くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

「大坂城物語」「メタモルフォーゼの縁側」「汚れた血」

大坂城物語」

日本映画黄金期の娯楽大作という感じで、人人人、馬馬馬、とにかくスケールの大きい映画でした。以前見ていたのに気が付かず二度目です。監督は稲垣浩

 

物語は豊臣秀頼の時代、徳川家からの無理難題に応えつつもとうとう戦の火蓋が切られるまでを丁々発止の展開と、大層な映画画面で描いていきます。中身はたわいのない話だし、よくある大坂夏の陣や冬の陣をメインに描いていない適当さもありますが、物量に圧倒される画面は見ていて嬉しくなって来ます。古き良き日本映画、これが娯楽大作です。

 

「メタモルフォーゼの縁側」

小品ながらとっても素敵でいい映画でした。テンポが抜群にいいので映画全体が心地よく流れていきます。岡田恵和の脚本もいいのでしょうが、映像の演出もいいリズム感で流れていきます。難を言うと、前半のリズミカルな展開が後半まで受け継がれなかったのが残念で、ちょっと終盤の畳み掛け感が間延びしたのは勿体無い。でもちょっとした佳作でした。監督は狩山俊輔。

 

横断歩道、一人の老婦人雪が信号を待っている。いつも行く本屋で料理の本を買おうとしたのだが売り場が変わっていて、たまたまそこに置いてあったBL漫画の表紙に目が止まる。思わず一冊買おうとレジに行くと、そこに高校生でバイト中のうららがいた。実は彼女はBLの大ファンだったが周囲に隠していた。

 

雪さんが初めて読むBL漫画に夢中になっていく姿とうららが部屋に隠し持っているBL漫画を読むのが交互に描かれ、あっという間に第一巻を読んだ雪さんは続きを読もうとするが、単行本を待っていては自分の寿命が頼りないと考える。そんな話をうららとしているうちに二人は本屋で親しくなり、お茶を飲んだりするが、雪さんは、おすすめを教えてもらうためにうららを自宅に呼ぶ。一方雪さんがはまったBL漫画はコメダ優という漫画家の作品で彼女は展開に行き詰まっていた。

 

どんどん雪さんと親しくなるうららは、同人誌の販売イベントに雪さんを誘うが、雪さんが高齢ということもあり、あの人混みは良くないと勝手に用事を作っていくのを中止する。やがて冬になり、雪さんは腰の具合も悪くなる。うららは自分たちが売る側に入ればもっと楽に会場に行けると判断し自分で漫画を描くことを決意し雪さんを誘う。

 

少女時代、ファンの漫画家に憧れたこともある雪さんは舞い上がって喜ぶ。プレッシャーの中なんとか漫画を完成し雪さんのところに習字を習いに来ている印刷工場の沼田のところで印刷してもらう。

 

そして当日、うららは漫画を持って会場へ向かうが、ことによって雪さんの腰が悪化し立てなくなる。うららは一人で行ったものの腰が引けて店を出せず帰ってくる。一方、雪さんは沼田の車で向かったが、途中エンストして立ち往生、ベンチでしょんぼり座る雪さんに一人の女性が声をかける。それはコメダ優だった。彼女は雪さんからうららが描いた漫画を買う。一方のうららは、幼馴染の河村に会場で声をかけられうららの漫画を買ってもらう。

 

いよいよコメダ優の漫画も最終回となり、雪さんとうららは連載誌で読み合って、コメダ優のサイン会に出かける約束をする。ところが、うららが出かけようとして河村に呼び止められる。河村の彼女が留学に出発するので見送りに行くから途中までついて来てほしいと言う。うららは河村に着いて途中まで行く。実はうららはほのかに河村が好きなのではないかと思う。

 

サイン会場で雪さんはコメダ優の前に立つが、コメダは、雪さんのことを覚えていて、雪さんは実はあの時買ってもらった漫画はともだちの佐山うららが描いたものだと教える。遅れて着いたうららもサインをもらい、雪さんと待ち合わせの喫茶店に行くが、うららはコメダ優から声はかけられなかったと告白。それでも二人は幸せなひと時を過ごした。雨の中二人は雪さんの家に着く。実は雪さんはノルウェーにいる娘から、こちらにくるように言われていて、日本を離れることにしていた。

 

時が経ち、うららと沼田らが空き家の雪さんの家を掃除している。雪さんに連絡をするうらら。どこかからカレーの匂いがしてくるが、初めてうららがここに来た時、雪さんがカレーを作ってくれたことを思い出す。こうして映画は終わる。

 

幼馴染の河村の存在がさりげなさ過ぎるのもいいし、BL漫画の中身を前面に押し付けてこない小道具感も上手い。背後の音楽のテンポがほのぼのしてとっても良い。掘り出し物のとっても素敵ないい映画でした。

 

汚れた血

独特の映像演出で見せるなかなかの作品ですが、ストーリーを思い切って研ぎ澄まして削ぎ落としたらもっと傑作になるのではないかという感じです。展開も映像のテンポもいいのに終盤がやたらしつこく感じる。クローズアップを多用した細かいカットの切り返しと、感情をストレートに表現していく大胆な演出、ちょっとしたおふざけもオリジナリティ溢れる面白い映画でした。監督はレオス・カラックス

 

駅のホーム、一人の男が線路に落ちて映画は始まる。線路に突き落とされ死んだのはジャンという男で、ある犯罪組織の一員だった。愛のないSEXで感染して死に至るSTBOと呼ばれるウィルスが蔓延し、ハレー彗星が近づいてやたら暑いパリ、ウィルスのワクチンを開発したウィルキンソン社に侵入し、ワクチンを盗み出す計画があった。ジャンの後釜に考えられたのが息子で手先の器用なアレックスだった。その頃、アレックスは恋人リーズと愛を育んでいた。アレックスの父と同じく借金があった組織の一員マルクはアレックスに連絡をしてくる。マルクには恋人アンナがいた。

 

アレックスはリーズに愛車のバイクを譲りマルクの元へ行く。アレックスはそこでアンナと出会う。二人はいつの間にか心が惹かれるもののアンナの心はマルクにあった。ここに、ワクチンを狙うアメリカ組織の女がいた。彼女は巧みにアレックスを見張る。いよいよ計画が近づいた頃、リーズはつい知り合いのトマと浮気をしたとアレックスに告白してくる。

 

決行の日、アレックスは巧みにワクチンを盗み出すが、トマが警察に連絡をしていたために警官が駆けつける。ところが間一髪リーズがバイクで駆けつけアレックスを乗せて逃亡、追手の警察をまいてしまう。アレックスは盗み出したワクチンを卵の容器に隠し、マルクの元へ向かうが途中アメリカ組織の女に撃たれてしまう。しかし、立ち上がったアレックスはマルクらに隠し場所を教えて、アンナに別れを告げ、アレックス、マルク、アンナ、ハンスらは国外逃亡のために飛行場へ向かう。後をリーズがバイクでで追いかけてくる。途中アメリカ組織の女に見つかるが、マルクが銃で撃つ。ところが、アレックスは重傷を負っていた。

 

飛行場まで行ったアレックスらだがそこでアレックスは力尽きて死んでしまう。それを見たリーズはバイクでその場を去っていく。彼女を追いかけるアンナの絶叫で映画は終わる。

 

アンナと親しくできた時のアレックスの歓喜する場面やストレートなラブストーリーが実に爽快で、心が美しすぎるアレックスの存在感が映画のテーマとしてしっかりと描かれているのは見事です。ただ、ストーリー展開はもうちょっと引き締めても良かったのではないかと思います。