くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「AIR エア」「仕掛人・藤枝梅安2」

AIR エア」

エアジョーダンが生まれる経緯を描く物語ですが、実現させた英雄の話でもなく、商品の売上金から選手が一部報酬を得るようになるシステムが生まれることになった話でもなく、こういう出来事があったという表現のみの作品になっていて、映画全体に熱さが感じられないのは少し残念。セリフが多すぎる感じで、冒頭から機関銃のように会話の応酬で舞台背景と展開を突き進むのが、かえって感情移入する隙を与えなかったのかもしれません。ただ、マット・ディモンのソニーがマイケルを説き伏せるクライマックスはなかなか圧巻でここだけが唯一の見どころでした。監督はベン・アフレック

 

バスケットボールシューズの市場シェアの説明から映画は幕を開ける。ナイキでバスケットボール部門の担当社員のソニーはこの日も高校バスケットボールの試合をチェックし、ラスベガスで遊び、次のターゲットを模索していた。しかし、トップのアディダス、二位のコンバースが大半を占め、三位のナイキは採算不振でバスケットボール市場から手を引くことも視野に入れていた。

 

ここに学生バスケットボール大会を提案した経験のあるソニーは、戦略会議で、会社の予算をどの選手にするかの配分検討に参加していたが、他のスタッフがそれほど選手のことも知らずに出す計画に異論を唱える。

 

そんなとき、ビデオで学生バスケットボールの試合をチェックしていたソニーは、一人の選手に目が止まる。その選手はまだまだ新人ながら将来を有望され、スポーツメーカーから引き合いのあるスター選手マイケル・ジョーダンだった。しかし彼はすでにアディダスを選んでいて、時々コンバースを使う形でナイキは敬遠されていた。しかし。何とか食い込めないものかと、ソニーはバスケットボールシューズの予算全てをマイケルに振り向ける作戦で攻勢をかけたいと提案する。そして、代理人を通さず、マイケルの自宅に直接接触を試み、マイケルの母デロリスの心に訴える。

 

やがてプレゼンが開始されるが、何とナイキにもそのチャンスが与えられる。そしてプレゼンを控えるソニーたちは、マイケリ・ジョーダン個人に特化したシューズを作成する計画を練り、シューズ開発のピーターの提案もあり、エアジョーダンの試作が開始される。そして、プレゼンが始まる。当初の作戦通りプレゼンは進むが、マイケルの興味が湧いてこない様子を見たソニーは途中からみずからマイケルに訴えかける作戦に出る。

 

後日、デロリスからソニーに直接連絡が入る。基本的にナイキと契約するが、そのために、シューズの売上の一部を報酬として欲しいと業界の慣行を覆す条件をつけてくる。ソニーは一旦は断るものの、CEOのフィルが承諾、一気に契約となる。こうして物語は終わり、その後エアジョーダンが爆発的にヒット、マイケル・ジョーダンもスター選手の頂点になり、ナイキはのちにコンバースも吸収するまでに成長したテロップが出てエンディング。

 

これという映画的な面白さは全くない普通の作品という感じで、どちらかと言えば映画としては出来は良くない。こういうお話がありましたという一本でした。

 

仕掛人・藤枝梅安2」

しっかりと作られた時代劇で、まさに池波正太郎の世界観が見事に出た出来栄えは前作同様。さらに今回はクライマックスの脚本と演出が実にうまくて、引き込まれるほどクオリティが高い。こういう良質の時代劇はもっと作られるべきではないかと思います。大満足。監督は河毛俊作

 

前作のラストで京に向かう梅安と彦次郎は、彦次郎の若き日の敵の侍と出会うところから映画は始まる。彦次郎の気持ちがはやるのを押し留めた梅安は、その侍の素性を探り始める。その侍が梅安の師匠津山悦堂の墓に参っているのを見かけ声をかけると、その侍、峯山又十郎は、かつて津山悦堂に父が世話になったのだという。しかも、彼には双子の弟がいることがわかる。梅安はその弟井坂惣市が彦次郎の仇だと推測する。

 

京都に宿に入った梅安たちは、大阪の元締め白子屋が峯山の宿に入っていくのを見かけ、白子屋の行きつけの料理屋に行った梅安は白子屋が井坂の殺しを峯山に依頼されているのを聞く。そしてその仕事を請け負った梅安は彦次郎と共に井坂を調べ始める。たまたま街中で、梅安が若き日の過ちで命を狙われている同じ仕掛人の井上半十郎と出会う。井上は梅安をかつての妻の仇と追っていた。こうして三つ巴の物語が展開していく。

 

梅安らは、井坂の一味の狼人を順番に始末し、最後に井坂らを懲らしめて殺すが、そこへ井上らが飛び込んでくる。すんでのところで白子屋の刺客に助けられた梅安らは江戸に戻るが、井上との決着をつける日が迫っているのを肌で感じる。そして、待たせていた患者を全て処理した梅安は彦次郎と共に井上らを待つ。ここからの待ちの場面が実に良い。

 

井上と仲間の佐々木が梅安が待ち受ける廬にやってくるが、梅安らの策によって見事返り討ちにする。このクライマックスの部分も実に鮮やかにできていて、見ていてどんどん引き込まれる。おそらく原作にあるであろう描写を忠実に再現したのかもしれないが、見事です。こうして映画は終わっていく。エンドクレジットの後、長谷川平蔵とすれ違う梅安の場面でエンディング。

 

本当に、しっかり作られた時代劇でした。見ていて心地よいという時代劇は久しくなかったので大満足です。