くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ゴールデン・エイティーズ」「街をぶっ飛ばせ」「家からの手紙」

「ゴールデン・エイティーズ」

軽いタッチの恋愛群像劇のミュージカル。まさに「ロシュフォールの恋人たち」的な映画でしたが、シャンタル・アケルマン監督らしいさりげない毒味がとってもスパイスになって、しかもカラフルな衣装と舞台背景を楽しめる小品でした。

 

女性の足元を映しながら次々と出入りを繰り返し軽快な曲が流れて映画は幕を開ける。美容院とその向かいのブティックが映画の舞台となり、美容院の店長リリはブティックの店主シュワルツの息子ロベールと恋人関係だが、リリには別途恋人のジャンがいる。ある時、美容院にイーライという中年男性がくるが、何と彼はブティックのシュワルツの妻ジャンヌの30年前の恋人だった。ロベールはシュワルツにリリとの関係を反対されていて、つい美容師のマドと婚約することになってしまう。こうして、恋人たちのあちこちが入れ替わり、周りに噂話が絡んで歌と踊りで描かれていく。

 

その翌日、それぞれの浮気相手の姿がバレてしまい、リリは街を出ていくことになり、イーライも街を出ていく。そして三ヶ月後、ロベールとマドの結婚を明日に控えた日、リリが街に戻ってくる。ロベールはすぐにリリとよりを戻し、マドはロベールが愛しているのはリリだと知って諦め、ジャンヌに慰められる。ジャンヌとマド、シュワルツが街に出ていくと、妻を連れたイーライと遭遇、お互いに自己紹介して別れ、映画は終わる。

 

コミカルなタッチで展開するラブストーリーですが、どこか皮肉たっぷりな毒を含んだスパイスにニンマリしてしまいます。面白いミュージカル群像劇でした。

 

「街をぶっ飛ばせ」

シャンタル・アケルマン監督の処女作短編。とにかく、ストレートにみずみずしい映像が炸裂する一本で、まさに彼女の作風を凝縮したような映画でした。

 

一人の女性=シャンタル・アケルマンが、大きな声で鼻歌を歌いながらアパートの階段を駆け上がってくる。部屋に入り、入り口にテープをして、水を撒いて掃除をしたり、スパゲティを作ったり、やりたい放題に飛び跳ねる。キッチンの上に飛び乗り、マヨネーズを顔に塗りたくり、靴を磨き、猫を追い出しと、ただただ勢いで行動していく。そして最後、ガス栓を開き、火をつけて、顔をコンロに当てがって暗転、爆発音、鼻歌が流れて映画は終わる。

 

あっけに取られる12分間でした。

 

「家からの手紙」

延々とニューヨークの街並みを捉えていくだけの作品で、背後にニューヨークに行った娘に宛てた両親からの手紙がナレーションで流れるだけ。まさに映画という名の手紙という感じの一本でした。監督はシャンタル・アケルマン

 

1970年代のニューヨークの街並み。車の流れ、道路、交差点、ビル群、地下鉄の構内、地下鉄から駅を映すカメラ、フィックスでシンメトリーなカットでひたすら映し出す画面に、ニューヨークに行った娘を案じる母からの手紙が延々と語られる。やがて、ニューヨークを離れる船からニューヨークの街を延々と捉えて映画は終わる。

 

物語があるわけでもなく、とっぴなカメラワークがあるわけでもなく、ただひたすら母の娘を思う気持ちの手紙が映像に物語を語っていくスタイルは、さすがに個性的すぎる一本でした。。