くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「左利きの女」(4Kリマスター版)

「左利きの女」

癖になる映画です。カット割りの面白さ、時間と空間のジャンプカットの見事さ、小津安二郎を意識した構図、ある意味シュールな展開が実に楽しい映画だった。何回も見たくなる一本です。監督はペーター・ハントケ

 

空港で、夫ブルーノの帰りを待つ妻マリエンヌの場面から映画は幕を開ける。自宅に戻ったマリエンヌは近くのホテルで食事をし、そこで一泊を過ごした後突然別れを告げる。8歳の息子ステファンを一人で育てることになったマリエンヌは、出版社を頼って自宅でフランス語の翻訳の仕事をし始める。息子のステファンは友達を自宅に呼んでマリエンヌの仕事の邪魔をするし、ブルーノは勝手にマリエンヌのところにやって来ては、やり直そうと言ったりする。映画は、マリエンヌの日々を淡々と、周りに関わってくる人物を描きながら綴っていく。時にシュールな映像を散りばめ、マリエンヌが自らの生き方を見出していく様が描かれていきます。

 

特に劇的に展開するドラマがあるわけでもなく、周囲の人物との関わりが、光の演出でハイスピードで時間の流れを描いたり、ジャンプカットで無駄な説明シーンを排除したり、インサートカットで心地よい映像のリズムを作り出したりと、映像表現を駆使して描いていく。さりげないシュールな演出を散りばめた絵作りも楽い一本で、映画として楽しめる作品でした。