「少年時代」
さすがに秀作。妙なヒューマニズムにならない脚本が抜群にいいし、カメラも美しい。戦時中の素朴な一風景を少年たちの姿を通して描くドラマ作りが素晴らしい映画でした。監督は篠田正浩。
第二次大戦も敗戦の色が濃くなった頃、東京に住む小学五年生の信二は富山へ一人疎開することになる。物語は富山の小学校で、ガキ大将の大原との交流を軸にして、少年たちの葛藤を温かみのある展開で描いて行く。
ガキ大将同士の喧嘩や、ささやかな争いごと、さらに都会育ちの信二と大原の友情など、何気ない展開で胸に染み渡るような物語が語られる様は見事です。
田舎の景色の美しい構図や色彩演出も美しく、叙情溢れる作品として仕上がっています。ラストシーン、汽車で東京へ戻る信二を大原が手を振る場面は胸が熱くなります。いい映画でした。