くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「セラヴィ!」「グッバイ・ゴダール!」

kurawan2018-07-13

セラヴィ!
国柄の違いで、最初は受け入れられないが、次々と起こるあり得ないトラブルの連続に嫌気がさした後に一気にほんのりとしたラストで締めくくる。まさに物語作りの常道を丁寧に描いた作品。ある意味、典型的なフランス映画的と言えなくもない一本でした。監督はエリック・トレダノ&オリビエ・ナカシュ

イベントプランナーの会社をしている主人公マックスが結婚式の打ち合わせで、節約ばかりしてくる夫婦にキレるところから映画が始まる。そして物語は今宵のイベント会場である17世紀のお城のような建物へ。そこで繰り広げられる一夜の結婚式の披露宴が今日の仕事なのだが、雇ったスタッフはどいつもこいつもいうことを聞かないし、自分勝手だし、当たり前のようにミスをしても平然としている。

そんなトラブルを必死で尻拭いしながら進行していくマックス。それでも、一つ解決すればまた次のトラブルと、とてもプロの仕事と思えない非リアリティの世界に飛び込み、最後の最後の大失態から、一気にそれまでの伏線で素朴な温かみのあるシーンを見せ、マックスはこの仕事をしていてよかったとじんわり感動。

会社を処分しようとしていたマックスは手にしていた提案書をゴミ箱に捨てて、新たなイベント現場の説明をして解散、映画が終わる。

なるほどそういう作りなんだと思うが、一つ一つのトラブルの憎めないコミカルさと、それに苛立つマックスの緩急が今ひとつくっきり演出できていないために、ただドタバタしてるだけにしか見えない。もう少し脚本にメリハリをつけたらもっとリズミカルに流れラストで泣かせてくれたろうにと思います。面白い映画ですがほんのちょっと残念でした。


「グッバイ・ゴダール
ゴダールの二番目の妻アンヌ・ビアゼムスキーの自伝を元にした作品ですが、これがなかなか面白かった。私はジャン=リュック・ゴダールという人物は映画を通してしか知りませんが、こういう人物なのではないだろうかという具体的な姿が見えてきます。しかもゴダール映画独特の青、赤、黄色の配色された画面作りを徹底し、いわばオマージュのように、いわばドキュメントのように、いわばフィクションのように描いていくタッチが実に楽しい。監督はミッシェル・アザナビシウス。

19歳でゴダールの恋人となったアンヌの姿から、後はひたすらゴダールによりそう、彼の人となりが実際なのかフィクションなのかわからない感じで描かれていく。

自分の映画をクソだといい、今の商業映画を体制に迎合するものだと貶し、何かにつけ議論しては敵を作ってしまう。しかし、二人だけになると反省するゴダールのどこか孤独感が臭う姿がとってもいい。

またアンヌを演じたステイシー・マーティンがとってもキュートで可愛いので、映画がとってもみずみずしく見えてくる。またゴダールを演じたルイ・ガレルも名演で、本当にゴダールはこういう風貌ではないかとかぶさってしまう。

「中国女」を完成するも酷評され、やがてデモが広がってきて学生たちの運動に傾倒していくゴダールカンヌ映画祭中止宣言など実際の出来事を交えながら、ただがむしゃらに議論を重ねてどんどん孤独になっていくゴダールだが、いつもアンヌが寄り添ってくれていた。

しかし、新作の撮影に参加したアンヌを残してチェコへ行ったゴダールは、帰ってくると異様にアンヌに嫉妬し、売女呼ばわりしてしまい、とうとうアンヌはゴダールに別れを告げようと決心する。しかし朝、ゴダールは自殺未遂を起こす。

結局二人の溝は埋まらず、離婚するのですが、実話でありフィクションのような空気感が見事です。ゴダールのメガネがやたら壊れてしまったりするコミカルな展開やゴダール映画を思わせる一人称カメラやつぶやきなども交え、不思議な雰囲気を作り出した秀作でした。