くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「親愛なる同志たちへ」「王女メディア」

「親愛なる同志たちへ」

1962年のノボチェルカッスク機関車工場での民衆弾圧事件を扱った作品で、モノクロスタンダードの画面が異様な緊張感を生み出している作品でした。物語はいたって単純なのですが、ソ連共産主義の強烈な権力の圧力がじわじわと伝わってくる恐怖が見事でした。監督はアンドレイ・コンチャロフスキー

 

市政委員会の課長であるリューダは、朝早くに起きて近所の店へ食料品などを買い出しに出かけるところから映画は始まる。品物が不足しがちで並んでいる人たち、また価格の高騰で手に入りにくくなっている状況の中、親しい知人の店の裏口から入って、品物を手に入れて帰宅する。学生で、最近生意気になり、政府の方針に何かにつけ反抗的な娘のスヴェッカは、リューダの言うことを聞かず、穴の空いた靴下を履いて工場の仕事に飛び出していく。ソ連設立以来軍人だった父は古いコサック時代の服を出しては懐かしんでいた。

 

この日も、市政委員会で、現状の検討を進めていたが、突然国営工場の方でサイレンが聞こえる。まもなくして、電気機関車工場でストライキが起こり、工場が止まったと言う連絡が入る。リューダたちは地方委員会の書記を伴って工場へ行くが、労働者たちに建物を封鎖されて、出られなくなってしまう。なんとか脱出したものの、軍隊が導入され、中央政府から高官がやってくるにつけ、どんどん事態は大きくなってくる。

 

市民に倒して発砲することを拒む軍隊と違って、中央政府の役人たちは銃の携行を命令する。リューダは、スヴェッカも騒動に関わっているにではないかと心配だったが、建物から逃げる途上で、一人のスナイパーが屋上に上がるのを目撃してしまう。まもなくして群衆は次々と銃で撃たれて倒れていき、騒然とした様相を帯びてくる。路面で死んでいる以上に死人が出ている現状を目の当たりにする中、スヴェッカを必死で探すリューダだが、死体安置所にも病院にもいなかった。

 

リューダの家にもKGBのヴィクトルが調査にやってくるが、リューダと一緒に、村の外に埋められたらしい死体を調べに行くことに協力してくれる。中央政府は、今回の銃撃事件を無かったものにするため厳格に統制と口止めを強行していく。スナイパーはKGBのメンバーだと分かり、ますます軍隊とKGBとの確執も表になってきて、緊張感が高まっていく。

 

ようやくたどり着いた村で、死体を埋めたと言う巡査から、穴の空いた靴下を履いた少女を埋めたといわれ、リューダは絶望する。そして、自宅に戻るが、ヴィクトルは、また力になるからと送り出す。しかし、自宅に戻ったリューダは、スヴェッカが帰っていることを知り歓喜する。そして、屋根の上にいるスヴェッカのところへ行ったリューダは、これから良くなると抱き締めて映画は終わる。

 

本当にシンプルなストーリーですが、締め付けられるような緊迫感が全編に漂っていて、見ていてどんどん重苦しくなる作品でした。

 

「王女メディア」

さすがに、前半はひたすら眠い。オープニングのケンタウルスが子供に語る場面で機関銃のようにセリフが出たかと思うと、儀式のような場面になってからはほとんどセリフがなく映像だけで展開、終盤、ようやくセリフが出てくると一気にエンディングを迎える。これがパゾリーニだと言われればそれまでだが、しんどい映画だった。ただ、独特の映像詩のような空気感はさすがと思える作品でした。監督はピエル・パオロ・パゾリーニ

 

ケンタウルスが、幼い少年に、お前は私の子供ではないと延々と話す場面から映画は幕を開ける。カットが変わり、メディアの前で壁に繋がれている青年。その青年が、何やら儀式だろうか外に引き出されて殺されて、斧で体をバラバラにされ、その血を人々が手にする。

 

イオルコス国王の寵児イアソンは、叔父のペリアスに王位を譲るように迫る。ペリアスは、未開の国コルキスにある金の羊皮を手に入れてくるように条件をつける。イアソンは、コルキスで王女メディアと知り合い愛し合うようになり、金の羊皮を手に入れて戻る。しかし、王位返還を反故にされたため、隣国のコリントスへ向かう。そこでイアソンは、その国の王として見込まれ、その国の国王の娘と結婚することになりメディアを捨てる。

 

コリントスの王はメディアに国外追放を言い渡し、メディアも受け入れる。メディアは、もともと魔術を使うことができるので、自らの衣服に呪いをかけて、イアソンが結婚する王妃に祝いの品として渡すが、それを身につけた王妃は城の上から飛び降りる。それを見たコリントス王も後を追って飛び降りる。その後、メディアはイアソンとの間に生まれた三人の子供をナイフで殺し、城に火をつける。燃え上がる城を見ながら映画は終わる。

 

唐突なエンディングですが、全編が映像詩のように展開していく様は、体調に余裕がないと流石にしんどい。芸術映画という匂いがする逸品でした。