くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「見えない目撃者」「アイネクライネナハトムジーク」

「見えない目撃者」

韓国映画「ブラインド」のリメイク作品。流石に韓国映画らしい神経を逆なでするような展開と残虐シーンがそのまま再現されています。前半は謎解きのサスペンス、後半は殺人者に追われるホラー映画の様相で退屈はしませんが普通の映画だった。監督は森淳一。

 

警察官なりたての主人公なつめのシーンから映画は幕を開け、夜遊びしている弟を車に乗せて走る途中で事故を起こし、弟は死に、自分も失明してタイトル。時は三年後になる。

 

ある時、なつめは夜道を歩いていて、スケボーに乗った少年が走り去った直後に急ブレーキの音を聞く。走りよったなつめに車に中から少女の、「助けて」という声を聞く。すぐに車は走り去ったが、なつめは警察に通報する。しかし、視覚障害者の証言はまともに聞いてもらえず、スケボーの少年春馬もそんな声は聞いていないという証言で、一時は捜査されない方向へ。

 

ところが、定年前の刑事木村は、引っかかるところがあり、独自に捜査し始めるが、その中で少女の惨殺死体を発見する。一方なつめと春馬は独自に家で少女を捜索し、救様と呼ばれる謎の人物にたどり着く。やがて連続少女殺人事件となつめたちの捜査は一つになり、背後に儀式的なものの存在をつかんだなつめは木村らと犯人を特定していく。

 

そして見えてきた過去の連続殺人事件。その殺人現場を撮影していた当時高校生だった少年が今は警察官になっていること、さらに行方不明届にあるべき名前が見つからないことなどから、木村らの署に勤務する日下部を犯人と特定する。

 

ところが、日下部を問い詰めに行った木村は返り討ちにあい殺される。なつめと木村と同じ署にいる吉野刑事、春馬らは、日下部アジトと思われる、かつての惨殺事件の邸宅にやってくる。ところが一人乗り込んだ吉野も殺され、春馬となつめが少女救出に邸宅に突入。あとは、ホラー映画のごとく犯人との死闘となる。

 

もちろん、ハッピーエンドなのですが、木村や吉野の死や、惨殺シーンがグロテスクなところは、やはり原案韓国という感じです。中盤、犯人に追い詰められるなつめが携帯カメラを駆使して春馬に逃げ道を指示されるあたりのアイデアはなかなか面白い。でも、結局、肝心のクライマックスで、なつめの盲目を生かした展開は、電気を消すだけで、それはすぐに携帯のライトで犯人に解決されるし、ここにもう一工夫欲しかったですね。

 

退屈しない面白さは十分あるので、娯楽としてはこの程度で不満はありませんが、木村らが死ぬのは流石に感情を逆なでされるようで辛い。もう少し、弟の死のトラウマからの立ち直りや春馬の未来への希望というドラマ部分もしっかり描けていたら骨太の一本になった気がします。

 

アイネクライネナハトムジーク

伊坂幸太郎原作らしい空気感が映像に映し出されている素敵な映画。でも、もう一歩足りない何かがあるのは気のせいでしょうか。いくつかの恋の出会いがさりげない偶然で紡がれていく様はとっても綺麗なのですが、ちょっとテンポに乗り切っていないところがある気がします。この原作でこの監督ならもっと素敵になるのにというハードルの高さでしょうね。でもいい映画でした。監督は今泉力哉

 

未だ出会いのない佐藤が街頭アンケートをしているシーンから映画は始まる。大型ディスプレイでは世界ヘビー級ボクシングタイトルマッチが行われ、歩道橋では路上ミュージシャンが歌っている。そして少し時が遡り、佐藤は先輩の藤間と話している。突然藤間が切れたようにパソコンにあたり、それの上に佐藤の持っていたコーヒーが溢れデータが消える。その罰としての街頭アンケートだった。藤間の妻が突然実家に帰ったらしく藤間は落ち込んでいた。

 

佐藤は路上ミュージシャンをぼんやり見ていて、ふと隣に立っている紗季と目が合い、アンケートを頼む。佐藤には学生時代からの親友一真がいて、彼はみんなの憧れだった由美と結婚して子供がいる。

 

ここに美容院に勤める、出会いがないという美奈子がいる。お客さんが自分の弟を紹介するが電話で話だけで、お互い気はあるのに会おうことに躊躇している。由美は実はその弟と知り合いで、その弟はプロボクサーの小野で、ヘビー級タイトルマッチで勝ってチャンピオンになる。そして美奈子と付き合うようになる。藤間の娘も小野のファンで、佐藤は一真を通じて小野のサインをもらい藤間にやる。佐藤は、ある時、交通整理のバイトをしている紗季と再会し、声をかける。

小野はいろんなシチュエーションでヒーローになるのだが次のタイトルマッチで小野は負けてしまい、落ち込む。そして10年が経つ。

 

一真の娘も高校生となり、佐藤は紗季と同棲して10年を迎えている。小野は美奈子と結婚し、まもなく再度タイトル挑戦することになっている。等々それぞれの恋と出会いの行く末が描かれていく。その背後に路上ミュージシャンがいたり、出会いについてのメッセージがあったりしながら、佐藤が紗季にプロポーズするも、うまくいかず、あれこれ悩む流れの中、小野は再度チャンピオンとなり、紗季は佐藤のプロポーズを受け入れて映画は終わる。

 

何もかもがハッピーエンドで、人生ってこんなに素敵なんだと思ってしまう。自分の今にもっと素直になろうと考え始めたりしてしまう。人間誰しもどこか不器用で未完成なんだ。でもその未完成で不器用な自分にストレートに好きになるのが幸運を呼び寄せる技なんじゃないだろうかと思います。

見た後に余計な俗念が綺麗に晴れて行く自分が見えました。いい映画でした。