くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「mid90s ミッドナインティーズ」「真夏の夜のジャズ」(4Kリマスター版)

「mid90s ミッドナインティーズ」

これは良かった。まず音の使い方が抜群に良い。国は違うけれど、かつての自分達の少年時代と全く変わらない世界があった。しかも映像のリズムがいい上に、少年たちの心の温かさが切々と伝わってきて引き込まれてしまいました。ラストも良い。良い映画見たなあという感じです。監督はジョナ・ヒル

 

クレジットのA24がスケボーで壊される。そして一人の少年が部屋から飛び出してきて彼を追いかけて出てくる兄。少年スティヴィーは力の強い兄イアンにいつも殴られていた。この場面の音の使い方が極端にデフォルメされていて、この映画のセンスの良さをまず感じます。

 

スティヴィーの姿とタイトルクレジットが交互に映され、スティーヴィーが街をうろついている場面へ移る。そこで、スラム街の不良少年たちがスケボーで遊んでいる姿に見入ってしまい、そのカッコ良さに憧れる。そして兄イアンにスケボーを譲ってもらい、一人で練習しながら、スラム街の少年たちのそばに屯するようになる。

 

やがて一番年齢が近いルーベンと親しくなり彼といつもつるんでいる黒人のレイ、髪の毛が金髪のファックシット、映画監督になる夢を持っていつもカメラを片手にしているフォースグレードらと遊ぶようになる。

 

映画はスティーヴィーとスラムの少年たちとの交流を中心に展開し、ふとしたことからスティーヴィーはレイらに気に入られ、次第にこのグループにのめり込んでいく。しかし、息子の行動に不信を持った母のダブニーはレイらの溜まり場に乗り込んで、今後付き合うなという。しかし、次第に成長して自立心も芽生えてきたスティーヴィーは、そんなことはお構い無しにグループの中に溶け込み、やがて、少女とのSEXまがいのことも経験していく。母に責められて落ち込むスティーヴィーにレイが、みんな自分が最低だと思っているが周りを見たらもっと最低な奴がいることに気がつくものだと、つるんでいる仲間の一人一人の素性を教えて慰めてくれる。

 

レイの一番の親友のファックシットが、最近ドラッグや酒に溺れるようになって来たのを気にやむレイはファックシットに忠告をするが、ファックシットは、酒を飲んでいるにもかかわらず仲間を車に乗せて遊びに行こうと誘う。気が進まないながらも乗り込んだスティーヴィーたちだが、事故を起こし、スティヴィーは意識を失ってしまう。

 

スティヴィーが気が付くと傍らに兄がいて、ジュースをくれる。病院にやってきた母ダブニーはロビーでスティーヴィーの症状を心配して泊まり込んだレイらの姿を見つける。ダブニーはその優しさに心を打たれ、レイらをスティーヴィーの病室に招いてやる。

 

そこで、フォースグレードが撮り溜めていた映画を見ようとレイらが提案。スイッチを入れると、生き生きとスケボーで滑ったり楽しく過ごすレイやスティーヴィーらメンバーの姿があった。そして、その映画に題名こそ「mid90s」だった。こうして映画は終わる。もう最高ですね。

 

音の使い方が見事というのと、低いカメラで向こうからこちらにスケボーで滑ってくる少年たちのカットも素晴らしい。スティヴィーが親しくしていくレイらのメンバーの暖かさも見事だし、兄や母の描き方もとっても良い。本当にいい映画に出会いました。

 

真夏の夜のジャズ

1958年開催の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバルを捉えた名作中の名作。本当にいい映画ですね。音楽ってこういうものなんだよ、音楽ってこう楽しむものなんだよって語りかけてくるような気がします。監督はバート・スターン。

 

ドキュメンタリーなので物語というものはありませんが、暗闇に浮かび上がるような野外舞台のシチュエーション、ステージに嬉々として聴き入っている観客の顔、ただ楽しむように歌い上げて観客に声を届ける歌手たちの笑顔、とにかくどこをとっても素敵。

 

しかも、ステージのオレンジをバックにした人々のシルエットの捉え方、ラストの街を去っていく若者の車のショット。いい映画というのはなんとも言えない感動を呼び起こしてくれます。えーっ、もう終わり?そんなものさえ感じられる名作でした。