライマックス。

実は、御子の家系は代々霊が見えるようで、母は御子にもその能力を認め、それを認識するまで会わないと決めていた。そしてOL殺人の真犯人逮捕に協力したりするうち、自分の能力を受け入れるようになった御子は母と会う。しかし母もまた霊であった。

ようやく生身の人間とも関われるように成長した御子のシーンで映画が終わります。
これという秀でた出来栄えは見えないものの、何気ない日常のファンタジーという空気感がいいムードの一本、池田エライザがチャーミングで良かった。