くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「音楽」「スウィング・キッズ」「エスケープ・ルーム」

「音楽」

ロトスコープという技法を使い、四万枚の作画と七年間の時間で完成させた作品を見る。淡々とした冷めたストーリーが独特の空気感を生み出して、ラストにほんのりと切ない青春を放り込んだ物語がとっても素敵な作品。アニメの特徴を最大限に使った絵作りが楽しい作品でした。監督は岩井澤健治。

 

喧嘩が趣味のような研二、太田、朝倉の不良三人組は例によって授業にも出ず、ゲームをしているシーンから映画は幕を開ける。近くの不良グループの大場が喧嘩をしたいという噂で、三人は出かけるが大場の学校がどこかわからず帰ってくる。

 

そんなある時、研二は、たまたま道でベースギターを持ち帰ることになり、突然太田らのところへいきバンドを始めるといいだす。と言っても三人はまったくのど素人で、ただギターを鳴らすだけ、ドラムを叩くだけ。バンド名を古武術としたことから、学校にあるフォークソンググループ古美術と親しくなり、地元のロックフェスに出ることになる。

 

三人組と仲が良い不良女子高生亜矢が何かにつけ絡んでくる。間も無くフェスが迫る時、研二が突然バンドに飽きたと言い出す。太田達はいつものことだからと練習を続け、やがてフェスの日、出番がきて舞台に立った太田達のところへリコーダーを持った研二が現れる。そして大盛り上がりでロックフェスは終了。

 

研二はバンドを解散、教室で研二は亜矢に今度ディズニーランドに行こうと誘う。亜矢は有頂天になり、研二も浮かれて映画は終わっていく。亜矢は研二が好きだったのだ。このラストの甘酸っぱさがなかなかスパイスになって、キュンとして終わった。

 

「スウィング・キッズ」

登場人物それぞれの背景が描ききれいないために、人物が生きて来ず、上滑りのストーリー展開になってしまった。さらに韓国映画ならではの暗さが背景にあるために、そこに力が入りすぎて見せるべきダンスジーンが途中ぼやけてしまい、ラストで無理やり締めくくった感じになってしまった。監督はカン・ヒョンチョル。

 

時は朝鮮戦争終結直後の韓国巨済島収容所。北朝鮮と韓国の捕虜がアメリカ軍によって管理されていた。北朝鮮の英雄の弟ギスはタップダンスの才能があり、アメリカ軍の黒人下士官ジャクソンの目の止まる。そして、ジャクソンの目にかなった四人のダンサーが集められ、赤十字の訪問に合わせて練習を始める。

 

一方、北朝鮮の捕虜はアメリカ軍打倒のための作戦を立て、収容所の所長暗殺を計画していた。そんな時、ギスの兄が収容所にやってくる。そして北朝鮮の反抗分子はクリスマスの夜のジャクソン達のダンスステージの時に所長を撃てとギスに命令する。

 

やがて、ステージが始まり、ダンスも終わるころ、ギスは隠していたピストルを取りに舞台奥の袖中へ。ところがそこには兄がいた。兄は弟を守るため自ら所長襲撃の役を担い、最後は自殺してしまう。重傷を負った所長は部下にダンサー全員の殺戮を指示、ギス以外全員が撃ち殺されてしまう。ギスも足を撃ち砕かれてしまう。

 

やがてジャクソンがここを去る日がきて時は現代。観光地になった収容所の様子が描かれてエンディング。描くべきは収容所でのダンスチームの話だと思うのですが、南北朝鮮のいがみ合いとアメリカ人の黒人差別の描写が前面に出すぎて、全体がぼやけてしまった感じです。やはりお国柄として、韓国映画にエンタメとしてのダンス映画はできないのでしょうね。

 

エスケープ・ルーム」

これといって、斬新な演出もなく、個性的な展開もないよくある脱出ものホラー。脱出のアイデアにばかり力を注いだ脚本で、人物の描写はほとんど無視しているので、ただストーリーを気楽に楽しむB級作品でした。監督はアダム・ロビテル。

 

一人の男が何やら壁が迫ってくる部屋で必死に脱出を試みている場面から映画が始まり六ヶ月前に遡る。様々な事情のある六人の元にキューブ型の招待状が届く。最初に脱出したものに一万ドルが支払われるという。それに従ってあるビルにやってきた彼らは強制的に殺人ルームからの脱出をせざるを得なくなる。

 

炎の部屋から極寒の部屋、天地逆さまの部屋など次々と奇妙な部屋を脱出していくたびにメンバーは死んでいく。そして最後の最後にベンが残り冒頭のシーンへ。ところがクリアして出てみると、ゲームの進行者に殺されそうになる。そこへ、実はフェイクで助かったゾーイが駆けつけてベンを助けて脱出。大金持ち達が楽しむ余興のゲームというよくある種明かし。

 

ゾーイは警察と一緒にビルに入るが、殺人ルームの跡形もなく、幻覚と片付けられる。しかも、新聞記事には死んだメンバーは別の死因になっていた。ゾーイはこのゲームの会社の場所を特定しベンを誘ってそこへいくべく飛行機の手配をする。

 

カットが変わり、飛行機に細工した脱出ゲームを考えている組織のテストシーンが写り、ゾーイが乗るであろう飛行機に仕掛ける段取りをしていて映画は終わる。展開からラストのもうひと押しまで、典型的なB級作品で、楽しかった。