くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「コレクティブ 国家の嘘」「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野」

「コレクティブ国家の嘘」

腐敗し切った国の体制に一矢報いようとするも結局押し潰されてしまう虚しさになんとも言えない感覚に打ちひしがれると共に、自国もまたあり得るかもしれない、起こっているかもしれないリアリティに寒気がしてしまうドキュメンタリーでした。監督はアレクサンダー・ナナウ。

 

2015年、ルーマニアブカレストのクラブ「コレクティブ」でライブ中に火災が発生、死者27名、負傷者180名の大惨事となる。ところが複数の病院に搬送された負傷者が次々と死亡し結局死者65名となる。その調査に一人のジャーナリストが乗り出すところから映像は始まる。そして見えてきたのは製薬会社、病院経営者、政府関係者の癒着だった。極端に薄められた消毒薬により院内感染が起こるもそれを隠蔽する政府関係者の対応にとうとう担当の保健省の大臣も辞職に追い込まれる。

 

後任についた保健省の大臣は大胆に改革して行くべく奔走するが、様々なところから圧力がかかり始め、腐敗の奥の深さを思い知らされる。そして間も無く総選挙が行われて、結局保守政党が圧勝し、新大臣も元の腐敗した国に戻るのを止める手立てを失って映画は終わって行く。

 

ドキュメンタリーではあるが、その後どうなったかは全く語られずに暗転するので、明日は我が身という現実に放り込まれます。長く平和を享受してきた先進国ならどこもあり得るものではないかと寒気がしてしまいました。

 

「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール報復の荒野」

久しぶりに西部劇を見たという感じで、なかなか面白かった。オーソドックスなカメラワークと斬新なカットを交えながらシンプルな物語が展開するのが良い。しかも、マカロニウエスタン的な残酷さもあり、黒人のみというキャスト編成はちょっと意図見え見えですが、単純に楽しみました。監督はジェームズ・サミュエル。

 

いかにも幸せそうな家族、黒人夫婦と10歳くらいの少年が食事をする場面から映画は始まる。そこへ突然の来客、父が出迎えると何やら意味ありげな人物が入ってくるが顔は見せない。そしてその男は母を撃ち父を殺し、少年にナイフで迫る。少年を抑えていた男は手にサソリの刺青がある。そしてカットが変わり時が流れる。教会にやって来た手にサソリの刺青のある男、そこへ突然一人の黒人が現れ、一瞬で撃ち殺す。この男の額には傷があり、冒頭の少年の成長した姿だとわかる。

 

場面が変わると、列車を襲う強盗団、金を奪い逃げ去る集団を陰からライフルが狙っている。そして、奪った金を再度横取りする別の集団。その集団を率いるのはナット・ラブという男で、教会でサソリの男を撃ち殺した男だった。彼は両親の復讐のために悪事を重ねていた。ナットは恋人のメアリーの酒場にやってくる。そしてメアリーといい感じになったところへ、知らせが入る。20年前に両親を殺したルーファス・バックが仲間のトルーディスらによって脱走に成功したらしい。

 

脱走したルーファスは、かつてのアジトの町レッドウッドにやって来て、そこでかつての相棒の男で今はここの保安官をしている男を追い出しこの街に居座る。ルーファスが脱走したことを知った保安官はナットらの仲間と手を組んでルーファスの街に乗り込もうとする。まず情報を確かめるためメアリーが乗り込むが拉致されてしまう。助けに行ったナットらにルーファスは、奪った金とプラス10,000ドルを加えて持ってこいと指示、ナットらは白人の街に乗り込み銀行強盗して10,000ドルを手にして再度レッドウッドの街へ乗り込む。そしてあとはひたすら撃ち合いである。

 

最後の最後に、ナットはルーファスに対峙するが、ルーファスは、自分の父は母を撃ち殺してどこかへ逃げた。父に復讐するために荒野を彷徨ったルーファスはついにその父を見つけたのだが、昔の父と全く変わって穏やかな男になっていた。その男こそ、ナットの父だったと真相を語る。ルーファスは、いずれ自分に復讐にくる少年を見分けられるようにナットの額に傷をつけたのだという。ナットは絶叫の中かルーファスを撃つ。

 

そして、ナットは、自分の墓を作り、ナット・ラブの名前を捨て、メアリーと去って行く。メアリーの仲間だったカフィは保安官の仕事につきたいとメアリーに別れを告げる。去って行くナットとメアリーを丘の上からトルーディスが見送り映画は終わる。

 

かなり強引なストーリーで、よく考えると矛盾が見えなくもないが、荒野をかける馬を西部劇よろしく大移動で捉えるカメラワークや、デジタル映像ならではのモダンな画面作りもなかなか面白い作品で、ストーリーは昔懐かしい西部劇というこのアンバランスもオリジナリティがあって面白かった。