くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「PLAN75」「炎の少女チャーリー」(2022年版)

「PLAN75」

良かったとか悪かったとかの感想はふさわしくない気がするし、傑作とかいう言葉もしっくり来ない。ただ、問題定義をしてくる映画という感じでしょうか。あえて、映像表現の部分を評価してみると、相当にクオリティは高い。でも、終始、物語が身に迫ってくるものがあって、考えさせられるというより、何か、人間の生き方の矛盾が見えてきた気がしました。監督は早川千絵。

 

どこかの家、ピンボケの画面に一人の猟銃を持った血みどろの青年がフレームイン、続いて、倒れた車椅子、どうやら、高齢者を銃で撃ったらしい。続いて青年は猟銃で自殺。ニュースが聞こえ、全国で若者による高齢者殺害の事件が増えていると流れる。こうして映画は幕を開ける。一人の青年岡部はPLAN 75という、75歳から生死を選ぶことができるプロジェクトの仕事をしている。この日も一人の老婦人の契約を取り交わしていた。

 

ここに、介護士施設で働く東南アジアだろうかから来た女性マリアがいる。彼女には病気の娘がいて、その治療代でお金に困っている。同じ国の支援団体の女性から、もっと高給の仕事があるからと紹介される。そこは、PLAN 75で死を選んだ老人の持参品を整理する場所だった。整理する仕事で、所詮捨てるだけだからと先輩からマリアは時計などを受け取る。やがて、電動自転車なども買えるようになり、生活は楽になっていく。

 

ここにホテルの客室係の角谷はこの日も仕事に精を出し、同僚と楽しく過ごしているが、皆それなりの高齢者ばかりだった。そんなある時、一人の同僚が仕事中に倒れ、一命は取り留めたものの、それをきっかけに高齢者は全員解雇される。角谷は退職後、新たな仕事を探すも見つからず、快復して自宅に戻った同僚に連絡をするも電話が繋がらず、自宅に行ってみると孤独死していたのを発見する。深夜の交通整理の仕事をしたものの体力は続かず、生活保護も手続きできず、公園で役所の炊き出しの食事を手にしてしまう。

 

そして、とうとうPLAN 75に申し込む。担当してくれた成宮という女性と話すのが楽しみになるが、一度だけ話がしたいと誘う。まもなくして、PLAN75の処置日が近づいてくる。

 

仕事に若干の疑問を持つ岡部は、ある時二十年来会っていなかった叔父がPLAN75の申し込みに来たのと遭遇する。担当は外れたが、岡部は叔父の家を訪ね、日本中の現場仕事をしてきた人生を知る。やがて、叔父の処置の日がやってくるが、寝過ごした叔父は岡部に車で施設まで送って欲しいと頼む。途中食堂で食事をし、施設で見送る岡部。

 

角谷は処置室のベッドにいた。事務的に流れを説明されベッドに横たわる。角谷の処置日の日を知り、成宮はスタッフの新人に説明する人事担当の女性の言葉を背後に聞きながら食事をしている。申込者が途中で気持ちが変わらないように誘導するのも仕事だという言葉に、成宮はふとカメラの方に視線を向ける。この演出がすごい。

 

角谷はマスクをつけられ、次第に意識が薄れる中隣を見ると一人の老人が寝ていた。それは岡部の叔父だった。老人の脈拍を測る音が次第にゆっくりになってきる。一旦は叔父を送り出した岡部は車をUターンし施設に戻って来る。かつて、火葬施設の不備であちこちに事務連絡をしている時、ある産廃業者を知る。そこは動物の死骸も処理していた。岡部はPLAN75で死んだ人たちもこういう所に送られているらしいことを知り、叔父を連れ戻しに施設にやってくる。

 

