くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「search#サーチ2」「河内山宗俊」(4Kデジタル復元版)「㊙︎色情めす市場」(デジタル復元版)

「search#サーチ2」

時間潰しをするにはちょうど良い面白さのサスペンス映画でした。この手のパターンの作品は、道具立ては違うとはいえ傑作がたくさんあるので、そこまではいかなかった感じです。とは言っても、驚くどんでん返しと、これでもかという伏線と謎解きの繰り返しは、見ていて飽きさせない。素直に楽しめる映画だった。監督は前作の編集を担当したウィル・メリック、ニック・ジョンソン。

 

2008年、8歳のジューンと傍には優しそうな父、そして、母親グレイスのにこやかな笑顔から映画は幕を開ける。ネットの検索場面で、脳腫瘍とか難病の検索履歴が出て、どうやら父は亡くなったらしいとわかって、物語は現代へ。娘が心配で仕方ない母のグレイスは新しい恋人ケヴィンとコロンビアへ旅立とうとしている。ジューンにベビーシッターの頃から世話してもらっている弁護士のヘザーをあてがうという母の提案に反抗するジューン。ジューンは母が旅立った後友達とホームパーティでハメを外そうと計画していたのだ。

 

しこたま飲んで二日酔いの朝、旅行から戻ってくる母たちを迎えにいくために空港へ行き、プラカードを上げて待っていたジューンだが、いつまで経ってもグレイスたちが戻らない。ネットで調べると、二人は行方不明になっていることがわかる。ホテルを出る際の防犯カメラの映像を手に入れるためにFBIに届けを出すが、録画が上書きされるまで時間がない。そこで現地で便利屋のアルバイトしているハビを雇って調べてもらうがすでに上書きされた後だった。

 

様々なネット情報を駆使し、関連のIDを検索していたジューンは、ケヴィンに女がいたことがわかる。しかもケヴィンには詐欺の前科があり刑務所にいたこともわかる。母は騙されているのかと調べるが、ケヴィンはラブチェーンの観光地でプロポーズする姿を見つける。ケヴィンは本気なのだ。

 

そんな時、二人が車に拉致される動画が投稿される。FBIのパーク捜査官は事件を公にして、誘拐事件として捜査を進める。一方、ジューンも母の姿をハビの助けを得て追跡していた。そして、ケヴィンが旅行で一緒にいた女性がグレイスではなく、ネットで見つけた女性だと判明する。しかも、グレイスは空港へ向かわず地元にいることがわかる。

 

謎が深まる中、友人の助け、ネットの情報を駆使するが、ヘザーが黒幕だと判明、ヘザーの事務所に行ったジューンは、そこでヘザーが殺されたのを発見する。ヘザーもまた被害者だった。自宅に戻り、ネット情報を駆使していたジューンに訪問者が現れる。何と、死んだと言われていた父親だった。父はグレイスに刑務所に入れられて、ジューンを連れていかれ12年寂しく過ごしていたのだという。しかし、父がいた刑務所はケヴィンがいた刑務所だとわかる。父とケヴィンは共犯だったと気がついた時は遅く、父はジューンを拉致し、かつての家に連れていく。そこにはグレイスも拉致されていた。ヘザーはグレイスを助けたDV担当の弁護士だった。

 

実はジューンの父親はDVで、グレイスの本名はサラと言って、夫から逃れるためにジューンを連れて逃げていたのだ。父はジューンを取り戻そうとグレイスを脅すが誤って発砲してしまいグレイスに重傷を負わせる。グレイスは瀕死の状態でガラスの破片を夫に突き刺し、夫はパソコンの前で絶命、ジューンは監視カメラに向かってSiriを起動させ緊急連絡を入れる。こうして警察が駆けつけハッピーエンド。映画は終わっていく。

 

ハビを含め大勢の登場人物を配置して話を膨らませたのとミスリードしていく作りは面白いが、エピソードの構成配分が今ひとつで、せっかくの面白いドラマはただドタバタするだけになっているのはちょっと残念。でも楽しめる娯楽映画でした

 

河内山宗俊

何回目か忘れたほど好きな作品で、映画というのはこうやって作るものだと言わんばかりに面白いし、どこがどうと説明できないけれど、作品として完成されています。前半のコミカルに繰り返す絶妙のテンポ、その中に織り込まれた様々なエピソードが絶妙な配分とタイミングで物語をどんどん盛り上げていく。さりげなく挿入される花札や猫、雪景色などなどのタイミングも絶妙で、何度見ても心に残ってしまいます。そこがこの作品が愛されるゆえんでしょうね。監督は山中貞雄

 

物語は、何度も書いたので省略いたしますが、今回の4Kリマスター版になって、画面や音声はかなり改善されたとはいえ、やはりここが限界でしょうか。登場人物の名前の聞き取りにくい部分は相当聞き取りやすくなっている。こういう映画は大事にしないといけないと思います。どこがという具体的な感想にならない本物の職人芸のような仕上がりの映画です。

 

「㊙︎色情めす市場」

二度目の再見でしたが、やはり傑作です。冒頭の10分でこの映画が並の作品ではないことがまともに伝わってきます。その後は、圧倒的な熱量で生の人間の生の姿が暑苦しいほどの重苦しさで描かれていく。そこにあるのは底辺の人たちの生き様であり、人間本来の命の姿である。その生々しさに現実さえも忘れてしまう。モノクロからカラーに切り替わるクライマックスに至っては並の感性では追いつけないほどのシュールな芸術性さえ醸し出されてくる。これこそ日本映画史に残る傑作。素晴らしい映画でした。監督は田中登

 

モノクロで、高度経済成長真っ只中のあいりん地区、飛田新世界界隈の画面から映画が幕を開け、そこで生きる一人の体を売って生きる女、組織を抜けてフリーになると宣言し、体一つで男たちを手玉に取っていく様は、痛快でもあり、生々しくもある。母も体を売り、女は母の愛人をたらし込み、知恵遅れの弟を可愛がってやる。生活のために流れてきた恋人たちも、やがて女は体を売るようになる。指名手配犯に瓜二つの青年が生活する。終盤、映像はカラーとなり姉の体を貪った弟は鶏を抱いて通天閣に登り、商店街で首を括る。空き地で通天閣を望む主人公の姿で映画は終わる。

 

圧巻、その一言です。見事な映画でした。