くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「MIRRORLIAR FILMS Season1」「THE GUILTY/ギルティ」

「MIRRORLIAR FILMS Season1」

短編映画制作を応援するサービス「ミラーライアー」によるプロジェクトの第一弾。どれもこれも個性に富んだ自主映画調で、期待以上に楽しめました。どれがどういう話という具体的なものもあればシュールな物、風刺の効いた物など様々で全九話楽しめました。

「さくら」(監督安藤政信)

遺骨を収める場面から始まり、何やら肉を食う場面から、シュールな映像が続き終わっていく。

「Petto」(監督枝優花)

憧れの幼馴染の女の子に再会した主人公は、その子に案内されるままにその子が飼っているペットのところに行ってみると、なんとそのペットは、先日国会答弁で苦し紛れに答弁していた総理大臣だった。

「暴れる、女」(監督武正晴)

何かの事情で刑務所にいた一人の女が出所してくる。弟分のような男が迎えに来て、女が行きたいところへ向かう。そこで大暴れする場面で、物語は続くとエンディング。

「INSIDE」(監督花田陵)

危険だからと家の外に出てはいけないと厳しく育てられた一人の女性。しかし、疑問に思った彼女は母の制止も聞かず外に飛び出すと、公園で音楽を奏でるミュージシャン。そこに行って少女と目を合わせてエンディング。

「inside you」(監督三吉彩花)

自分のしたいことがわからない主人公は、河川敷でクラシックバレエをする少女を見つける。

「無事なる三匹プラスワン コロナ死闘編」(監督山下敦弘)

浜辺で屯する今や中年の男三人、そこへ精力十分なもう一人の男が三人の水着美女を連れて戻ってきて、みんなで飲みに行き、結局金をおごらされただけのユーモア満点の一本。

「充電人」(監督西遼太郎)

突然、目覚めたらへそのところにコンセントがついていて電気人間になった青年は、憧れの彼女とデート。ところがふとしたハプニングで素性がバレるが、実は彼女はコンセントプラグ人間だった。めでたしめでたし。

「B級文化遺産」(監督針生悠伺)

スケボーをしている青年がたまたまマンホールの上に止まると、それはB級文化遺産だと警告が流れ三分間攻撃され、最後の最後間一髪で助かる。

「無題」(監督藤原知之)

主人公は、ある日出会ったホームレスの少女を題材に映画を作り成功するが、実は気付かないうちに歪んでいた自分に気付かされる。

 

「THE GUILTY/ギルティ」

デンマーク映画のリメイクですが、個人的にはこちらの方が深みがあって傑作だったように思います。オリジナル版は電話の向こうのサスペンスが中心でしたがこちらは主人公ジョーの人間ドラマにも焦点を当てていたので全体に深みが出たのかもしれません。いずれの作品も傑作であることは変わりはないのですが。監督はアントワン・フークワ。

 

未成年者の被疑者を射殺した事故を起こしたジョーは今は閑職に回され緊急通報のコールセンターにいた。妻とも疎遠となり、娘に会いたくても会えない日々もあり苛立つ毎日である。この夜、山火事が起こり警察署内もコールセンターも錯綜していた。明日はジョーの公判が予定されていて、相棒のリックには口裏を合わせて何とか過失になるようにする手筈だった。

 

そんな時、エミリーという女性からの緊急通報を受信する。どこか普通とは違うと察したジョーはエミリーからの電話を注意深く聞き取る。どうやらエミリーは車に拉致されていて、どこかに連れて行かれる途中らしい。犯人は夫のヘンリーで、ジョーが調べたところでは、前科のある暴力的な男だとわかる。エミリーとの会話が途切れた後、ジョーは緊急連絡先である自宅に電話をしてみると6歳のアビーという少女が出る。赤ん坊の弟オリバーは奥で眠っているが、パパがママを連れ出してしまったと言う。ママに会いたいと叫ぶアビーにジョーは必ずママを返してあげると約束する。

 

交通警察も錯綜してなかなか拉致された車が見つからない。苛立つジョーはアビーのところへ警官を向かわせる。一方別居しているらしいヘンリーの家に元相棒のリックを向かわせた。ところが、アビーのところへ向かった警官から、オリバーがベッドで生き絶えていると言う知らせが届く。どうやら、ヘンリーが赤ん坊を殺害したと判断したジョーは、エミリーに何とか脱出する手立てを教えようとする。

 

ハンドブレーキを引かせて助けようとしたが、エミリーは荷台へ移されただけになったので、ヘンリーが車を止めて連れ出しに来たところでレンガで殴って逃げるようにアドバイスする。しかし、錯乱したエミリーは大騒ぎを始める。ジョーは必死で宥めようと自分の事件やらを丁寧に話すうちにようやくエミリーは落ち着いてくるのだが、その言葉がどこかおかしいことに気がつく。エミリーは、オリバーの中にヘビが住んでいるので泣き止まなかったのだと言う。そして自分がその蛇を取り出してやると泣き止んだのだと話し始める。おかしいと感じたジョーは、エミリーこそが犯人だと判断する。一方ヘンリーの家に行ったリックからは、たくさんの請求書と精神病院の通知があったと連絡が来る。エミリーは精神病だった。一方、エミリーはヘンリーを殴り倒し何処かへ消えてしまった。

 

失敗したことを知ったジョーはヘンリーに連絡して経緯を知るが、前科もあるヘンリーは警察を嫌い、取り乱してしまった。まもなくしてエミリーからジョー宛に電話が入る。どうやら高速の陸橋の上らしく、自分のしたことが理解できてきたようで、オリバーのところへ行くと呟き始める。自殺と判断したジョーは交通警察に緊急連絡しパトカーを向かわせる一方飛び降りないように説得を始める。ところが話半ばで通話が途切れる。次の瞬間、交通警察からエミリーを確保したと連絡が入り、ジョーは安堵する。

 

リックに連絡をし、解決したと伝え、公判では真実を話すようにと説得する。有罪と決まればしばらく娘とも会えないと考えるジョーは待ち受け画面を見て涙する。デスクに戻ったジョーに、センター長から、赤ん坊は助かったと連絡が入る。ジョーはしつこく連絡してきたジャーナリストに電話をして暗転、映画は終わる。

 

オリジナル版も面白かったが、こちらはラストで、胸が熱くなるほど感動してしまいました。役者の演技力や監督の演出スタイルの違いもあるのでしょうが、主人公の人間ドラマにも深く踏み込んだ視点が映画を厚みのあるものにした感じです。いずれにせよ傑作でした。