くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝ー永遠と自動手記人形ー」「いなくなれ、群青」

ヴァイオレット・エヴァーガーデン外伝ー永遠と自動手記人形ー」

京都アニメーション応援のために見に行きました。映画としては普通の出来栄えでした。正直退屈でした。絵は美しいのですが、ストーリーテリングや演出面が平凡。監督は藤田春香。

 

良家の子女として教育するべくイザベラ・ヨークの元にヴァイオレット・エヴァーガーデンが派遣されるところから物語が始まる。三ヶ月の教育期間の間に2人に友情が生まれ、イザベラには、かつて妹のように可愛がったテイラーという少女がいて、後半はこのテイラーとイザベラの話になって締めくくるのですが、全体にワクワクするストーリー展開もなく、淡々とした演出と平凡な流れに終始する。

 

テレビ版のオリジナルを知らないので、あくまでこの作品単体での感想なのですが、京都アニメーションの絵作りの優れているのはわかりますが、やはり演出面のクオリティをもっとあげていかないといけないと思います。そこがディズニーに及ばない一点かというのは私の感想です。

 

「いなくなれ、群青」

期待もしていなくて、時間つぶしに見たのですが、これがなかなかの佳作。こういう切なさの切り口もあるのかと、エンドクレジットまで引き込まれてしまいました。キャストがいいというのもありますが、演出が実にスピーディでテンポがいいし、映画的な絵作りを心得ているので、見ていて気持ちがいいのです。拾い物でした。監督は柳明菜。

 

階段島といういうミステリアスな島の説明から映画は始まる。なぜかここに暮らす人々は外界と断絶されているのにそれなりに幸せに暮らしている。何故ここにきたのかわからず、ここを出るには無くしたものを見つけなければいけない。

 

島には魔女という全てを仕切っている存在がいて、郵便配達員が島の人々を繋いでいる。物語の主人公七草は高校生。普通に毎日を送っているが、ある時、幼馴染の真辺と再会する。彼女は何故ここにきたのかわからず、最近3ヶ月の記憶もないが、この島から出るために協力してほしいと七草達を巻き込んでいく。

 

そんなある時、魔女が住むといわれる場所に続く階段の入り口に何者かが落書きをする。果たして誰がなんのために書いたのか。真辺はその真相を探る一方、なんとかこの島を出る手立てをあれこれ試す。しかしそれは何故かクラスメート達には冷たくあしらわれる。

 

物語は真辺の行動を中心に、彼女に振り回される七草達を描く一方で、バイオリンにトラウマを抱える豊川の話を描いて、ストーリーの核心に迫る形をとる。このスピーディさが上手い。

 

やがて、豊川は忽然と姿を消し、七草は無くしたものを見つけたからと遺失物預かり所を訪ねる。落書きを書いたのは七草で、彼は自分がなくしたものを最初から知っていた。それは、現実の世界で自分が捨てたかったものだった。そして、自分を元の世界に戻す代わりに真辺を戻すように頼む。

 

日が変わり、真辺は何故かいなくなっていた。他の友達はそのままで、元の日常に戻ったかに見えた。ところが、七草は再び真辺と再会する。真辺はいう。何故私がここにくるのか。それは、現実世界で、真辺と七草の正反対の存在がそのままあるべきものだと信じるからだという。

 

そして2人は、その理想に向かって握手をして映画は終わる。七草のクラスメート達が花火をしているところへ真辺もやってきて、元に戻ったかになって映画は終盤を迎える。このなんとも言えない切ない、それでいて考えさせられる展開が実に美しい。こういう青春ストーリーの描き方もあったんだとラストまで引き込まれた。エンドクレジットの曲も良いし、久しぶりに佳作を見た感じです。良かった。