くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「我ら山人たちー我々山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではない」「山の焚火」「緑の山」

「我ら山人たちー我々山国の人間が山間に住むのは、我々のせいではない」

フレディ・M・ムーラー監督の三本を見る。スイスの山間に生活する農民、かつて住んでいた村はダム建設で沈んでしまい、仕方なく山の上に移って放牧生活に入る。という農民たちの姿を丁寧なカメラワークで描いていくドキュメンタリーです。

 

素朴に捉えているものの、そこには自然の中にで厳しいながらも採算ギリギリで生活せざるを得ない人々の姿。なんのこともないように思われる映像なのですが、根底にあるのは生活の厳しさ。

 

雪崩を恐れ、収入もままならないが政府の補助も十分ではない。それでも、今の生活を抜けられない現実で生きる村人のショットでエンディング。これはこれで良かった。

 

「山の焚火」

こちらはフレディ・M・ムーラーの劇映画である。非常に淡々と進む物語と美しいスイスの山を背景にした斜面の構図が見事な作品ですがいかんせん、ストーリーが静かすぎて、正直眠かった。

 

斜面で、豚や牛を飼って暮らす四人家族。弟は唖で、何かにつけてすぐに癇癪を起こしてしまう。彼が慕うのは優しい姉。物語はこの四人の生活を淡々と描いていきます。

 

ある時、調子の悪くなった草刈機を投げ捨てた弟に父親が激怒、それをきっかけに山の上に弟は逃げてしまう。姉はそんな弟のために食事を届けたりする。焚き火を囲んで言葉のない会話をする二人だが、いつのまにか体を合わせてしまう。

 

やがて弟は山を降りてくるが、間も無くして姉は妊娠していることがわかる。父は激怒し、弟を撃ち殺さんと銃を持ち出すがもみ合ううちに銃に撃たれ死んでしまう。そのショックで母も死んでしまう。

 

姉と弟は両親の遺体を雪に埋めて、ガラスの窓をこしらえる。深々と降る雪、室内に蝋燭を立て、姉と弟は静かな葬儀をする。非常に詩的なシーンで映画は終わる。

 

山の斜面に暮らすために、画面に斜面の斜めの構図が撮られて、彼方に見える山々の景色や雲海が広がる絵づくりも美しいし、少し麓に暮らす祖母たちとの交流も静かなドラマを生み出してくれる。絵は本当に美しいけれど、ちょっとしんどい映画でした。

 

「緑の山」

フレディ・M・ムーラー監督作品。退屈なドキュメンタリーでした。原発の廃棄物の処理場を建設するにあたっての候補地の村の人たちの延々としたインタビューと関係者のコメントが全編繰り返されるだけで、時折映る緑の溢れた山々は、それはそれで美しいけれど、ほとんどが人間のショットばかり。疲れました。