くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「パリ、テキサス」「ボルサリーノ」

パリ、テキサス

パリ、テキサス
見逃していた、ヴィム・ヴェンダース監督の傑作をみることができた。というか、やはり、全盛期のナスターシャ・キンスキーを見たかったというのもある。

さすがに、ヴィム・ヴェンダース大人気の頃の一品、すばらしい映像に引き込まれる。特に、画面の中に、青、黄色、赤を様々な形で配置した画面づくりが目を引くのです。

真っ青な空、真っ赤な帽子、黄色い大地、黄色いジャンパー、赤や黄色の路上の文字、夜のネオン、ドアの色などなど、徹底した色彩画面の中に、人物や物を配置する。そこで語られるのは、どこかファンタジックなロードムービーという形を取ったラブストーリーです。

アメリカの荒野の真ん中、真っ赤な帽子をかぶった主人公トラヴィスが登場して映画が始まる。どこかのカフェに入り、水を飲んだとたん倒れ、そのまま医者の診察。ポケットにあったウォルトという名前で、連絡を取り、弟のウォルトが迎えにくる。

四年前に行方不明になったままだったトラヴィス。トラヴィスの妻ジェーンもどこにいるか不明。二人の息子のハンターをウォルトとアンの弟夫妻が預かっているのだ。

なぜか、トラヴィスは空き地の写真を持ち歩き、そこはテキサス州にあるパリというところだという。

淡々と語りかけるようにストーリーが進むが、みるみるハンターはトラヴィスとの絆を取り戻していく。あざとい演出など施されず、さりげない映像の中に、いつの間にか親子として修復される展開は、さすがにうまい。しかも、画面の上半分が広く空間としてとらえる真っ青な空、という解放感あふれる画面の、見ていてすがすがしい。

ヒューストンの銀行から、ハンターのためにジェーンが振り込んでいると聞き、トラヴィスはハンターを連れてヒューストンへ。一方四年間親子として過ごしたハンターが離れていくことに、ウォルトの妻アンは寂しさを露わにする。

やがて、ヒューストンでジェーンの車を発見、なにやら大人の店に入ったジェーンをトラヴィスが追うと、そこは、マジックミラーを通して客の男と、鏡の向こうの女性が話をするという店だった。そこで素性を隠してトラヴィスはジェーンと話すが、一度ホテルの戻り、ハンターに別れのメッセージを告げて再び店へ。そこで、この四年間、いやジェーンとの出会いからの物語をトラヴィスは鏡のこちらで語る。

写真にあった空き地は、三人で生活するために必死で買った土地だったと告げるトラヴィス

やがて、トラヴィスだと気がつくジェーンに、トラヴィスはハンターの待つホテルを告げるのだ。

ジェーンは、教えられたホテルに行き、ハンターを抱きしめる。窓の外では、じっと見つめるトラヴィス。そして、車で走り去る暗転。

終盤、トラヴィスがジェーンに、これまでの物語を語る場面は、ややしんどいが、それまで外の景色を中心に、広い画面の構図を徹底していたのが、この場面でクローズアップに変わり、映像のテンポを作り出す。これが映画のリズムである。

なぜ、自分が行方不明のようにさまよったのかはわかったようなわからないようなで、結局不明だが、そのミステリーがこの作品を何ともいえないラブストーリーにも見せている。もちろん、ハンターを通じての親子の物語としても、実に不可思議なくらいミステリーが潜んでいるが、美しい色彩演出で見せる作品の完成度は、まさしく、ヴィム・ヴェンダース監督ならではの力量だと思います。

もう一つ、少ししか登場しないナスターシャ・キンスキーの存在感も見逃せない映画でした。本当に、見事な傑作です。


「ボルサリーノ」
いうまでもなく、フランス二大スター、ジャン=ポール・ベルモンドアラン・ドロンが共演した名作である。今回デジタルリマスター版でようやくスクリーンで見ることができました。

クロード・ボランの、軽いテンポの名曲に乗せて描かれる、本当に軽いタッチのフランスノワール。ギャング映画ですが、重々しい展開よりも、小気味良く展開するストーリーは、1930年代という舞台を見事にスクリーンによみがえらせてくれます。

映画は、テーマ曲に乗せて、主人公の一人シフレディ(アラン・ドロン)が出所してくるシーンに始まる。まだまだチンピラで、四ヶ月という刑期を終えて、恋人のローラの元へ向かう。ところがローラにはすでに新しい恋人カペラ(ジャン=ポール・ベルモンド)がいる。

そこで、二人は殴り合いになり、そのまま男の友情が生まれる。そして二人は、マルセイユを舞台に違法行為を繰り返し、のし上がっていくというのが本編である。

ことあるごとに、テーマ曲がアレンジされ、軽いリズムで、次々とマシンガンをぶっ放すシーンやらが展開。その心地よいテンポに乗って、とうとう、二人は地元の頂点に立つ。ところが、頂点に立った夜、カペラはシフレディの元を去ると告げるのだ。

二人がいればいずれお互いに殺し合いになるから、自分が身を引いて旅行にでるのだという。そんなカペラをじっと送り出すシフレディ。どこか、むなしさと寂しさに沈むシフレディだが、カペラが出ていった直後、銃声が響く。

飛び出したシフレディの腕の中で息を引き取るカペラ。「俺の幸運も消えてしまった」と言い残して。

当然、大ヒットした作品であり、当時、日本では人気ナンバーワンのアラン・ドロン作品、今見ても、その見事な映像テンポに引き込まれる一本でした。少々、アラン・ドロンは太り気味になっている感じがしないでもありませんが、さすがに、あのクールな視線は最高ですね。監督は・ジャック・ドレーです。