くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「顔のない眼」「ある女優の不在」「エクストリーム・ジョブ」

「顔のない眼」

ゴーモン映画社特集。いわゆるカルトムービーである。皮膚を剥がす場面がかなりリアルで、ややグロいが、それでも全体に漂う悲壮感がホラーに一味加えている感じの作品でした。監督はジョルジュ・フランジュ

 

一人の女性が車を運転している。そして後ろには何やら顔を隠した人物。そして海辺について、その女性は後ろの人物、つまり死体を海に捨てる。彼女はある教授の秘書である。その教授の講演の場面、皮膚移植についての講演を終え、帰宅。彼には交通事故で亡くした娘がいたらしく、警察でその死体を見聞して娘だと証言して帰る。しかし、教授は娘の崩れた顔を修復するため、女性を拉致しては移植実験を繰り返していたのだ。

 

この日も秘書は一人の女性を拉致し、手術室へ。そこで教授が手術をし、顔の皮膚を剥がし、娘に移植。ところが剥がされた女性は、自殺してしまう。しかし、成功したかに見えた移植は間も無くして腐敗し。再び娘は仮面をかぶることになる。

 

そんな時、娘の恋人が不審に思い、警察に相談。たまたま万引きで捕まった少女を囮にして、真相を探ろうとするがまんまと拉致されてしまう。ところが、あわや手術というところで、娘がこんな繰り返しに嫌気がさし、秘書を殺し、囮の女性を逃し、実験台の犬を解き放つ。教授は犬たちに噛み殺され、解放された娘は夜の闇に消えて映画は終わる。

 

警察はどうしたん?というラストで、かなり適当感があるし、終盤の病院でのあれやこれやのシーンの意味が今ひとつ分からない。要するに、中盤あたりの娘の苦悩などの場面が映画のメインメッセージのように見える作品ですが、カルト作品として見ておくべき一本という感じでした。

 

「ある女優の不在」

非常にクオリティの高い作品ながら、物語の背景に対する知識が皆無な上に、チラチラと語られる説明もなかなかリアルに受け止めきれず、正直しんどく感じてしまった。ただ、ポツンポツンと家々の明かりが灯る画面作りや、真っ暗闇の中で人々が出入りする映像演出は相当秀でたものであり、その手腕を堪能できるだけでも見た値打ちを感じました。監督はジャファル・パナヒ。

 

携帯の動画から映画が始まる。一人の少女マルズィエは芸術大学に合格したものの、家族や村人から反対されたので今の気持ちをこの映像に込めると言って自ら首をくくって自殺する。映像はそこで終わる。その映像を贈られた女優のジャファリは友人のパナヒと一緒に少女の村にやってくる。ところがこの村ではマルズィエは疎まれていた。

 

もっと役に立つ仕事を見つけるべきなのに芸人を目指したということで、家族も村人から白い目で見られ、長男も許せないと激昂するばかりだった。実際、数日前からマルズィエは家に帰っていなかった。ジャファリたちはマルズィエの友達にも話を聞くも分からず、途方にくれるが、間も無くして、マルズィエが無事であることを知り、ジャファリは激怒する。しかし、話の真相に迫っていくに連れて、ジャファリたちは、何か気づいていなかったものが見えてくる。

 

イラン革命後、悲劇的に演じることを禁じられた女優シャールザードの物語を知り、ジャファリたちはこの国に潜む現代を目の当たりにする。そして旧態然としているこの村の姿に、この国の矛盾を見ることになる。変化することを拒む村にマルズィエはできる限りの抵抗を試みるも全く歯が立たないことを語る。

 

やがて夜が明け、ジャファリたちはマルズィエを乗せてテヘランに戻ることにする。一本道で、クラクションで通行の合図をするジャファリたちの前を雌牛を乗せたトラックが通り過ぎる。この村に必要なのは牛の繁殖なのだと言わんばかりである。ジャファリは歩いて先に進むといい、マルズィエも後に続いて映画は終わる。

 

進歩を止められたようなイランの国へのささやかな抵抗のメッセージがそのラストにようやく見えてくる。流石に表現は素晴らしいものの、それなりの知識があればもっと胸に迫るものがあったろうと思います。でもいい映画でした。

 

「エクストリーム・ジョブ」

いつものような韓国コメディなのですが、テンポが良くてツボにはまるので、最後まで楽しめるし、クライマックスの爽快感の配分が絶妙な上にマカロニウエスタンのような曲に乗せるリズムが絶妙。楽しかった。監督はイ・ビョンホン

 

班長の元に組織された麻薬捜査官メンバーが、間の抜けた突入で苦笑いされるところから物語は始まる。たまたま、後輩の捜査官からの情報で、麻薬の売人のボス、イ・ムベの組織の尻尾を掴むために、事務所の向かいのチキン店を買い取り張りこむことに。ところがチームのマ刑事の料理の才能で店は大繁盛。張り込みどころではなくなる。

 

そんなチキン店の名声に目をつけたイ・ムベの部下が、チキン店をフランチャイズ化し、麻薬の販売に利用することを思いく。そんなこととは知らないコらは、有頂天でその事業に参加するが、どこかおかしいと気がついたコらは密かに調査し、麻薬販売に利用されたことを知り、イ・ムベが大口取引をするつもりのテッド・チャンとの取引の現場に遭遇することになる。

 

終盤、実はコのチームは柔道チャンピオンやムエタイチャンピオン、特殊部隊出身者であることが明らかになり、大立ち回りの末、イ・ムベらの組織全員を逮捕、コのチームは全員特別昇進して映画は終わる。

 

大立ち回りシーンのマカロニウエスタン調の音楽と、テンポ良い展開がなかなか爽快で、目を背けるような韓国コメディのすべりもほとんどなく、ツボで笑わせてくれる。軽い映画ですが娯楽映画として十分楽しめました。