「最高に花婿 ファイナル」
特にできがいい映画ではないけれど、好き放題に人種差別や国差別などを笑い飛ばしていく爽快感が大好きなシリーズです。今回気がついたのですが、クロードの家の女中がバベットだったり、塀を作りにマリオが来たりというノリの良さも拍手ものでした。例によって機関銃のようにセリフの応酬と差別発言満載の笑いに最後までニコニコして見ることができた。監督はフィリップ・ドゥ・シューブロン。
クロードとマリーのヴェルヌイユ夫妻の結婚四十周年を迎えるにあたり、娘たちがお祝いをしようと計画、しかも、夫の両親も招待したいという計画に、波乱を予感する夫たち。そんな夫たちを手際よく扱う妻たちがまず楽しい。黒人の俳優シャルルがキリストを演じるエピソードや、画家のセゴのグロテスクな絵に魅せられたドイツ人ヘルムートが実はマリーに気があるというエピソード、ラシッドとダヴィッドの隣同士がリンゴの木をめぐっての諍い、イザベルの菜食主義、シャオの実家に行った時のヴェルヌイユ夫妻の大失敗などなどのコミカルなシーンを散りばめ、クライマックス、ヘルムートを振ったマリーはクロードと気球に乗りパーティ会場へ。そしてロックミュージシャンが夢だった義父の静かなラブソングで映画は幕を閉じる。みんな見た目は違っても中身は同じじゃないのと語る歌詞がとっても微笑ましい。
決して名作でも何でもないかもしれないけれど、何もかもを笑い飛ばす心地よさがとっても気持ち良い映画でした。
「丹下左膳余話百万両の壺」
日本映画屈指の名作で、これで4回目の再見。戦後カットされた幻のシーンを加えて復元したバージョンで92分あるが、それでも現存していないチャンバラシーンのないのは寂しい。とはいえ、小道具をユーモア満点に使ったカットやシーン転換の絶妙なテンポ、涙と笑いのユーモラスな展開と演出に、映画とはこうやって作るもんだと言わんばかりに楽しませてくれます。傑作ですねやはり。監督は山中貞雄。
物語は今更書きませんが、女将が三味線を弾こうとすると、猫の置物をひっくり返したり、弓矢の的に当たる数がクライマックスで盛り上がったり、遠眼鏡で浮気の現場を見つけてみたり、憎まれ口を叩きながらも松吉を愛しく思う強面の丹下左膳と気に強い女将の掛け合いなどなど、始まってからラストまで見ていて楽しくて仕方ない。4Kリマスターになって、音声はさらに鮮明になったので、益々現存していないチャンバラシーンが惜しいです。でも、これこそ傑作だと思います。