くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スウィート・マイホーム」「兎たちの暴走」「骨」「オオカミの家」

「スウィート・マイホーム」

面白いお話なのですが、脚本が弱いのと、演出に映像センスの光るものがなくミスリードインパクトがないところへ、意味のない終盤のクローズアップは、流石に映像演出のセンスのなさが見えてしまった。もう一捻り、面白くテンポを作り出したら引き立ったかもしれません。監督は斎藤工

 

地鎮祭、お腹の大きい女性が座っていて、外れたところに一人の少女がいて目隠しをし、そっと指から目を覗かせてタイトルから場面が変わる。清沢家の娘サチが熱を出しているらしく妻のひとみと心配をする夫の賢二。まほうの家という住宅物件に興味を持った二人は展示場へ出向く。そこで応対してくれた女性本田と意気投合、担当を私にして欲しいという営業の甘利を差し置いて、設計も全て本田に任せる。

 

そして家を建てるが、ひとみには第二子がお腹にいた。新しい家の地下には空調機が備えられ、そこから家全体の空調をしていたが、狭いところに入っていけない賢二は不気味に思っていた。ひとみの友人を招待したが、連れてきた子供がお化けがいると気味悪がって、二度と来なくなった。

 

やがて第二子ユキも生まれ、暖かい家で順風満帆な生活が始まったかに思えたが、実は賢二は職場の原友と不倫関係があった。しかし、原友は結婚が決まりすっぱり賢二と別れたのだが、原友の夫の職場に、かつて賢二と会っていた頃の動画が送られてくる。そして、原友には無言電話や嫌がらせが相次ぎ、次第に疲弊していく。賢二はてっきり甘利のやったことだと、不動産会社で責めるが、その夜本田が謝りに来て賢二の家族と和やかに夕食を食べる。

 

翌日、刑事が賢二のところにやってくる。甘利が賢二の家のそばの雑木林で殺されたのだという。賢二には聡という引きこもりの兄がいた。賢二が実家へ戻った際、聡は、何かがユキを誘拐しようとしているから守らないといけないと忠告する。しばらくして新居に母と聡を招待した賢二だが聡はこの家には何かが至る所で見ていると脅す。さらに、しばらくして原友が自宅で首をつって殺されてしまう。ひとみは家の中に何かがいると怯えるようになる。

 

ある日、聡が行方不明になったと母から連絡が入る。賢二の家に来ているのではと賢治が戻ってみるがそこには警察が来ていた。そして二階で聡はナイフで殺され死んでいた。ひとみたちは家を離れるが、聡が言っていた、家に中至る所に何かがいるという言葉に、賢二は、クローゼットの天井から続く屋根裏の存在に気がつく。

 

登ってみると、そこには人形などが置かれて生活している空気があった。実は刑事からの情報で、犯人は本田であると聞かされていた。本田はかつて妊娠していた時、まほうの家を購入し、その地鎮祭の日、夫を事故で亡くし、その後流産し、そのトラウマから、幸せな家族を自分の家族と重ね合わせて異常な行動をしていた。そしてその理想の家族を脅かす存在を排除していたのだ。賢二は本田を刺し殺し、全てを終わらせる。

 

後日、ひとみから連絡をもらう。自分たちの家に戻っているという。賢二がやってくるとサチが待っていた。そして屋根裏に上がると、ユキの目を椿の枝で刺したひとみの姿があった。絶叫する賢二のショットで映画は終わる。

 

全体のリズムが平坦で、メリハリがなく、しかもクライマックスに極端な目のアップや顔のアップを多用したり、中盤に瞳に映るショットを用いたり、ミスリードするために甘利を不気味に捉えたり、努力はわかるが、センスがないのか物語のスパイスになってこないし、原友の存在も妙にあざといし、脇役がどうもスリリングな存在感になっていないのが残念で、面白い話なのに演出で壊されている感が強い映画でした。

 

「兎たちの暴走」

一見、面白い映画なのですが、どこかメッセージ性が見え隠れする上に、キャラクターが整理しきれていないために、なぜこの展開なのかという違和感を感じてしまう作品でした。ラストのテロップもいかにも中国映画的な押し付けと寸切り的なエンディングももう一工夫欲しかった。監督はシェン・ユー。

 

一人の男マーが夜の橋の上を歩いている。一台の車が通り過ぎ、そこへ駆けつけるマー。どうやら娘が誘拐され、その身代金を段取りしないといけないらしく、車に乗っていた夫婦はマーに詰め寄っている。結局警察に届けようと派出署へやって来るが、母親に電話が入り、政都にいるのがわかる。ところが車のトランクを開けると一人の少女が乗っていて、死んでいるのかと思ったら、生きていて、大騒ぎしてタイトル、時間が遡って本編となる。

 

高校生のジュイ・シンは、裕福だが両親の不仲に悩むジン・シー、モデルをするほどの美貌のユエユエらと楽しく高校生活を送っている。学校から帰ってきたジュイ・シンは、義母から、義父が来ているからと追い出される。そんなジュイ・シンは、自分の実母チュー・ティンが戻ってきたことを知り、電話で食事でもしようと誘う。

 

チュー・ティンはかつて劇場だったところで暮らしていてそこへジュイ・シンを誘う。チュー・ティンは情夫のトゥから、借金を返すことを迫られていて、ジュイ・シンはその金を作るため金持ちのジン・シーを誘拐しようと計画する。ところが、ジン・シーを拉致できず、ユエユエを拉致するが、飲ませた睡眠薬が切れ揉み合ううちにユエユエを殺してしまう。チュー・ティンは車のトランクにユエユエを乗せ、都市伝説で時間が遡るトンネルを駆け抜け、映画は終わる。

 

面白いカメラワークを繰り返し展開する映像は楽しいのですが、キャラクターの整理と物語の展開がやや雑で、トゥらヤクザものの存在や、チュー・ティンの暮らす劇場、ジュイ・シンの家庭、など背景がうまく描けていないので、今ひとつ物語に深みが見えてこないのがちょっと残念。さらにエンディングの後のテロップで若者の将来を見届ける必要があるというような意味合いの挿入が、ちょっと鼻についた。

 

「骨」

チリのストップモーションアニメのクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャが世界初のストップモーションアニメと称して描く短編作品で、2021年に発掘された映像という触れ込みで一人の少女が骨から謎の儀式を行うという展開を描いた作品。

 

「オオカミの家」

ストップモーションアニメを駆使して描くホラーファンタジーという感じの作品で、目まぐるしく背景や造形、登場人物が変化していく様は、並外れた才能を感じるとはいえ。やや気分が悪くなるほどの凝った作品でした。監督はクリストバル・レオンとホアキン・コシーニャ。

 

チリ南部にあるお互いが助け合って暮らすドイツ人コロニーで、マリアは豚を逃してしまったためにいづらくなりコロニーを飛び出す。そして森の中の一軒の家に逃げ込み、そこにいた二匹の豚にアナとペドロと名付けて生活を始める。火事になったりしながら日々暮らすが、森からはオオカミの声が聞こえ始める。

 

次第に食物が不足する中、ペドロとアナは恐ろしい姿に変わり、マリアを食べようと迫って来る。マリアは森のオオカミに助けを求め、オオカミがペドロとアナを食べマリアを助け出して映画は終わる。

 

溶けては固まるかのような造形の変化、壁が次々と装いを変える映像、決してスマートで美しい姿ではないので、次第に見ている自分たちがしんどくなって来る。確かに、描かれる映像表現はオリジナリティあふれる創造力が生み出したものですが、楽しい一方で、やや不快感さえ催してしまいました。