「プアン/友だちと呼ばせて」
いい話なんですが、二つの物語がどっちつかずになって、主人公の二人のどちらを追いかけるストーリーなのか掴み切れないままラストシーンを迎えた感じ。典型的なタイ映画の空気感満載の作品でしたが、ちょっと不完全燃焼でした。監督はバズ・プーンピリヤ。
ニューヨークマンハッタンでバーを営むボス、カクテルの腕は今一つだが女を落とすことは一流で、この日も、酒の味への不満の声が聞こえる中、次々と女性客をものにしていた。彼はタイではセレブで、母の金でこの地でバーを任されている感じである。例によって女性といい感じでベッドで戯れているボスにタイの友人ウードから電話が入る。癌で余命幾許もなくなったので、会いたいからタイに来てほしいという。
ボスはとりあえずタイに行きウードと再会する。ウードは、元カノに返したい物があるからと、父の残した古いBMWを運転して連れて行ってほしいという。ボスは、友人の最後の希望と思い、最初に女性アリスの元へ行く。アリスはダンス教室をしていた。時々ウードとアリスの馴れ初め、別れ、ボスの関わりがフラッシュバックされる。車のカーステからはDJをしていたウードの父の声が聞こえる。
アリスの次は女優を目指していたヌーナーだったが、彼女は大女優になっていた。ボスの機転でウードはヌーナーとも言葉を交わすことになる。続いてはルンだった。居留守を使うルンにボスはウードを引き合わそうとするが上手くいかなかったが、仲良しだったルンの娘と視線を合わせることができた。最後に、ボスはタイの自宅へウードを誘う。
ボスは、姉=母タックに会いに行ったのだが留守で、ニューヨークのバーが赤字だから三ヶ月して黒字にならなければ閉めると言い渡される。ボスはニューヨークへ行く前、プリムという恋人がいた。ここからボスの過去に話へ流れる。プリムはバーで働いていてまだ未成年の頃のボスと知り合ったのだ。ボスとプリムは恋に落ち、二人でニューヨークへ行くことになる。
プリムとボスはタックに用意してもらったマンションに住み、プリムはタイ料理の店で働き始めるが、そこでウードと知り合う。ウードは次第にプリムに惹かれ、知り合いのバーの仕事を紹介する。帰りが遅くなったプリムに悪態をつくボスは、喧嘩してとうとうプリムを追い出してしまう。プリムはウードの部屋で寝泊まりするようになるが、勤め先のバーの店長からラスベガスでのコンテストに出るようにと勧められていた。
プリムがラスベガスに旅立つ夜、ウードはプリムに告白するが、プリムは今もボスを愛していると断る。ウードは自暴自棄になり、プリムに謝ろうと待っているボスに、プリムは別の恋人ができて、今夜旅だったと嘘を言ってしまう。ボスは酒に溺れて地下鉄でチンピラに絡まれ線路に落とされる。それを助けたのがウードだった。ボスはウードを命の恩人だとして自分のマンションで一緒に暮らすようになる。こうして二人の友情ははじまった。
現代、ウードはかつての嘘をボスに謝り、プリムがニューヨークに戻っていると話す。ウードは余生を送るため豪華なホテルをあてがってもらう。ボスはニューヨークへ行く。そして三ヶ月が経つ。ボスのバーは活況を呈して、黒字になるが、やってきたタックに、もう店を閉めると告げる。そして、ボスは浜辺でワゴンで店を出しているバーへ行くと、そこにプリムがいた。こうして映画は終わる。
結局、ウードが白血病であったという出だしからの展開は、ボスにしたかつての嘘を謝り、プリムに再会させるという最後の恩返しをするためだったという流れなのですが、何かうまく噛み合っていない。ウードが三人の元カノに会うという前半部分が後半の本来の物語にどう絡んでいるのかがうまく見えないので、ストーリー全体がまとまらずに仕上がった感じです。脚本作りの基本が疎かになったような作品でした。