くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊」(4Kリマスター版)「ソウルメイト 七月と安生」

GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊

見逃していたアニメ大作を見る。評判通りの傑作でした。もし、この作品を1995年リアルに見ていたらもっと驚いていたと思います。斬新な画面と音楽、さらにシュールで哲学的な物語、行間に隠された様々な謎、これこそ日本アニメの真骨頂です。世界中にファンを作り出したことも納得の作品でした。監督は押井守

 

すでに水没した地域もある近未来西暦2029年、一人の女性、いやアンドロイド草薙素子がビルの屋上から真下を見下ろし、徐に衣服を脱いで全裸姿となる。衝撃的なオープニングである。ある外国人が一人の男を連れ帰らんと密談をしているがそこへサイバーテロ対策に非公式に組織された公安9課通称攻殻機動隊が突入するが、反撃に遭う。そこへ窓を突き破って草薙素子が突入する。

 

そんな頃、某国手配中の凄腕ハッカー、通称人形使いが日本に現れると言う情報が入ってくる。草薙や相棒のバトーらはその情報を追い始めるが、背後に、外務省や公安6課らの陰謀が見え始めてくる。

 

調査を進めているある時、謎のハッキングの痕跡を見つけた草薙らが現場に向かう。そこには、事情もわからず人形使いに脳内に架空の記憶を埋め込まれた一人のごみ収集員を見つける。さらに、その本体を模索するものの真実に辿り着かなかった。草薙とバトーは突然何者かの声を聞く。

 

ある日、一つの擬態が車にはねられ残骸となって公安9課に持ち込まれた。まだ脳内損傷のない半身の擬態を調べていたが、公安6課と外務省が回収をしたいとやってくる。不審に思った草薙らが、彼らを見張るが、突然半身の擬態が話し始める。自分こそが人形使いであり、一時公安6課に避難したものだと答え、そして脱出する。草薙らはその擬態を追う。そして草薙は擬態の本体にたどり着くがそれは戦車であった。

 

攻撃してくる戦車と応戦する草薙だが、間一髪駆けつけたバトーが戦車を不能にする。草薙は人形使いに直接アクセスすると言い出し、半身の擬態に並ぶ。一方外務省と公安6課は、擬態を破壊するためのヘリを送り込んで来る。実は、元々バグとして存在していたプログラムが自ら意思を持ち、人形使いとしてネット内を暗躍し始めたのだ。何とか擬態の中に閉じ込めたものの逃げ出したため、外務省らは破壊することを決定したのだ。

 

人形使いは草薙に、更なる進歩のため一体となって子孫を残すことを望むと提案する。危険を感じたバトーは接続を切ろうとするが、そこへヘリからの攻撃が入り、擬態も草薙も破壊される。意識が薄れていく草薙が次に目覚めるとバトーの部屋で少女に体に入っていた。少女となった草薙あるいは人形使いはバトーに車のキーをもらい家を後にする。街を見下ろし、ネットの世界は無限だと呟いて映画は終わる。

 

独特の世界観と、骨太な画面作りに埋め込まれる凝縮された哲学的なストーリー展開に魅了される一本で、押井守の評価を世界に知らしめたと言う解説を十分唸らせる傑作でした。

 

「ソウルメイト 七月(チーユエ)と安生(アンシェン)」

これは傑作でした。ストーリーの組み立てのうまさ、エピソードの配分のテンポ、登場人物の心理描写などなどが練り込まれて仕上がっていました。もう感動の涙しかありませんでした。久しぶりに自分好みの青春ストーリーに出会いました。監督はデレク・ツァン。

 

アンシェンのところにある映画プロデューサーが訪ねてきている場面から映画は幕を開けます。ネット小説で話題の「七月と安生」を映画にしたいが作者のチーユエの居場所が分からず、小説の中に登場するチーユエの相手役のアンシェンのところにきたのだと言う。しかしアンシェンは、チーユエなどと言う人物は知らないと答える。その帰り電車の中でアンシェンはかつてチーユエの恋人だった青年ジアミンと再会する。アンシェンは、自分たちから去ったのはジアミンだと半ば罵り急いで列車を降りるが降り側にジアミンは名刺を投げる。

 

アンシェンは自宅に戻る。幼い娘のトントンが眠る脇を通り自分のベッドで、さっき言われた「七月と安生」と言うネット小説を読み始める。それは、13歳の頃に知り合ったチーユエという友達との切ない思い出の物語だった。映画はアンシェンが小説を読みながら過去を回想していく流れと、その真実を微妙に織り交ぜて展開していく。

