くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あるじ」

「あるじ」

シンプルな物語を、練った脚本と演出で見せていくコメディ作品という感じで、描かれるテーマは今時に通じる物があるのがなんとも面白い作品でした。監督はカール・テオドア・ドライエル。

 

ある家族の朝から映画が始まる。忙しく朝の支度をする妻イダだが、起きてくる夫ヴィクトルに子供たちもビクビクしている様子である。娘のカーン、息子フレゼリックも父親が怖いらしく、せっせと父親の様子を母に知らせながら忙しく動いている。起きてきたヴィクトルは、あれこれ自分の気に入らないことでイダに当たり散らす。そんなヴィクトルの機嫌を取るように振る舞うイダ。仕事に出た後も、家事をこなすイダだが、ヴィクトルの乳母で時々この家を手伝いにくる老婆ホッスがやってきてヴィクトルの様子を冷たく見ている。

 

ホッスは耐えられなくなり、イダの実家の母クェルを家に呼ぶが、その義母にもヴィクトルは横柄に振る舞う。そして、自分が散歩している間にホッスもクェルもいなくなるようにと言い捨てて家を出る。耐えられなくなったホッスらはイダに、しばらく家を離れるように忠告する。

 

フレゼリックが馬車を呼び、イダを実家に帰す。戻ってきたヴィクトルはホッスに詰めよるが何も答えなかった。イダは実家で医師の診察を受け、しばらく家族と離れることと、街から遠ざかるように忠告する。ヴィクトルはイダの実家に妻を連れ戻そうとやってくるが医師は会わせなかった。

 

ヴィクトルはホッスの世話で、イダのいない生活を始める。何事にもホッスに指示され、今までイダが全てやっていたことをせざるを得なくなり一ヶ月が過ぎる。従順になっていくヴィクトルを見るホッスは、そろそろサプライズの必要を感じ始めていた。体調もすっかり回復したイダを呼び寄せ、まず納戸に隠して、変わったヴィクトルの姿を見せる。そして、イダが浮気をしているように見える手紙をわざとヴィクトルに見せ、ヴィクトルが元のように戻らないか確認した上で、ヴィクトルが本当にイダを大切に思っていることを確信したところで、イダをヴィクトルの前に出す。ヴィクトルはイダに真摯に向き合い、優しく抱き寄せる。子供達、ホッスやクェルも交えて、楽しい食卓を囲む姿で映画は終わる。

 

なんのことはない普通の作品ですが、当時ではコミカルな映画に映ったことでしょう。今風のテーマを百年近く前に撮り上げた点は今見れば面白い見方のできる映画でした。