「初めての旅」
これは良かった。青春映画の秀作という感じのロードムービーでした。下手に綺麗事で済まさない展開も見事。監督は森谷司郎。
青年勝が道端のスポーツカーを見つけるところから映画が始まる。たまたま通りの向こうに純一という青年が通りかかり、二人でこの車を盗んで走り始めて物語が始まります。
純一は富士山の裾野で牧場をしている叔父の元に行きたいと言い、二人は、そこを目指して進みます。途中、これまでの二人の過去を回想し、映像が挿入されて、ロードムービーに深みを添えていく脚本も素晴らしい。
そして、目的地につきますが、折しも警察がやってきて二人はは逮捕される。護送の途中で、ドライブの途中で知り合った少年が事故に巻き込まれていたりするのを目撃。
取調室で、二人の親のことを聞かれ、純一の父が法務省の次官だと明らかになると、二人の扱いが変わってしまう。そして二人は引き離されて映画が終わる。
勝のやるせないような表情が印象に残るエンディングです。小椋佳の曲に乗せて展開するストーリーが妙な哀愁を帯びるなかなかの名作でした。
「新幹線大爆破」
何度目かのスクリーン鑑賞。大好きな映画です。改めて見ると、その脚本のすごさに圧倒されてしまいました。スピーディな展開のみでなく、官僚側と市民側の対峙まで描かれている二重三重に書き込まれた奥の深さに感嘆してしまいました。監督は佐藤純彌。
物語は今更なので書きませんが、冒頭の貨物列車に仕掛ける場面から、タイトルバックへの畳み掛けのうまさ。いきなり本筋に入って緊張感あふれるサスペンスが展開。そしてその中で描かれる官僚側の事務的な仕事と現場の対峙。もちろん皆必死になって自分の仕事をこなしているのに、どこかずれていることに気がつかないほんの僅かな機微が恐ろしいほど緻密に描かれています。
ラストシーンの哀愁に至るまで、いつのまにか犯人に同情してしまう自分に気がつきます。犯人の背景はほとんど描写されないのに、なぜかその人生が見事に見えてくるのですから、これはもう一級品を超えたドラマです。
日本映画のサスペンスの最高傑作かもしれませんね。本当にいい映画です。
「白鳥の歌なんか聞こえない」
今の視点で見るとなんともうじうじした男の物語なのだが、非常に知的な青春ドラマとしてはかなり良く出来た作品だと思います。セリフの一つ一つ、会話劇の一つ一つが洗練されていて、不思議なくらいのみずみずしさが垣間見えてきます。いい映画ですね。監督は渡辺邦彦。
大学入試に失敗した主人公薫は恋人由美と過ごす日々をなんとなく過ごしているところから映画が始まる。
由美は大学に入ったが、彼女の先輩で、ちょっと大人の雰囲気の女性小沢と知り合うことになる。一方薫の周りには小林や横田らの友達が出入りし、日々の生活をそれなりの目的で過ごしている。
淡々と過ごす薫の物語ですが、窓を開けると蜘蛛の巣が朝日に光ったり、雨や夜の空気感がとにかく繊細な映像で描かれていく。
小沢は近所にいる、何かに力のあるらしい老人のことを気にかけている。恋人なのか愛人なのかは説明がないが、この老人は間も無く命を終えようとしているらしい。
薫の日々の生活を描きながら、恋人由美とのエピソードに小沢と老人のエピソードが絡み、最後は老人の死で映画は終わる。
どういうお話かというほどのものがないのに、この不思議な空気感はなんだろうと思いますが、洗練されたセリフの応酬と、細やかな映像描写が素敵な映画でした。
なんとも雑多な映画で、ジローズの名曲に基づいての映画とはいえ全く一貫性の見えない演出と脚本は、ノリだけしか言いようがないが、これもまた時代を見る作品としては楽しむことができました。監督は松本正志。
二人の学生一郎と敏夫は仲良しであるが、たまたま米軍基地のそばを歩いていて、なぜか捕まって、なぜか謹慎処分になる。一方、教室でキスをしていた敏夫と君江も先生に咎められて、謹慎に。
そんなことに反感を持った三人は教室n立てこもるが、仲間に来たクラスメートもすぐに抜けてしまい自然崩壊。そこで三人は旅に出て、旅回りの役者に混じってのひと騒動の後、学校に戻ってくるが、校庭に不発弾が見つかって、大騒ぎになるが、一郎はその不発弾のそばで立てこもるものの、結局、春になれば晴れて学校へ行く姿でエンディング。
色々、当時の世相の映像が挟み込まれ、一見自由な発想でシーンが紡がれているようで、全く統一性がない行き当たりばったりにしか見えない。でもまあ、楽しい映画でした。