くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コンビニエンス・ストーリー」「アンドレイ・ルブリョフ」

「コンビニエンス・ストーリー」

面白い怪談話なのですが、ちょっと監督と役者がチグハグになってしまって、取り留めのない仕上がりになったのは残念。途中何度か眠くなってしまった。特に惠子役の前田敦子がやや役不足、もう少し妖艶な大人の色気を醸し出せる女優であればいい作品になった気がします。監督は三木聡

 

映画の脚本家加藤の部屋で、これから映画のオーディションに行こうとしている恋人のジグザグのカットから映画は幕を開ける。愛犬ケルベロスの世話を頼まれた加藤は不機嫌なままジグザグを送り出す。ケルベロスの好きなドッグフード犬人間を買いそびれて戻ってみるとケルベロスは不機嫌で、再度コンビニに行ったところで、車が突っ込んできて加藤は車に吹き飛ばされる。コンビニに入る手前でコップに飾られた花を蹴飛ばしてしまう。

 

戻ってみるとケルベロスはパソコンをいじっていて、せっかく書き上がりかけた脚本がオジャンになる。怒った加藤はケルベロスを捨てに行き、そのまま戻ろうとするが、途中で立ち寄ったコンビニで買い物をして車に戻ると車が動かない。仕方なくコンビニへ戻ると惠子という店員に出会う。最後まで見ているとわかるが、車に吹き飛ばされて加藤は死んでしまい、彼の涅槃の物語なのである。

 

立ち寄ったコンビニから何故か不思議な裏の店に足を踏み入れ、恵子に誘われるままにそのコンビニで数日過ごすことになる。惠子の夫の南雲は謎の男。一方、行方不明になった加藤を探すためにジグザグは謎の探偵に仕事を依頼する。どうやらその探偵はあの世まで探せる人物らしい。

 

加藤は恵子とねんごろになり、一緒に逃げることになるが、途中で惠子と逸れコンビニに戻ると、南雲は加藤を探しにきた探偵らを射殺していた。南雲は惠子の不倫相手が加藤だと知り加藤に銃を向けてくる。必死で逃げる加藤を逃したのは駆け戻った惠子だった。そして加藤は元の世界に戻って来るが、そこに普通に恵子がいた。次の瞬間車が突っ込んでくる。

 

一方ジギザグは、探偵らから加藤が事故で亡くなったことを知り、コンビニ前に花を供える。加藤はコンビニに入る時にその花を踏むという最初の伏線がやっと意味を持ってくる。ジグザグは探偵に頼み加藤を連れ戻すつもりだったのだが、南雲に探偵が殺され、加藤は出会えなかったのだ。こうして映画は終わっていく。

 

いわゆる「ツィゴイネルワイゼン」や「ふくろうの河」のような展開の話ですが、うまく噛み合っていないのは配役のミスなのかもしれません。思い返すと三木聡ワールドで面白かったのですが、今一つの仕上がりでした。

 

アンドレイ・ルブリョフ」

十年ぶりの再見でしたが、やはり映画自体は退屈な作品です。でも、決して凡作ではなく、画面の美しさ、映像演出の見事さはやはり一級品です。ラストでカラーのイコン画が次々と写されるまでは全編モノクロで通していく大作ドラマの迫力はやはりあります。見直して良かった。監督はアンドレイ・タルコフスキー

 

1400年、一人の男が手作りの気球を飛ばそうとしている場面から映画は始まり、アンドレイたちが山小屋に雨宿りに立ち寄り、そこでキリルの密告から一人の大道芸人が逮捕されていく下りとなる。画家として名を馳せるために、フェオファンが教会の壁画の助手を探しているということで自分を指名してほしいとキリルは嘆願するが、フェオファンはアンドレイを指名する。それを恨みに思ったキリルは修道院を去り俗世間に戻る。

 

しかし、アンドレイの筆は進まなかった。そんな時、タタール人がロシアに攻め入ってくる。アンドレイは一人の知的障害の少女を救うために殺人を犯し、罪の意識から絵筆を断つ。そして無言の行に入る。

 

大公はロシアの偉業を諸外国に示すために鐘の鋳造を計画していたが、鐘職人の男らが伝染病などで死んでしまう。職人の息子ボリスは、自分も技を引き継いでいるからと、鐘作りに参加するが、実は何の技も教えてもらっていなかった。なんとか鐘は完成、見事音色を響かせる。安堵し気の抜けたボリスに寄り添うアンドレイ。ボリスはアンドレイに真実を告白する。そんなボリスにアンドレイは、自分ももう一度絵を描くからお前は鐘を作れと諭す。こうして物語は終わるが、ここまでがモノクロで、この後アンドレイのイコン画だろうか鮮やかな絵画がカラーで映されて映画は終わっていく。

 

大河ドラマのような壮大な物語ですが、やはり構図や映像表現は卓越しています。タタール人がやってくる場面の大スペクタクル、数騎のタタール人が再度くる時の暖簾の穴から映される逆さまの影の表現、大胆な俯瞰のカメラワークで描かれる大きな画面、主人公らの顔に焦点を当てる人間ドラマの演出など、やはり一級品です。ただ、脚本の構成の弱さか、やはり退屈な映画です。