くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「海上48hours 悪夢のバカンス」「アウシュヴィッツのチャンピオン」

海上48hours 悪夢のバカンス」

名作「ジョーズ」を低予算にしただけのなんの工夫もない映画でした。短いのであれだけで見れるというお気楽なB級映画。監督はジェームズ・ナン。

 

海の中を縫うようなカメラにタイトルがかぶる。夜の浜辺で馬鹿騒ぎをする若者たちのショット。生真面目な主人公ナットは恋人トムといちゃついている。お酒を買いに離れて、サメに両足を食われて車椅子に乗る物乞いに声をかけられるが、別になくてもいい伏線。最後の春休みにバカンスにきたナット、トム、ミリー、タイラー、グレッグは、翌朝、水上バイク二台に分乗して沖へ出る。

 

ふざけ合って乗り回していて事故を起こし、一台は沈み、もう一台も操縦不能となる。五人がバイクの上に取り残されたが、周りに船もなく、タイラーは途中に見かけたヨットを探しに一人泳ぎに出る。ところが彼の後をサメが追っていく。ところがサメはタイラーより水上バイクを襲ってくる。

 

あとは、サメとナットらとの攻防戦で、タイラーはヨットを見つけたがたどり着く前にサメに殺され、水上バイクに残った四人も次々と襲われ、大怪我を負ったトムを乗せて、なんとかバイクを直したナットが海岸を目指すが、サメに追いつかれそうになり、トムは自ら犠牲になって恋人のナットを逃す。あと一歩で海岸というところで水上バイク座礁し、迫ってくるサメに間一髪で逃げ延びたナットのショットで映画は終わる。

 

なんの変哲もないエンタメ映画で、85分なのであっという間の時間つぶしの作品という感じでした。

 

アウシュヴィッツのチャンピオン」

実在のボクサータデウシュ・ピトロシュコスキの自伝による作品。舞台がナチス収容所なので暗くなりがちですが、色調をほぼモノクロームに抑え、構図と光にこだわった美しい絵作りで演出されたので、悲壮感が抑えられドラマ性が浮かび上がる結果になって、映画としてちょっとした秀作に仕上がった感じのいい映画でした。少々脚本が弱いので、人物がくっきり見えづらいのが残念ですが、クオリティはそこそこの作品でした。監督はマチェイ・バルチェフスキ。

 

主人公タデウシュの顔のアップ、ナチスの収容所に連れて来られた姿、フラッシュバックして、ポーランドでの幸せな日々のカットが少し挿入されて本編へ入っていく。ナチスによる非道な扱いを受けるタデウシュらの姿、ある時、作業場で喧嘩があり、そこへ一人のボクサー崩れの男ウィリアムが入り、タデウシュと殴り合いすることになる。お互いボクサーだったこともあり、ウィリアムはタデウシュに試合をさせて職員の娯楽にしてはと提案する。

 

タデウシュは次々と試合に勝ち、親しくなった青年ヤネックを可愛がってやりながら、診療所で薬をもらったり、食事をもらったりするようになる。ヤネックは診療所で働く一人の少女に恋心を持ち、手彫りの天使をプレゼントする。そんなヤネックを見ていたタデウシュは、ノイエンガンメ収容所から来ているドイツ人のボクサーでマッスルパンチの異名を持つ男と試合をし勝てばヤネックを自由にしてやってほしいと頼む。しかし、マッスルパンチはタデウシュと階級が違う大きな体のボクサーだった。

 

所員や捕虜の前で試合が始まるが、マッスルパンチが劣勢になったのを見た所長は、タデウシュに薬入りの水を飲ませて負けさせる。なんとか意識が戻ったタデウシュの前に有刺鉄線を手に巻いたヤネックが立っていた。ヤネックにタデウシュを殴れと命令すり所長の声に逆らったヤネックは撃ち殺されてしまう。タデウシュは広場に吊るされる。彼の目の前を大勢の女子供の捕虜が建物に送り込まれていく。中では大量殺戮が行われていた。

 

翌朝、自分の子供を病気で失い、収容所内の非道に疑問を持ちかけている一人のドイツ将校に助けられる。タデウシュは、ふらふらと、昨夜殺された女子供が焼き殺され埋められた穴に体を横たえる。そこで、ヤネックが恋した少女にプレゼントした天使像の焼けた残骸を見つける。タデウシュはそれを取り、この日、ノイエンガンメ収容所の所長を招いてボクシングの試合が行われていた会場へ行く。そこではマッスルパンチが試合をしていた。タデウシュはゆっくりリングに上がり、傷ついた体でマッスルパンチに試合を臨んでいく。所長も許し、ノイエンガンメの所長はタデウシュがポーランドのボクサーテディと知っていて大喜びする中試合が始まる。

 

タデウシュは、マッスルパンチが油断して額をしこたまパンチして指の骨を折らせた瞬間の彼をノックアウトする。ノイエンガンメの所長はタデウシュを欲しいと言い、タデウシュはアウシュヴィッツから移送されることになる。息子を亡くしたドイツ将校は、ボクシング好きの息子が持っていたスクラップブックをタデウシュにプレゼントする。やがて戦後、ジムで若者たちにボクシングを教えるタデウシュの姿が映され映画は終わる。

 

ナチス映画というより、一人のボクサーの人間ドラマという感じの作品で、素直なストーリー展開と美しい画面作りに惹かれる一本でした。