「パピチャ 未来へのランウェイ」
バストショット以上のカメラアングルと時折挿入する手持ちカメラの映像が全体を緊張感あふれる仕上がりにした映画、こういうアルジェリアの現実をストレートに描かれると、やはりアメリカ映画にない重苦しさを感じてしまいます。30年くらい前を舞台にしていますが未来の見えない締めくくりがストーリーの明るさと好対照になっていたたまれなくなってしまいました。監督はムニア・メドゥール。
寮生活をする女子大生のネジュマと友達のワシラが、深夜、寮を飛び出してタクシーの中で着替えて、ダンスホールへ出かけるシーンから映画は始まる。軽快な音楽をタクシーで流してもらい、たどり着いたダンスホールのトイレで、ネジュマが注文を受けたドレスを販売する。青春真っ只中の女子大生の物語のように幕を開ける。
しかし、帰りのタクシーが来ずに、たまたま声をかけてもらった若者二人の車で帰宅するが、寮の壁など至る所に、女性の服装はヒジャブを着たこういう姿だというイスラム原理主義者のポスターが貼られている。
ネジュマには、アナウンサーをしている姉リンダがいる。仲の良い姉妹だが、ある時、リンダはネジュマの目の前でイスラム原理主義を狂信する女性に撃たれて死んでしまう。ネジュマはそんな世の中に反抗するべくヒジャブの生地にも使う布を加工したファッションショーを企画、ワシラやサミラにも協力を求める。
ところが、ネジュマの部屋にイスラム原理主義をうたう黒服の女たちがやってきて部屋を荒らす。次第に街中もイスラム原理主義の空気が強くなり、ネジュマがいつも行く生地屋もオーナーが変わってヒジャブ専門店に変わっていた。そして寮の周りにも壁が作られ、さらにネジュマの部屋が荒らされてめちゃくちゃにされる。しかも、交際していた恋人からも、男尊女卑的な発言を受け、どん底になるネジュマ。しかしワシラらが目覚め、再度ファッションショーを目指そうとするが、寮母は、危険だからと反対。
しかし食堂でネジュマたちは他の寮生にも訴え、外にわからない範囲でのファッションショー開催の了解を取る。そして当日、寮生たちの歓声の中ファッションショーが無事終わるかと思われた時、銃を持った男達が乱入。
何もかも終わったネジュマは、姉が好きだった赤い花を墓に備える。婚約していたサミラは破談となり行き場もなくなるが、ネジュマの母がそんな彼女を受け入れ、ネジュマが開こうとしている洋装店を一緒にやることになって映画は終わる。
結局、彼女らはいまだに変わっていない国で生活しているのだろうという未解決のまま終わっていくのは流石に重い。世界に訴えかけたいメッセージを痛烈に盛り込んだ作品で、バストショット以上のアングルを徹底した登場人物の表情で見せる演出が緊迫感を生み出して、見ている私たちに問題意識を投げかけてきます。良い映画ですが、ずっしりと心に残ります。