くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「X」

「X」

評判が悪いので期待していなかったのですが、1970年代テイスト満載のカメラワークとカメラアングルを多用して、映画とは光と影であることを徹底した演出がなかなか見応えのある映画で、背後に流れる音楽との融合性の面白さや、ブラウン管テレビで延々と放送されている番組との交錯映像が実にうまく、作品としては見応えのあるB級ホラーとしての傑作だった気がします。監督はタイ・ウェスト

 

二人の保安官が一軒の農家にやってきて、何やら惨状を目の当たりにしている場面から映画は始まる。そして24時間前に物語は戻る。田舎の農場で自主映画を撮ろうとしているウェインら六人の男女が車で出発する。途中、牛が車に轢かれたのかぐちゃぐちゃになっている事故現場に遭遇、不吉な予感のまま、目的地の農場へやってくる。

 

出てきたのは相当高齢な爺さんの農場主のハワードだった。銃を持って出てくるがただの脅しだからと、連絡を受けていた旨を確認して離れの小屋に案内する。実は彼らが撮ろうとしているにはポルノ映画で、早速、男役のジャクソンが二人の女優とSEXを始める。音響担当で監督のRJの彼女でもあるロレインは、彼氏の前で他の男とSEXする場面を撮っている姿に嫌悪感を持ってしまう。

 

農場の本宅では、農場主の妻がいた。農場にやってきた時マキシーンは窓から覗いている不気味な老婆の姿を見る。彼女は農場主の妻だった。次々とSEXシーンを撮っているが、老婆の影がちらつき始める。撮影シーンはスタンダード画面、全体をワイド画面という映像演出を繰り返すと共に、本宅で放映しているモノクロテレビの演説場面が繰り返し交錯していく。

 

乱行のようなSEXの連続に辟易としたロレインは、恋人RJの反対を押し切って自分も出演すると言い出しジャクソンとの濡れ場シーンに臨む。一日が終わり、嫌になったRJは一人車で帰ろうとするが目の前に老婦人が立っていた。てっきり徘徊しているのだと降りてみたらいきなり首を刺される。RJがベッドにいないのに気がついたロレインはプロデューサーのウェインの助けでRJを探し始めるが、別々に探していてウェインは牛小屋で老婦人に突き殺される。さらにロレインはハワードに騙されて本宅の地下に閉じ込められる。

 

庭で老婦人を探しているハワードを見たジャクソンは、一緒に探してやろうとするが撃たれてしまう。セクシー女優のボビーは沼のほとりで一人立つ老婦人を見つけて、介抱してやろうとして近づいて沼に突き落とされる。沼にはワニがいて、ボビーは食われてしまう。駆けつけたハワードは老妻を連れて小屋に戻る。二人はベッドで愛し合い始めるが、不気味な様子に逃げていたマキシーンはベッドの下に隠れていた。そしてなんとか脱出し、本宅で何やら声を聞いてやってくるとロレインが閉じ込められていた。ロレインを助け出し一緒に逃げようとするがロレインはマキシーンらを嫌っていてヒステリックになっていた。そこへハワードがやってきて猟銃を発射、ロレインを撃ち殺してしまうが、ハワードは心臓の発作でその場で死んでしまう。

 

老妻は銃を取り、マキシーンを撃つが、反動で吹き飛ばされ腰を痛め立てなくなる。マキシーンは車のキーを手に入れトラックに乗り、老妻を轢き殺して脱出、何処かへ消える。テレビでは、演説していた男が最後に行方不明の悪魔に身を売った女パールの写真を開いていた。その写真こそマキシーンその人だった。翌朝、駆けつけた保安官たちは一台の映画のカメラを発見する。多分、ゲテモノホラー映画が映っているんだろうと言って映画は終わる。

 

ちょっとした傑作です。もちろん、どこかで見たようなノスタルジックなホラー映像の数々が散りばめられていますが、カメラアングルやカメラワークはどこか懐かしい空気感満載なのと、どこかで見たようなキャラクターの風貌、懐メロかと思わせる選曲の楽しさ、影や光を有効に使った映像演出が面白い作品でした。見て良かった。