「いちごの唄」
期待もしていなかったけれど、意外に普通に見ることができた。特に欠点もないが、特に目を見張るものもない映画ですが、良かったです。監督は菅原伸太郎。
冷凍食品会社に勤めるコウタが、レンジをにらんでいるところから映画は始まる。自社の食品に愛着を持っているが、ちょっとおかしいのかなというキャラクターとして登場する。
ある時、通りで中学時代あーちゃんと呼んでいたマドンナ千日と中学校以来で再会する。そして、たまたまあったラーメン店でラーメンを食べて、夕方まで話をして別れるが、毎年この日、七夕に会うことを約束をする。
中学の頃、コウタは伸二という友達がいて二人で、千日のことをあーちゃんと呼んでいた。いつも自転車で坂を下り、近所の孤児院が作っているレタス畑に飛び込む遊びに夢中になっていた。
ある雨の日、いつものように自転車で下っていた二人の前に、雨でスリップした軽トラが走り抜けていく。そしてあーちゃんのほうへ向かったと思ったら、伸二があーちゃんを突き飛ばし助けて、伸二のこけたところに軽トラが突っ込む事故が起こる。伸二は亡くなり、二人はそのことで心の傷を負っていた。
毎年七夕にコウタはあーちゃんに会ううちに、密かな恋心が生まれてくるが、ある時、中学時代あーちゃんが孤児だった話をした後、もう会わないことを決める。
そして、久しぶりに田舎に帰ったコウタは、家族の愛情に触れ、久しぶりに中学時代の自転車に乗ることを決意する。そしていつもの坂に向かっていた時、たまたま田舎に帰ってきたあーちゃんと再会する。あーちゃんは孤児院の院長に再会し、彼女がただの捨て子ではなかったと聞かされやっと前向きに生きる決心をしていた。そして二人で坂を駆け下り、今や千日紅の畑に変わっているかつてのレタス畑に飛び込んで映画は終わる。
伸二も孤児院育ちでその時に千日と出会った過去や、いちご園という孤児院名が気に入らずストロベリーフィールドと呼んでいたこと。そして、その意味は千日紅のことで永遠の愛を意味することなどが最後に明らかになっていく。
ラーメン店の店員やコウタの兄弟、家族のユニークなキャラクター作りも楽しい一本で、最後まで飽きずに観れるいい映画でした。
「ゴールデン・リバー」
とっても真面目な西部劇。じわじわと胸に迫ってくる人編ドラマの秀作。美しい映像と心温まる人間味あふれるドラマにいつの間にか引き込まれていってしまいました。監督はジャック・オーディアール。
時は1851年オレゴン、名の通った殺し屋シスターズ兄弟が折しも仕事の殺しを行なっている場面から映画が始まる。彼らには雇い主がいて提督と呼ばれる男だった。そして次の仕事は、黄金を見つけ出すことができる薬品を手にしたというジョンとハーマンを捉えることだった。
物語は二人が手がかりを探りながらジョンたちを追うのが中心になる。いくところで、有名な殺し屋シスターズを殺そうとする輩などをかわしながら、ついにジョンらに追いつく。ところが、いつまでも戻ってこないシスターズに提督の追っ手も迫ってくる。
ジョンらとイーライとチャーリーのシスターズ兄弟は手を組んで金を探ることにする。そして刺激の強い薬品を川に撒き、金が浮かび上がってくる。思わず我を忘れて金を集めているうちに、つい欲が出て追加の薬品を撒こうとして、チャーリーは右手に重傷を負い、ジョンらは死んでしまう。
チャーリーは右手を切断し一命を取り留めるが、提督の追っ手が次々とシスターズ兄弟に迫ってくる。イーライは一人で追っ手を迎え撃ち、この事態を解決するために提督を撃つべくオレゴンに戻ってくるが、なんと提督は病に死んでしまったところだった。
何もかも虚しくなり、シスターズ兄弟は実家に戻ることにする。迎えたのはたった一人暮らす母だった。食事をし、風呂に入り、平穏な日々を満喫する二人の姿で映画は終わる。
美しい景色のショットと、緊張感あふれる銃撃戦、そして実家でのノーカットの流麗なカメラワークの末のエンディングと、全体の映画のリズムが実にいい。地味といえば地味な西部劇ですが一見の価値のある秀作でした。
「僕はイエス様が嫌い」
なぜシネコンにというレベルの作り方の作品ですが映画としてはクオリティが低いというわけではない。でも、細かい部分のリアリティは適当に済ませているあたりは、ちょっとどうかと思います。監督は奥山大史。
雪深い田舎に東京からやってきた由来。転向した学校で間も無くして和馬という友達ができる。この小学校はなぜか礼拝が行われていてキリスト教である。由来はお祈りをしようとするとなぜか小さなキリストが現れるようになり、希望をすると軽く実現することがわかる。
物語はこのキリストとの絡みより由来と和馬の交流が中心になるが、ある時、和馬が交通事故に遭い、間も無く死んでしまう。こんな時こそと由来はキリストを呼び出そうとするが結局叶えられずにお別れの会になる。
由来の心の動きを静かなタッチで捉えていくカメラがちょっと素敵な作品で、70分あまりという小品ながら、映画としてはちょっと魅力がありますが、シネコンで普通の入場料で公開する作品かとは思います。