くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について」「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」(4Kリマスター版)

「さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について」

いい映画なのですが、ちょっと映像が理屈っぽすぎる気がします。第二次大戦前の混沌としたドイツの時代背景を描写しながら描かれる切ないラブストーリーという骨子は見えるのですが、モンタージュの基本を無視していく細かいカット編集とシュールな場面の連続は、冒頭の延々とした長回しと相まって、ちょっと三時間近くの長尺にはしんどい映像だった。でもラストの処理は思わずしんみりと古き良き映画のラストシーンを思い出させてくれました。監督はドミニク・グラフ。

 

ベルリンの駅のホームにカメラがゆっくりと入っていき延々とホームから階段を登っていく。黄色を基調にした色彩演出も美しく、地下からカメラが外に出ると一人の男ファビアンが佇んでいて背後から不気味な男が声をかける。男の顔は逆光で見えないが、後半で彼の顔が歪んでいるのがわかる。

 

ファビアンは怪しいカフェに入っていき、一人の女性ユタ夫人と知り合う。彼女の家に行くとユタ博士がいて、自分の妻は男あさりが好きなのだと言って契約書を突きつけるので、ファビアンは、その家を後にする。ある時、コルネリアという女優志望の女性と知り合う。そして誘われるままに体をかわし、やがて二人は恋仲になる。ファビアンの親友ラブーデと一緒に三人で遊ぶ日々が描かれる。ラブーデは金持ちで、自宅そばの川で遊んだりもするがここでのエピソードがラストの伏線となる。

 

ファビアンは、編集の仕事をしていたが折しもの不況もあり首になってしまう。一文なしになり仕事を探すも見つからない。コルネリアは、国際著作権の仕事をしていてその関係もあって大監督と知り合い、ファビアンの母と一緒に三人で食事をしている際にも、大監督がやって来たので、コルネリアはファビアンらを置いてその席に行ってしまう。やがてコルネリアはファビアンと別れることになるが、ベルリンでのオーディション用にファビアンは詩を書いて手渡す。その朗読でコルネリアは見事オーディションに合格、女優への道を歩み始める。

 

一方、ファビアンは、たまたまユタ夫人と再会し、彼女が経営する男娼の館に出入りするが、そんな頃親友のラブーデが行方不明になったとラブーデの父から言われ二人で探す。まもなくしていかがわしいところでラブーデを発見する。ところが、ある時警察がファビアンのところへやってくる。ラブーデが自殺したらしいという。行ってみるとファビアン宛の遺書が残され、大学での論文が却下されたことをきっかけにした絶望の内容が記されていた。

 

大学へ行ったファビアンはラブーデのついていた教授に論文のことを聞くがその教授は絶賛して指導教授に渡したという。ことの次第を確かめたファビアンは、指導教授が冗談半分に却下の連絡をしたことで、ラブーデが絶望したことを知る。ファビアンは、ドレスデンの両親の元に戻り、女優として大成しているコルネリアのことを思い出し、なんとか電話連絡をして会う約束とお互いの愛を確かめる。

 

再会を約束した日、約束のカフェで待つコルネリア、一方、ファビアンはたまたまラブーデらと遊んだ川のほとりを通った時、少年たちが遊んでいて、橋の上から一人の少年が今にも飛び込もうとしているのを発見、必死で止めるが少年は飛び降りる。慌ててファビアンが助けに入るが、思わぬ深みに流され溺れて死んでしまう。飛び込んだ少年は川から上がり、ファビアンの服や鞄を見つける。一方コルネリアは、3時の約束にファビアンが来ないながら、明日も明後日もこの時間に来るからと店員に告げる。こうして映画は終わる。

 

ナチス代替によるドイツの暗黒の時代が忍び寄る空気を背景に、生活が困窮する庶民の暮らしと、一方で夢を求める若者の姿、性風俗の乱れ、などなどをシュールな細かいカットを駆使してカメラ演出で見せる映像は見事ですが、根本的なラブストーリーが意外に古臭いためにこの違和感が独特の映画として仕上がっています。少々三時間弱は長さを感じるものの、独創的な秀作だったと思います。

 

「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」

意外にも劇場初公開という、ゾンビ映画の原点作品。とにかく面白い。地下と一階という空間設定、少数の登場人物に色分けで描くストーリー展開のバラエティさ、ホラーでありながら人間の怖さを的確に描写する脚本、構図を工夫することで生み出す恐怖演出、どれもこれも小品ながら研ぎ澄まされた仕上がりになっています。伝説の傑作ホラーの言葉がぴったりの一本でした。監督はジョージ・A・ロメロ

 

車が彼方からこちらの走ってくるシーンから映画は幕を開ける。3時間車を飛ばして父の墓参りに来た兄ジョニーと妹のバーバラ、墓参りを済ませたが、すでに時間は夜8時。冗談を言うジョニーたちの前に一人の男がフラフラ現れバーバラを襲う。ジョニーがその男に襲いかかるも誤って突き飛ばされて墓石に頭を打って死んでしまう。

 

バーバラは襲ってくる男から必死で逃げ、近くの民家に逃げ込む。呆然とする彼女の前に、突然トラックに乗った黒人のベンが飛び込んで来る。どうやら死人が生き返って襲って来ているらしい。ベンは、錯乱しているバーバラを宥めながら窓や扉を木で打ち付けていく。

 

ところが、地下にはハリーとヘレンの夫婦と娘、トムとジュディのカップルがいた。ベンのリードで襲ってくるゾンビに立ち向かおうとするが、ハリーのエゴが表に出てくる。外に停めてあるトラックに給油して脱出することになり、トムとベンが給油のため外に出るが、ジュディも飛び出して来る。

 

ところが給油の途中で火がついてトムとジュディはトラックと一緒に爆発、ベンはなんとか家に戻る。ところが、電気がショートして真っ暗な中、知恵を身につけたゾンビが襲い掛かり、バリケードが破られ始める。ベンの銃を奪おうとしたハリーはベンに撃たれて死に、襲ってくるゾンビにバーバラも取り込まれる。

 

地下のハリーたちの娘はゾンビになってヘレンを殺す。ベンはゾンビになったハリーやその娘、ヘレンを撃ち殺すが、絶望の中やがて朝が来る。外では政府の組織や保安官たちがゾンビ狩りをして事態を収拾し始めていた。物音を聞いたベンは銃を持ったまま外を覗くと、かなたからゾンビと間違えた保安官がベンを撃ち殺す。こうして映画は終わる。

 

ストーリー展開のテンポ、登場人物それぞれのドラマ、さりげなく挿入されるメッセージが実にコンパクトにまとまっていて見事というほかありません。傑作ホラーという評価が頷ける映画でした。