「リトル・ボーイ 小さなボクと戦争」
すてきなファンタジー色の詰まったヒューマンドラマ。物語を素直に受けて行けばとにかくラストで思わずしんみり泣いてしまいました。しかし、ちらほらとうかがわせる反戦メッセージは、取り用によっては、ちょっとずるいストーリー構成ではと思わせなくもない。監督はアレハンドロ・モンテヴェルデという人です。
主人公の少年ペッパーのセリフから映画が始まる。生まれてからなかなか背が伸びず、地元の子供達からリトルボーイと呼ばれている。しかし、大好きな父親にいつも愛され、相棒になって、奇術師ベン・イーグルのショーや映画に出かけていた。
やがて太平洋戦争が勃発。兄は扁平足ゆえ兵役に行けず、代わりに父が行くことになる。一方で、街にはアメリカ軍の捕虜だった日本人ハシモトが住んでいた。
ある日、ベン・イーグルのショーでアシスタントに立ったペッパーは、瓶を動かすというマジックを成し遂げてしまい、自分の能力だと信じたペッパーはその力で父親を戻そうと考える。一方で、ハシモトを憎み、ガラスを割ったりする。
そんな彼に神父はキリスト教に古くから伝わるメモを渡す。そのメモの行いを全てクリアすれば願いは叶うと教えるのだ。ペッパーは早速そのメモの行いを達成するために行動するが、その中で次第にハシモトと交流するようになる。
町の人々のハシモトへの憎悪を感じながら、父への思い一筋でひたすらメモの目的を達成していこうとするペッパー。やがて、日本に原爆が落とされ、ペッパーの戦争終結という願いが届いたかに思えたが、一瞬で町を吹き飛ばした自分と同じ名前の爆弾に恐怖を覚えてしまう。
やがて父の戦死の知らせが届き、一方でハシモトへの暴力事件なども起こる。メモの目的を全て達成したにもかかわらず、父が戻らず、落胆するペッパーだが、なんと戦死の知らせは誤報であることがわかり、父は病院でいることがわかる。家族が会いに行き、車に乗って去るシーンでエンディング。
ファンタジックな展開と映像で見せる一方で、日本人とアメリカ人との確執という太平洋戦争下のアメリカの姿、さらに父と息子の物語というヒューマニズムな面、原爆に対する視点など、様々にテーマが入り乱れすぎたきらいがある作品で、もう少しストーリーを整理して仕上げたほうが流れがシンプルになってよかったのではないかと思える。凡作ではありませんが、詰め込みすぎたような感じです。
「ディアスポリス DIRTY YELLOW BOYS」
久しぶりに、早く終わってくれと思うほどのつまらない映画に出会ってしまった。内容の薄っぺらさ、悪役のつまらなさ、ただひたすらわめくだけの展開、何もかもが世界観が小さい。もちろん原作コミックもあるのだから、ある程度は仕方ないが、やはり映画にする段階でもっと膨らませるべきだ。テレビドラマの映画版ということだが、その点でも適当すぎる。監督が熊切和嘉なので見に行ったが、残念。
映画は、不法密入国者のみの社会に、裏都庁、裏警察があるという設定で映画が始まる。テレビドラマのキャラクターの紹介の後映画がスタート。一人の風俗嬢が外国人二人に呼ばれ誘拐されるところから物語が始まる。結局、女は殺され、奪った金はヤクザの指示の元だったため、外国人は分け前の件でヤクザを殺し逃げる。
この外国人を追う裏警察の久保塚らと、手下を殺されたヤクザが彼らを追う。いかにもこの二人の外国人がしょぼいので、とにかくつまらない。手持ちカメラを多用し、狭い空間を追いかけていくようなカメラワークを多用、一方で斜めや横長画面を利用した構図などで工夫が見られる演出をしているが、お話がつまらないので、見ていられない。
大阪にある十億をさらに奪うために向かった二人の犯人を最後は殺してエンディング。なんなの?ということである。
見なければよかったと思うような作品でした。残念です。