くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう」「世界の終わりから」

ジョージア、白い橋のカフェで逢いましょう」

不思議な映画、ファンタジーでも寓話でもなく、何かメッセージがあるわけでも風刺でもなく、ラブストーリーかといえばそうでもない、日常の普通の中に存在する不思議を独特の感性で描いているのですが、映像や演出が個性的でもなく普通、と言う何とも言えない映画でした。でも見終わると変な感動があったりする。背後に流れるナレーションとわずかなセリフだけで映画が展開していく作品です。監督はアレクサンドレ・コベリゼ。

 

小学校の校門でしょうか、大勢の子供達が登校する姿にタイトルが被り、子供たちが消えて、男女の足元が映され、ぶつかって本を落とす。それを繰り返したあと、二人は別れる。その夜、二人はある交差点で再会し、その偶然に驚いて、翌日、白い橋の上のカフェで会う約束をして別れる。女性の名はリザ、男性の名はギオルギ。リザは薬剤師らしい。ギオルギはサッカーをしている。ところがリザの前に四つの何かがいて、三つ目のカメラがリザに悪意のある呪いをかける。それを解く術を話す四つめの風が車に遮られたまま、リザは翌朝目を覚ますと別人の姿になっていた。一方、ギオルギも別の姿になって目を覚ます。それぞれは約束のカフェに行くが、姿が変わっていて、当然出会うことはない。

 

リザは薬の知識を失ってしまい、ギオルギはサッカーの技量をなくしてしまった。仕方なく、リザは白い橋の上のカフェで働くようになり、ギオルギは白い橋の上で鉄棒のパフォーマンスの仕事をするようになる。不思議な導入部だが、あとは淡々と古都クタイシの街の姿を映していく。背後に説明的なナレーションが繰り返され、リザもギオルギもそれほどセリフもない。

 

そんなクタイシの街に映画の撮影にやってきたチームがあり、街で六組の恋人を選ぶにあたって五十組のカップルの撮影を始める。アルゼンチンのサッカーチームが決勝戦に進んでいく。子供達が遊んでいる。特に劇的な展開もなく、リザは呪いを解く術を教えられてその人物に会いに行ったりするが、どうも紛い物らしい。こうして前半が終わる。

 

後半は川に流れるサッカーボールから街のシーンへ。次第に映像に色彩が入ってくるのがわかり、映画全体が華やかになってくる。リザとギオルギは映画の撮影チームの最後の五十組めにカップルとして撮影され、やがて六組の一組に選ばれる。撮影の後、ギオルギはリザを家まで送っていく。アルゼンチンのサッカーチームが優勝する。そして映画は完成し、その試写が行われるが、そこで、リザとギオルギは元の姿が映され、ようやく二人は再会を果たす。子供たちは上半身裸になり、サッカー選手の名をペンキで書いて遊んでいる。階段を駆け上がり一番上で並んでいる場面で映画は終わる。不思議なことが世の中には起こるものですが、それは普通の日々の中にさりげなく繰り返されているものですと言うナレーションが入る。

 

何とも不思議な映画です。でも、見終わってみるとどこか個性的で魅力のある作品だった気がします。

 

「世界の終わりから」

ストーリーを作り込みすぎた感があって、ダラダラと展開するのですが、一つ一つをこだわり切った映像で描いていくのでラストまで飽きない。とは言っても、クライマックスが見えない作劇は完全に破綻しているために、結局ラストの締めくくりがあっさりとしてしまって、訴えたいメッセージがぼやけてしまったのは残念です。でも映像は素晴らしかった。監督は紀里谷和明。やはり、この人、映画の才能はないですね。

 

戦国時代だろうか、一人の少女が森を走り抜け、自宅だろうか村の中に辿り着くが皆殺しになっている。それは夢だったらしく、目覚めたのは女子高生ハナ。傍に寝ている祖母は息を引き取ったばかりらしい。学校へ行くと、近所で、足の悪いタケルが心配そうにやってくる。そんなハナに、一人の男が近づいてくる。政府の要人だと言う彼は、ハナが見た夢のことを聞こうとする。しかしハナは、祖母を亡くし一人ぼっちになった悲しさに打ちひしがれていた。両親は彼女が幼い頃に交通事故で亡くなっていた。

 

ハナはそれからも繰り返し夢を見て、気を失い、政府の江崎という男が彼女をとある施設に連れていく。そこには一人の老婆がいた。その老婆は、ハナが夢の中で、傷ついたハナをユキという少女に助けられた時に連れて行かれた洞窟で見た老婆だった。その老婆はハナに一通の手紙を祠に届けるようにといい残し武士に殺された。同じ老婆に出会ったハナは、この世界は二週間後に滅びるといわれる。それを救うことができるのはハナだと話す。

 

突然のことに混乱するハナだが、彼女に寄り添ってくる江崎や佐伯と言葉を交わすうちに、自分の使命をこなすことを決意する。それは夢の中で無事手紙を祠に届けることだった。映画は夢の中と現実世界を行き来しながら、この世界が愚かしい人間の所業で滅ぶべきものかどうかを問いかけながら展開するのですが、話を作り込みすぎたのか、整理できていないのか、主軸から離れてどんどん複雑に入り組んでくる。

 

終盤、未来世界だろうか、一人の女性ソラが何やら調査をしている場面も挿入され始める。現実世界では、ハナは夢を行き来しながら、自分は輪廻族と呼ばれる一族らしいことが語られ、武士の姿の無限という男たちがハナたちを阻んでくる展開が絡み、そこに、官房長官の私利私欲も絡んできてぐちゃぐちゃになってくる。そして、何とか手紙を祠に届けたものの、それはユキの願いを叶えるもので、力を得たユキは武士を惨殺し始める。それを止めるべく老婆に依頼されたハナは、占いで政府を動かしたと暴徒に襲われながらも佐伯や江崎の犠牲で逃げ延び、ユキを改心させようとするが、現実世界はハナの力でとめることは出来ず、世界終末へ突き進んでいく。

 

ハナは、自分の力が及ばなかったが、別世界に生きる誰かにメッセージを残す。そのメッセージを聞いたソラは、ユキの世界に行き、武士たちを殺してユキの家族を守る。そして、ハナの両親も事故を起こさず、幸せが待つ平和な世界を残す。こうして映画は終わる。

 

というお話のようですが、書いていない他にも老婆の死や、ハナが学校でいじめられていたりというエピソードも盛り込まれ、ごちゃごちゃです。映像自体は相当に凝っていて見応え十分ですが、ストーリーの整理が追いついていないために、ダラダラ感は否めません。ハナを演じた伊東蒼さんの熱演はアカデミー賞ものでした。退屈はしなかったのでよしとしましょう。