くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「炎と女」「喜劇 命のお値段」「ジェーンとシャルロット」

炎と女

時間と空間を前後交錯させて語るシュールな表現と、ハイキーでガラス越しや透明なビニール傘越しに捉える芸術的な映像が織りなす若干難解な作品ですが、素晴らしい傑作でした。人工授精で子供を授かった夫婦の苦悩、男と女の真実の愛情そんな様々を映画へと昇華させる演出に圧倒されました。素晴らしい。監督は吉田喜重

 

ぼやけた視点、どうやら赤ん坊の視点のようで、上から見下ろす父真五と母立子のシーン、そして二人を延々とカメラが回転して捉える。真五の友人の坂口と妻のシナがやって来る。真五らには息子鷹士がいる。しかし、実は鷹士は人工授精で生まれた子供だった。子供ができない真五に恩師の藤木田が、真五は子供が作れない体だと告げている。そして、確率は低いが人工授精という方法があると話す。しかし、学生時代真五は当時の恋人を妊娠させたことがあるという。しかし、それも真五の子だったかは定かではない。立子は人工授精に同意し、やがて、鷹士が生まれる。

 

立子は真五と結婚する前、森の別荘で一人暮らしを経験したが、そのときに一人の男に体を奪われる。それが現実だったか妄想だったかわからない。真五は人工授精の立子の相手は坂口なのではないかと疑い始める。一歳七ヶ月の時、鷹士はシナに誘拐される。平気で帰ってきたらシナを坂口らが待ち構える。シナも子供がいたらと坂口に話す。真五、立子、坂口らの関係がギクシャクする中、立子は森の別荘で坂口に抱かれる。真五が立子を迎えに来る。そして、鷹士は自分たちの子だと言って、立子と三人で森を歩いて映画は終わる。

 

透明なビニール傘越しに坂口と歩く立子を捉えたり、ガラス越しに真五を映したり、様々なカメラテクニックを駆使しながら、ジャンプカットの切り返し、時間、空間の交錯などを交えた映像がなかなかの見応えの芸術作品でした。

 

「喜劇 命のお値段」

今となっては若干悪趣味なコメディですが、緻密に組まれた物語は、なかなか仕上がりのいい一本でした。監督は前田陽一

 

刑務所を出てきた福田と加東の姿、これから真面目にやろうと決心して別れる。福田は日雇いのような仕事をするが、医師を目指したこともある彼は、医師まがいの判断で信用されている。久しぶりに故郷の緑ケ島に戻ってきた彼は、たまたま出会った幼馴染に医師をしていると言ってしまう。そして同窓会に出て、噂が広まり、この島が無医村であることを知る。この島に偽の教師をしている加東と再会した福田は加東の強引な説得で再び詐欺行為をすることにする。加東の作った偽の医師免許で、後継者をさがしている鎌倉の町医院に入り込み、医者として仕事を始める。

 

そんな時、患者に、お尻が痒くなる病気の人が目につくようになる。気になった福田は、近くの川上食品の食品を食べたのが原因ではないかと調査を始める。一方、行きつけのスナックは聾唖者の従業員だけというのが売りの店で、ここのママ信子は福田らが偽医者だと聞いてしまう。しかしそんな福田らに興味を持つ。

 

医師会の会長の病気をたまたま治したり、女医との見合いをしたりと順風満帆な福田だったが、見合い相手が興信所で福田を調べて偽医者だとわかってしまう。そろそろ引き際と思った福田たちは緑ケ島に帰ることにするが、そんな福田に、信子は全て知っていたと告白する。去り際に川上食品を痛い目に合わせようと考えた福田たちは赤痢菌を手に入れて、加東が赤痢になったことにして川上食品を脅すことにする。実はただの下剤だったのだが、まんまと成功した福田たちは信子を連れて緑ケ島にむかうが、着いたところで警察に捕まる。こうして映画は終わる。

 

公害問題や障害者のことを面白おかしく題材にしていく作りはまさに一昔前の悪趣味な脚本ですが、一つ一つのエピソードと展開はしっかりしているので、それなりに見応えのある作品でした。

 

「ジェーンとシャルロット」

たまたま、先日ジェーン・バーキンが亡くなったこともあり、そういう視点で見てしまったが、ドキュメンタリー映画としては普通だったかなという感じでした。監督はシャルロット・ゲンズブール

 

日本でのジェーン・バーキンのステージから映画は幕を開ける。撮影している娘のシャルロット・ゲンズブールの姿をチラチラ見せながら、母と娘のこれまでを、母ジェーン・バーキンの語りで描いていく。背後に軽快な音楽を挿入したりの映像はやはりフランス映画という空気感はありますが、どちらかというと母と娘の内輪の映像のように見えてしまった。二人の姿を見ていればいいという意味では見て損のない映画でした。