「Red」
なかなかの仕上がりの映画ですが、いかんせん全体が暗いですね。男と女の恋、結婚について掘り下げたメッセージなのだと思いますが、全体の赤のイメージが妙に暗い。でもいい映画でした。監督は三島有紀子。
主人公塔子と10年前に恋人だった鞍田が車で走っている。トラックの赤い布が落ちる。電話ボックスで塔子がどこかに電話している。どうやら二人は逃避行なのか?画面が変わり、塔子の今の生活。大邸宅に住み、夫と娘、そして義母と暮らしている。義母の態度は明らかに姑のイメージで、夫の村主も昔ながらの態度で塔子に接している。
夫と出かけたあるパーティで塔子はかつての恋人鞍田と再会する。今の日常に苦しんでいた塔子は一気に鞍田と口づけをしてしまう。やがて、塔子はもう一度設計の仕事に就くべく鞍田のいる会社に入る。
映画は、塔子と鞍田がみるみる接近していく様子と、雪深い道を走る車の中の二人、現在の塔子の結婚生活を交互に挿入しながら描いていく。鞍田が新潟での仕事を進める中でアシスタントが必要となり、塔子が立候補、二人は新潟へ向かう。当然、二人の仲はさらに進むものの、鞍田は悪性リンパ腫を患っていた。
年が明け、鞍田の仕事の仕上げの段階で、鞍田は突然入院。塔子は同僚の小鷹と新潟に向かうが、帰れなくなってしまう。しかし夫は宿泊を許さず、強引に帰宅を要求、塔子は仕方なくタクシーを探すために雪に中外に出る。ところが、そこに鞍田の車を見つける。
二人はそのまま東京へ向かうが、途中、冒頭のシーンと重なってくる。結婚指輪を電話ボックスに置き、夫と別れる決心をし、そのまま戻ってくるが、鞍田の体は限界に来ていた。
斎場で塔子がいる。娘の声が聞こえて、外に出ると夫と娘が待っているが、塔子は二人を置いていずこかへ歩いて行って映画は終わる。過去の鞍田と塔子の描写がやや希薄なために、鞍田と塔子の逃避行的な車の中のシーンに厚みが足りなくなった気がします。赤い色を基調にした画面作りは美しいですが、もう一歩仕上がりきれていない。でもいい映画でした。