くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「とんび」「ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」

「とんび」

原作の良さでラストまで引き込んで、見せ場見せ場で涙ぐませてくれるのですが、いかんせん、手抜きの美術と衣装、さらに役者任せでほとんど演出が入っていないドラマはちょっといかがなものかと思う。ピカピカの車、街並み、隅々に至るまで、リアリティを全く感じない適当さ、何十年も変わらない衣装などなど、気にしないでいいのかもしれないが、気になりだすと、あまりに雑すぎたのは残念。監督は瀬々敬久ですが、やっつけ仕事で安直に仕上げた商業映画という感じでした。

 

昭和63年、遠距離運送のトラックの助手席だろうか、主人公安男が眠っている場面から映画は始まる。時は昭和37年み遡り場所は瀬戸内の備後市、運送業を営む安男は酒と喧嘩ばかりしながらも愛妻美佐子と幸せな毎日だった。まもなくして一人息子旭が生まれる。ところが、雨でどこへも遊びに連れて行かれない日、父の仕事場を見に行きたいという美佐子と旭は、たまたま積み上げていた荷物が崩れて、旭を庇って美佐子は死んでしまう。

 

それから旭は、安男の姉貴分のような小料理屋のたえ子や、幼馴染の寺の息子の照雲らに実子のように可愛がられて育つ。物語は、安男と旭の親子のドラマを周囲の人たちの温かく見守る姿を交えながら描いていく。安男は旭に、母の亡くなった本当の理由を告げず、あくまで自分の身代わりに美佐子が死んだと旭に嘘をつく。

 

小学校、中学校、そして高校へ成長していく旭を男手で育てていく安男だが、不器用なところは周囲の人たちの力添えで旭はやがて東京の大学へ進む。そして雑誌に記事が載るまでに独り立ちした旭は、ある時、東京にきた父安男に、結婚したいという一人の女性由美を紹介する。バツイチな上に七歳歳上、さらに子供までいる由美を見た安男は、戸惑って返事に困るが、備後市まで挨拶に来た旭と由美に、照雲らの計らいもあって、祝福の言葉を投げてしまう。時は流れ令和元年、安男の葬儀の準備をする旭夫婦と二人の子供の姿があった。こうして映画は終わる。

 

昭和、平成、令和までの親子のドラマですが、器用な役者を配置して、役者任せのドラマになっているのは実に残念だし、安男の着ている服が、二、三十年ほとんど同じだし、全体の絵がまるで磨き上げられたようにピッカピカで汚れひとつない。これらがわざとなのかと最初は思ったが、結局手抜きにしか見えなくなってくる。それでも、要所要所の涙を誘うシーン、特に最大の見せ場の、美佐子が亡くなった本当の理由を旭が知ることになる照雲の父の臨終の遺書に手紙、それを元にした旭の作文を安男が読む場面などは、器用な役者陣の実力でなんとか泣かせてくるからラストまで退屈こそしなかったが、テレビのスペシャルドラマ以下の仕上がりだった気がしました。

 

ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード」

ドタバタと展開するB級アクション映画なのですが、なんとも演出テンポのセンスのなさと、悪趣味なシーンの連続に辟易とする上に、下ネタ満載はいいのだが、笑いより下品にしか聞こえない脚本、さらに、同じようなシーンの繰り返しだけの引き伸ばしアクションシーンの連続の上に、ラストシーンへ流れ込む作りになっていないためにやたら長く感じる展開の映画だった。こういう映画を作らせると香港映画は絶品なくらいにうまいが、ほんまに下手くそな映画だった。監督はパトリック・ヒューズ。

 

ボディガードの資格を喪失したが、見事挽回して、コンクールで優勝するという悪夢から主人公マイケルが目覚めて映画は幕を開ける。セラピーを受けているのだが、毎回しつこいのでセラピストも早く追い出したく、マイケルは完治したからと送り出す。そんな彼に、ソニアという女が夫ダリウスがマフィアに捕まった、マイケルを呼べと言っているので助けてほしいと連絡が入る。マイケルは、ボディガードの資格剥奪で銃が使えないが、ダリウス救出に向かう。そしてなんとか救出したものの、サイバーテロを計画しているアリストテレスの陰謀を阻止する騒ぎに巻き込まれていく。

 

まあ、無茶苦茶な展開は構わないのだが、そのきっかけになるインターポールの存在がほとんど蚊帳の外で、全くストーリーに寄与してこないし、なぜか、マイケル達が二転三転する展開がなんとも趣味が悪い上に工夫もない。途中、マイケルの父親で伝説のボディガードまで無理矢理出してきてお話を引き伸ばすし、ソニアはアリストテレスのかつての女だったというヤケクソなクライマックスで、ダリウスとマイケルらがアリストテレスらの大バトルを繰り広げ、なぜかサイバーテロを阻止して大団円。いきなり登場のインターポールがマイケルのボディガードの資格を戻してやるかと思えば、二人がソニアの養子になるという面白くもないオチで観客を喜ばそうとするセンスのないエンディング。

 

90分で十分な映画で、こういうのを作って金を払わせようというアメリカ映画のレベルの落ち込みとこういう映画に歓喜しているアメリカの観客の低レベルを実感させられる映画でした。