くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゲッタウェイ」「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」「イ

kurawan2016-08-29

ゲッタウェイ」(1972年版)
やっぱり名作は名作である。どこがどうということもなく、いつの間にか引き込まれてしまって、いつの間にかどんどん主人公たちに感情移入し、気がついたら粋なラストシーンに胸が熱くなっている。本当の名作とは、どこがどうという具体的な感想がかけないようなものをいうのだといつも思う。スティーヴ・マックィーン、アリ・マックグロー、二人の大スターが大スターであるという魅力とサム・ペキンパー監督の見事な演出テクニック、ウォルター・ヒルの脚本に酔いしれてしまいました。

鹿のアップから映画が始まる。そばにあるのは刑務所で、中に主人公のドク・マッコイがいる。仮出獄の申請をするも却下され、元の作業場へ。機械の音、外の景色、独房での生活、また機械の音という細かく繰り返される映像。どんどん苛立ちが募る彼の姿が描かれ、そこへ妻のキャロルが面会に来る。ドクは犯罪組織の元締めで政界などにも力のあるベイノンのもとを訪れるように頼みキャロルはそこへ向かう。

おそらく、寝るということと引き換えにドクが出獄、ただし、ドクはベイノンの依頼の銀行強盗の仕事を請け負うこととなる。この手の仕事をする頭の切れるドクは、仲間二人と押し入るが、手違いで警備員を殺してしまい、さらに仲間の一人がもう一人を殺して、ドクも殺そうとするが危ういところで返り討ちにし、キャロルと金を持って逃げる。

こうして本編に突入するのだが、カットバックを繰り返す細かい編集と効果的なスローモーションはまさにサム・ペキンパーの映画である。

どんどん緊張感が高まり、キャロルが駅のロッカーに預けた金はすり替え詐欺で盗み取られるも、またドクが奪いかえす。メキシコへ逃げるために行きつけのホテルに向かう独特キャロル。指名手配の回った二人に警官が迫り、ゴミ収集車に隠れて逃げるくだりは素晴らしい演出である。

一方ドクが撃ち殺したと思った仲間も重症ながら命が助かりドクを追うし、妻とベイノンがつるんでいたということで、ベイノンを殺したのでベイノンの仲間からも追われるドクとキャロル。

そして、クライマックス、メキシコ国境のホテルに行くが、ドクたちを追ってきた相棒やペイノンの仲間が襲ってくる。反撃して脱出、しがない農夫のトラックに乗ってメキシコへ入ったところで、トラックを売ってくれと農夫に頼み、ドクとキャロルは無事逃げる。車が走り去るシーンでエンディング。

ラストの農夫のエピソードも見事であるし、逃げる途中何度もピンチになるも、すんでの機転で逃げていくドクたちの展開の面白さは素晴らしいのです。やはり名作とはですね。やはりマックィーンはかっこいいです。


「ソング・オブ・ザ・シー 海のうた」
アカデミー賞にノミネートされたアニメーションである。確かに非常に絵が美しいし、ファンタジックな映像の展開は素晴らしい秀作です。監督
は第1作目が日本にやってきていないトム・ムーアです。

海ではアザラシ、陸では人間になるという妖精セルキーと人間の間に生まれたシアーシャ。兄のベンは妹が可愛がられるので、何かにつけ嫉妬する。しかも妹が生まれた時に海に帰ってしまった母の思い出もある。

ある日、嵐の中、妹を連れ出したベンは、ある建物に雨宿りをして妹はフクロウの魔女に連れ去られてしまう。妹を助けるため、奮起するベンの姿、彼を見守る愛犬、そしてセルキーであるシアーシャを助けるためにセルキーのマントを海に潜って探したりという、ベンの活躍と成長が描かれ、ラストはハッピーエンドなのだが、フクロウの家から脱出して家まで駆け抜ける場面はどこか猫バスのシーンに似ていたりする。

背景が次々と入れ替わりファンタジックに変化する様が美しく、独特の絵作りに彩られた画面がとっても素敵な一本。さすがに、ノミネート作品ではあるなと納得。美しいラストシーンも心に熱く感動を呼ぶ。いいアニメーションの秀作でした。


「イレブン・ミニッツ」
とにかくおもしろい。5時から5時11分までの群像劇をサスペンスタッチで描き、最後は何もかもが絡んできてあっという間の驚愕のラストに終焉する。その無駄のない作りに引き込まれる。いや、78歳の監督とは思えない若々しさに感動するのです。監督はイエジー・スコリモフスキです。

ホームムービーのような画面の中央だけの映像から映画が幕をあける。目元を怪我した一人の男が、妻か恋人かの元に帰ってくるシーンで映画が始まる。女といちゃつき、スプリット画面のモニターが映され画面が拡大してタイトル。

女好きの映画監督が女優をホテルに誘いくどき始める。刑務所を出た男がホットドッグをシスターたちに売っている。嫉妬深い一人の男が妻が出かけたらしいホテルにやってくるが、部屋に入れず困っている。質屋に強盗に入ろうとして失敗する青年、バイク宅急便の青年は配達先の人妻と一時の不倫をしているところに夫が帰ってきて飛び出す。犬を連れた女、ビルメンテナンスで、窓に吊り下がっているゴンドラに乗る男は部屋の女とポルノを見ていたりする。逆子の女のところに駆けつける救急隊だが、途中、様々な妨害に会い、たどり着いてみたら、高齢の男性も様子が悪い。

様々なエピソードが次々と繰り返される、積みかさなり、最後の最後一つに結びついてくる。よくあるパターンの群像劇ながら、共通する一つのことがある。空に見えている黒い点、誰もが見えていたのに突然消えてしまう。橋の下で絵を描いていた老人もその点をたまたまインクの漏れで絵の中に書き加える。

女好きの監督がいよいよ女優をものにしたかと思われた途端に、女優は意識を失い倒れる。それは大変とだきあげる。そこへ飛び込む嫉妬深い男。さらに、少し下ではゴンドラに乗るメンテナンスの男、父親との待ち合わせにやってくるが宅急便の青年、その父親はハンバーガーを売る男。嫉妬深い男が飛び込み、突進したら、そのまま映画監督と女優は窓の外に飛び出す。下にはゴンドラの男がいて、さらに、下にはバイクに乗った青年とハンバーガ屋がいて、そこへ救急車が通りかかり、絵描きの乗ったバスも通りかかり、何もかもが一瞬で惨事に巻き込まれる。

映像の所々に不気味に飛びすぎる旅客機。街の雑踏の音がさりげなく挿入されたり、信号の音がきこえたりする。この音の使い方が実にうまい。

全ての惨事がスプリットイメージになり、どんどんカメラが引いていくと、その惨事の出来事は次第に黒い点となって暗転エンディング。なるほどである。ほんの一瞬でずべてが変わる都会のサスペンスを実に見事に描いたというほかない。これが才能ある監督が描く一本なのだろう。面白かった。