 

13歳の時学校で出会ったアンシェンとチーユエはすぐに意気投合し、安定した家庭のチーユエは事あるごとにアンシェンを自宅に招く。温かい家庭、優しい両親の元で暮らすチーユエにかすかな嫉妬を覚えるアンシェン。アンシェンの父は亡くなっていて、母は仕事でほとんど家にいなかった。アンシェンは自然と世渡りの術を覚えていったのだ。二人はいつも一緒に行動を共にし、二人の友情はどんどん育まれていく。

 

やがてチーユエは進学、アンシェンはバーで仕事を始める。チーユエは好きな人がいると言う。それは陸上部にいるジアミンという青年だった。アンシェンは、巧みにジアミンに近づき、チーユエとの仲を取り持つように行動する。まもなくして、チーユエはジアミンと出会い、交際が始まる。チーユエはジアミンとアンシェンの勤めているバーへ行き、アンシェンは初対面のフリをしてジアミンと会い、それから三人で遊ぶようになる。

 

ある時、ハイキングに行った時、たまたまアンシェンとジアミンが二人きりで途中の祠に寄る。その際、ジアミンは幼い頃からつけているペンダントの説明をアンシェンに話す。その話はチーユエもジアミンから聞いていた話だった。やがて、アンシェンはバーのバンドのメンバーと恋に落ち街を出ることになる。駅で見送る際、列車の窓から顔を出したアンシェンの首にジアミンのペンダントがかかっているのをチーユエは気づき複雑な思いになる。

 

アンシェンは、北京に行き、そこで恋人と生活を続けるが、一方チーユエはジアミンとの日々を過ごす。しかし、アンシェンはそれから波乱の人生を送るようになる。バンドの恋人に浮気をされ別れ、続いてフリーカメラマンと恋に落ちて貧しいながらも様々な地を巡る生活になる。チーユエとジアミンは街を出ることもなく過ごしていたが、ジアミンは学校を卒業すると外に出てみたいと街を出ていく。それでも二人の仲は変わらなかった。

 

ところが、偶然アンシェンはジアミンと再会する。二十歳をすぎ、安定を求め始めたアンシェンは仕事につき日々を過ごしていた。ジアミンも就職し忙しい日々を過ごしていた。チーユエは地元で銀行に勤め、ジアミンとの結婚を目標に日々を過ごしていた。チーユエはアンシェンと久しぶりに再会し、小旅行をするが、男を適当にあしらって活発に生きているアンシェンとチーユエはつい喧嘩をして別れてしまう。

 

やがて、チーユエとジアミンの結婚の日、ジアミンは突然行方をくらます。結婚式に花婿に逃げられた花嫁という噂が広がり、チーユエは念願の街を出ることが叶う。そこまで読んで眠ってしまったアンシェンの寝室にアンシェンの娘トントンがやってくる。ベッドの下に隠していたアンシェンの缶を開く。その缶には、アンシェンが大事にしていた若き日の手紙と先日再会したジアミンの名刺が入っていた。手紙には、街を出たアンシェンがチーユエに送っていた手紙が入っていたが、その文面の最後に必ずジアミンのことが書かれていたのだ。

 

一方、ジアミンもチーユエのネット小説を読んでいた。そんな彼にトントンから電話が入る。そして、ジアミンと会ったトントンは母アンシェンが大事にしていた手紙とネット小説を見せて、愛していたのか?自分のパパなのか尋ねる。ネット小説「七月と安生」の作者はアンシェンで、チーユエはアンシェンのペンネームなのだというのだ。アンシェンはジアミンに会い、物語の経緯を話す。

 

チーユエは結婚式の後妊娠していることに気がつく。そしてアンシェンに会いにきて、アンシェンはチーユエの出産を支える。順調だったはずの産後だが突然の出血でチーユエは亡くなってしまう。アンシェンはチーユエの子供を育てる決心をし、チーユエが夢に描いていた自由な人生を歩んでいることを小説にしたのだ。小説の中では、無事出産を終えたチーユエは子供をアンシェンに預け、世界へと飛び出していた。映画はこうして終わっていきます。

 

とにかく、上手いとしか言いようのないストーリー構成で、よくある展開もここまでしっかり練り込まれたら引き込まれざるを得ません。絵作りも美しいし、無理矢理難を言えばラストの子供の下りは少し無理がある気がしないでもありませんが、そこを目を瞑っても、相当なクオリティの作品だと思います。本当に良かった。