くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「モリコーネ 映画が恋した音楽家」「そして僕は途方に暮れる」

モリコーネ 映画が恋した音楽家

1961年以来、500以上の映画、テレビの音楽を手掛けたエンニオ・モリコーネのドキュメンタリー。知った曲も知らない曲も、知った映画も知らない映画もあったけれど、とにかく良かった。映画音楽への視点がまたひとつ増えたような気がしました。監督はジュゼッペ・トルナトーレ

 

メトロノームの音から画面が始まり、モリコーネの少年時代が語られて映画は始まる。やがて、映画音楽に携わるようになり、数々の名曲誕生の背景が描かれていく。一方で、彼の音楽に対する視点、さまざまな垣根を取り払った柔軟な視点を見せていきます。

 

クライマックスは、ようやくアカデミー賞を取った「ヘイトフル・エイト」の受賞場面から、さまざまな現代の音楽家、映画関係者などなどが彼を賞賛する映像、そして彼のクローズアップでエンディング。

 

目に前にある真っ白なものを形にしていくという彼の考え方の基本が、映画ファンの一人である自分の映画の見方の幅を広げてくれた気がしました。良いドキュメンタリーでした。

 

「そして僕は途方に暮れる」

面白い映画なのですが、どうも底が浅くて、映画ならもうちょっと映像で語るべき部分があっても良いような気がしますが、物足りない場面や、わずかなセリフ演出のタイミングの悪さが気になりました。ひたすら主人公が内に内に籠る台詞回しがしつこいし、テンポが悪い前半が特にしんどい。ただ、豊川悦司原田美枝子の終盤のいくつかのシーンが映画になっている気がするのは気のせいでしょうか。あと一歩、そんな仕上がりの映画でした。監督は三浦大輔

 

11月19日、ベッドで主人公裕一が目を覚ます。側では恋人の里美が仕事に行くべく準備をしている。忙しいから遅くなると言い残して出ていくが、次のカットで裕一は別の女性と歩いていて、裕一はやたら振り返る。こうして映画は始まる。里美が帰宅するとしばらくして裕一も帰ってくるが、スマホばかり見ている裕一に里美は、別の女性がいるでしょうと責める。里美が話し合おうとするも裕一は逃げるように部屋を出て行ってしまう。

 

行き場のない裕一は、幼馴染の伸二に連絡をする。そして転がり込んで一週間、好き放題に伸二に命令する裕一に伸二が切れてしまう。裕一はそそくさと部屋を後にし、バイト先の先輩田中に連絡をし、転がり込む。そして一週間、裕一は献身的に色々やるが、田中にからかわれ、掴み合いになったために、この部屋を飛び出す。そして、学生時代の映画サークルの後輩加藤のところへ行こうと呼び出すが、加藤に次はどうするのと聞かれて、裕一は言い出せず加藤と別れる。

 

外は雨で、びしょ濡れになった裕一は、同じく東京に出てきている姉香のところへ転がり込むが、香に、金をせびりにきたのだろうと言われ、裕一は部屋を飛び出す。そして母に連絡し、苫小牧に帰ることにする。ここまでの展開がどうもキレが悪い。

 

母智子の元に行き、リュウマチで体の弱った母を見た裕一は、この家に戻ってくると言うが、母は仕事先の同僚に勧められた宗教に一緒に入ろうと言い、裕一はまたその家を飛び出す。外は雪、行き場もなくバス停にいた裕一の前を父浩二が通りかかり、浩二のアパートに転がり込む。そこで、携帯の電源も落とし、人間関係を断つように勧められる。やがて、クリスマスイブ、浩二に、そろそろ変化してみたら面白いと言われて、スマホから里美に電話を入れるが留守電になるのでメッセージだけ残す。やがて年末。

 

裕一がスマホの電源を入れると里美からメッセージが来ていて、母智子が倒れたらしいという。慌てて裕一は母の病院へ行こうとして、バス停で、心配で来た里美と、実家に帰っていた伸二と出会い、三人で裕一の実家に行く。そこで戻っていた香らとご飯を食べて、香に責められた裕一は、なんかわからないのだと謝る。全く甘ったれた若者描写である。そして里美と伸二は帰っていく。

 

晦日、裕一が買っていたカップ麺の年越しそばを届けに来たという口実で浩二がやってくる。家族で蕎麦を食べ、裕一は、母に東京へ戻ると告げる。東京に戻った裕一は、迷惑をかけたかもしれないと伸二、田中に謝りに行き、最後に里美の部屋のベッドに横になる。そこへ里美が帰ってくる。そして、裕一が出ていって二週間後、伸二と付き合い始めたから別れたいと告白する。裕一は、里美の部屋を出て、加藤に連絡をし、「面白くなってきた」と告げる。それは、浩二が裕一に言った言葉だった。こうして映画は終わる。

 

舞台劇の映画化ではあり、その限界もあるかと思うのですが、展開がどこか底が浅くて、今ひとつ踏み込んだものが見えない。伸二と里美が交際していたという終盤も、そんなにくどくどと告白する展開にせず映像で語っても良かったのではないかと思う。前半の裕一のいい加減さの演技が今ひとつ迫力に欠けるのもちょっと勿体無い。面白い映画だと思うのですが、もう一工夫欲しかったです。