施設に入り、部屋を回るが、ベッドに座る角谷を見かけ、会釈して隣の叔父の元に行くと既にこときれていた。いつものように部屋を回るマリアは、あるベッドで異常を発見、そこでは岡部が叔父の死体を運び出そうとしていた。マリアは自分の押すストレッチャーに乗せ岡部の車に死体を乗せて送り出す。岡部は火葬場へ急ぐが、スピード違反で白バイに停められてしまう。角谷は一人施設を逃げ出しフラフラと歩いている。峠道でふと見上げると朝日が登っている。その朝日を見て、フレームアウトして映画は終わる。

 

それぞれが選ぶ自由だということで始まったPLAN75は、まもなくして65歳まで引き下げられるというニュースの声なども聞こえる。不気味というより、病を克服しながら成長して来た人類の行く末がこういうことかという矛盾がなんとも切ないほどに苦しい。ゆっくりとカメラが移動したりズームインしたりするカメラワークは秀逸で、映画としても非常にクオリティが高いし、観客側に視線を投げるショットが恐ろしいほどの問題定義をしてくる。内容的に、傑作とか名作とかの感想は書きたくないけれど、考えさせられる一本だったと思います。

 

「炎の少女チャーリー」

この手のB級ホラーにしてはそこそこ面白かったし、ラストはしんみりしてしまいました。炎を発する時の演出も迫力があるし、ストーリー展開のテンポも良いし娯楽映画として楽しめました。監督はキース・トーマス。

 

赤ん坊がベッドに横たえられるところから映画は幕を開けます。若い夫婦が寝室へ向かうのですが、赤ん坊は何やら気に入らないらしくぐずり始める。とたんにベッドの脇が燃え始める。慌てて戻った父親が抱き上げると赤ん坊の顔が燃えてタイトル。学生時代にこの両親アンディとヴィッキーはある組織で治験者となってある薬を打たれ、ヴィッキーは念動力をアンディは人を操る推しの力を得ていた。そして二人の娘チャーリーは念動力で炎を発することができるようになった。

 

チャーリーは小学校に入ったが、力は抑えられていた。アンディは推しの力でセラピストのような仕事をしていた。かつての組織DSIは、トップがアリシアに変わり、能力を持った人物を捜索していた。そんな頃、チャーリーのの能力が目覚め始める。アリシアは、裏の仕事をしていた人の心が読めるスナイパーレインバードを使ってチャーリーを手に入れようと画策を始める。

 

チャーリーが学校でトラブルを起こしてしまったので、アンディらは引っ越しを決意する。落ち込むチャーリーを慰めるためにアンディがチャーリーを連れ出し、ヴィッキーが一人の時にレインバードがやってくる。ヴィッキーを脅してチャーリーを待ち受けるが、チャーリーとアンディが戻ってくるとヴィッキーは殺されていた。

 

チャーリーの念動力でレインバードを退けたアンディたちは家を捨て旅に出る。途中、一人の老人と出会い、彼の家で休ませてもらうが、テレビニュースで指名手配されたアンディの姿を見た老人は警察に連絡、折下レインバードもやって来て警察を狙撃し、アンディを拉致。チャーリーはなんとか逃げる。

 

父を助けるために念動力のコントロールを身につけたチャーリーは、DSIの組織へ向かう。そこでアンディを見つけたチャーリーだが、アンディは自分もろともアリシアも焼き殺せとチャーリーに推しを与える。父を焼き殺してしまったチャーリーは、向かってくる敵を次々と焼き殺すが防火服に身を包んだ敵を倒せない。

 

危機一髪のところに、チャーリー拉致に失敗して留置されていたレインバードが駆けつけチャーリーを助け、母を殺した罪を償うために頭を下げるがチャーリーは許す。そして、一人海へ向かい念動力を使い切り浜辺で力尽きる。そこへレインバードが追って来て、チャーリーを抱き抱え暗闇に消えて映画は終わる。

 

テンポ良く展開すすストーリーが心地よいし、細かい粗は無視しても楽しめる娯楽映画に仕上がっています。チャーリーの心理的な苦悩がもうちょっと描けていたら佳作になったかもしれませんが、そこは、炎を出す時の演出の面白さで十分だった気がします。旧作をほとんど覚えてないのですが今回のリメイクはこれはこれで面白かった。