「サイド バイ サイド 隣にいる人」
淡々と進むストーリーというよりダラダラと流れるストーリーという感じの独りよがりの映画で、ちょっと変わった構図とカメラアングル、編集、カット割はわかるのですが、こちらに伝えるという演出が皆無なので、あらかじめあらすじを読んでなかったら、人物も背景も空間設定も全くわからなかった。意図したものか観客を無視したものか不明という作品で、シュールなのはわかるが、何を目指したいのか理解できない映画でした。監督は伊藤ちひろ。
バスの中、主人公未山が乗っている。傍に茶髪の青年が乗っているが、どうやら実在しない人で、未山にしか見えないような存在らしいが、その説明はない。ある家に招かれて、何やら一人の婦人の身体を見てやる未山。どうやら誰かの思いを見ることができるらしく、その能力で傷ついた人々の心身を癒しているらしいが、それは解説を読んでいたからわかることで、映像の中では全く描写はない。
未山は、恋人で看護師の詩織と娘の美々と暮らしているがその説明もない。最近、自分のそばに謎の男が見えるようになり、その思いを辿って東京へやってくる。その男が高校時代の後輩でミュージシャンとして活躍している草鹿とわかり会いに行く。そこで、未山の元恋人莉子と出会う。莉子は妊娠していて、未山の元へ一緒に戻ってくる。未山は土蔵のようなところに住んでいてそこに莉子を連れ帰るが、それを知った詩織は自分の家に二人を招く。こうして、未山、莉子、美々、詩織が生活するようになる。
莉子は絵を描いているらしく、間も無く美々とも仲良くなる。近所の牧場の牛が時々迷子になり、ある時は莉子が見つけたりする。四人の生活が淡々と描かれ、何があるわけでもなく日々が流れる。例によってまた牛がいなくなったという連絡で未山が探しに行き連れ帰ろうとするが、牛が自分の行きたい方向へ未山を連れて行き、フレームアウトすると牛の声と共に未山は消えてしまう。
やがて莉子の子供が生まれ、莉子、詩織、美々、莉子の赤ん坊の生活があり、なぜか未山の姿はない。死んでしまったのかどうか、あとはこちらの判断に委ねて映画は終わる。
正直、何のことかわからない作品で、ストーリーテリングはほとんどないシュールな映像の繰り返しと、間延びしたセリフのやりとりに参ってしまう。何とも退屈そのものの映画だった。